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イベリス

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第百五話 何の為に学ぶかその四

「そんな存在でもないとな」
「救われないってことね」
「どんな人がどんな教えを話してもな」
「救われないのね」
「そうなんだよ」
「ううん、何も努力していない人は」
「何もいいものを持っていないならな」
 世の中そうした輩も存在していてというのだ。
「もうな」
「救われないのね」
「大抵の人は救われるんだ」
 父は真面目な顔で話した。
「そうなるんだ」
「そうなのね」
「しかしな」
 それがというのだ。
「ごくごく稀にだ」
「そんな人もいるのね」
「今話している人もそうでヤクザ屋さんにもな」
「そんな人いるの」
「ヤクザ屋さんでもそんなのは下の下以下だけれどな」
 そのレベルだというのだ。
「もうな」
「ヤクザ屋さんでもなのね」
「ああ、実際はヤクザ屋さんは昔からお寺とか神社と縁が深いだろ」
「そうそう、賭場とか開いて」
 咲もこのことは知っていて話した。
「それでね」
「縁が深いんだ」
「そうなのよね」
「それでな」
 咲に話を続けた。
「信心もな」
「しているのね」
「マフィアもだろ」
 イタリアのシチリアやアメリカで暗躍する彼等もというのだ。
「あれで結構な」
「信仰心あって」
「教会に寄付もな」
「それ色々な理由でよね」
「しているんだ、宗教団体は結構な」
「ヤクザ屋さんと縁があるのよね」
「それでお布施だってな」
 当然寄付と同義語である。
「受けてるんだ」
「そうよね」
「これが減るとな」
「お寺とか困るのね」
「これも現実なんだ」
「どうもね」
「いいか悪いか別だ、宗教は誰もを救う」
 父はこのことを出した。
「そうだろ」
「そう言われてるわね」
「まあ選民思想的な宗教もあるけれどな」
「それでもその宗教の信者さんなら」
「誰でもな」
 それならというのだ。
「そうしたものだ」
「そうよね」
「だからな」
「ヤクザ屋さんが信者さんだったら」
「そのヤクザ屋さんもな」 
 彼等もというのだ。
「助けないといけないからな」
「それでお布施も受けるのね」
「そうなってるんだ」
「成程ね」
「本当にいいか悪いかは別だ」
 父はまたこう言った。
「それはな」
「それで考えていくことね」
「そしてな」
「そして?」
「清濁はな」
 この双方はというのだ。
「善悪と言ってもいいか、世の中にはな」
「あるのね」
「ああ、善悪を受け入れて」
 その両方をというのだ。 
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