星河の覇皇
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第八十四部第二章 交渉の用意その三十八
「今回の本題ではないので」
「まただな」
「置いておきましょう、とにかくあの御仁が動くとなると」
「厄介だな」
「確実にマウリアに中央政府軍から多くの諜報員を送り込んできてです」
そのうえでというのだ。
「妨害してきます」
「彼がそうしない筈がない」
「あの御仁はどうも政治家として表の能力にのみ秀でていて」
「謀略は使わないな」
「そこは伊東首相と違います」
彼の師匠であり日本国首相である彼女とはというのだ。
「そこは」
「あの首相は稀代の謀略家だからな」
「人の命は奪いませんが」
「それでもだな」
「謀略にも非常に長けていて」
「そこからも仕掛けて来る、だが」
それでもとだ、ギルフォードは語った。
「あの御仁は違うな」
「政治家としての力量は非常に優れていても」
「謀略は使わない」
「どうも元々不得手の様にです」
「それで使わないな」
「使えないと言ってもいいかと」
八条、彼はというのだ。
「どうも」
「そうした御仁だからな」
「はい、おそらくマウリアでもです」
「正攻法で挑んでくるな」
「正々堂々と」
「正々堂々か。それがスポーツならだ」
ギルフォードは率直な声で述べた。
「歓迎すべきだ、スポーツマンシップを守らずしてだ」
「何のスポーツか」
「そうだ、だが政治はルールはない」
「謀略もですね」
「使うものだ、尚恋愛にもルールはないというが」
ギルフォードは自国の言葉も出した、イギリスでは昔から恋愛についてはこうしたことも言われているのだ。
「だが実はな」
「恋愛にもですね」
「していいことと悪いことがある」
「ルールはないといっても」
「実はありますね」
「不倫は駄目だ」
ギルフォ―ドはこれをまず否定した。
「よくある話だが」
「これは何時でも何処でもですね」
「男女共にな」
「不倫を犯すことは今では罪ではないですが」
姦通罪に問われることはない、ただしサハラではこの時代も不倫をした女性がそれに問われる国もあった。オムダーマンやティムールは違うにしても。
「しかしですね」
「社会の目がある」
「世論、良識、世間、色々ありますね」
「そうしたものがだ」
「不倫を許しませんね」
「そうだ、アランソ副首相の様な場合は別だが」
彼女の様にハーレムを持つ場合について述べた。
「そこにいる誰もが納得してそこにいるならな」
「その場合はいいですね」
「正妻と愛人が共にいてもな」
「王妃と寵姫ですね」
「フランスにもあったな」
「ブルボン王家に」
「そしてアランソ副首相もな」
再び彼女のことを話した。
「誰もが納得しそこにいる」
「それならばいいですね」
「特にな、だが」
「一方の相手に言わずのそれは」
「不倫となる」
「そして責を問われますね」
「社会的、倫理的にな」
そうした見方からというのだ。
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