私の 辛かった気持ちもわかってよー
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家に帰ると、もう、暗くなっていたのだが、食卓に海鮮寿司が盛ってあって、他に一口カツみたいなものと卵のサラダ、小鉢が並んでいた。お父さんも予約の人が入ってないからつて、健也さんも待っていてくれた。お母さんが
「ご苦労様 すごいネ 準優勝でしよ?」
「うん 最後 負けちゃったぁー あぁー 悔しいっ」
「どうして たいしたもんだよー さすが山葵だよ」と、健也さんが言ってくれたけど、お父さんは相変わらず、不器用なのか、こんな時の言葉も無かった。それどころか
「波香 乾杯だ」と、お母さんに催促していた。なんなのー 私の祝福でなんで お父さん達がお酒なんよー お母さんもなんか言えばいいのにー ビール瓶とグラスをお父さんと健也さんに差し出していた。私達は冷たいお茶をグラスに注いで、とりあえず健也さんの音頭で乾杯していたのだ。
私は、何という家族なんだろうと思いながら、目の前のカツを口に入れて
「おいしい しゃけ?」
「そうだよ 桔梗が頑張った お姉ちゃんに食べてもらうって 奮闘してたんだぞー」と、お父さんが珍しくしゃべった。
「へぇー 桔梗 おいしい ありがとう」
「えへっ 明日 雪になるかもよ」と、照れた顔が可愛かった。この子、本当に変わったわー 小さい頃の桔梗に戻ったみたい。私 少し 幸せな気持ちになっていた。
次の日、登校の途中、美湖と会って、祝福されて、学校に着くともう掲示板に (祝 近畿大会準優勝 岸森璃々香、山城山葵さん) の張り紙が・・・そして、早速二人揃って、職員室に入ると先生方から拍手されて、校長室に・・校長と教頭が居られて、校長から握手されながら
「いやー 最近 運動部が振るわなかったからなぁー 岸森さんは 去年に続いてだろう 嬉しいよ」と、言っていたけど
「いえ 前は 京都府だけでして・・」
「あっ そうだったっけー でも まぁ プレッシャーじゃぁないけど 次は優勝だな 期待してるよ」
と、職員室を出て来ると、璃々香先輩が
「何が 期待してるよ だよー 勝手なことばかりで・・ 無理矢理 手 握りやがってー あっ 山葵は教頭 女だから良かったよなー 私 最低! だったら もっと クラブの予算増やせよー 部室の横にシャワー室作るとか なぁ 山葵」
私は、璃々香先輩の新しい一面を見たように気がして・・あの試合の前日に話したことで、すごく、親しみを抱いていた。そして、なによりも戦友なのだ。次の京都の大会では、絶対に優勝すると誓ったのだ。
だけど、その日の練習から、早速、「動きがトロイんだよー」とか罵声を浴びせられ、その本人は脚にサポーターを着けたままコートサイドで・・その横には、まだ、膝サポーターの西田先輩が・・なんなんだ! このチームは・・・と、私達1年生は駆けまわらされていた。
その日、美湖と一緒に帰って居たんだけど、私は美湖に
「あのね 美湖 以前に、ウチと璃々香先輩との間になんかあるんじゃぁないって聞いてたんやんかー」
「ウン そのうち 話すって」
私は、あの日のことを美湖に打ち明けて
「大声を出して助けてくれたのが璃々香先輩だったの だけど、2学期になって、私が男達にやられたとか男を引っ張り込んでやった とかウワサが広まって・・・そのウワサを流した犯人を考えたんだけど、そのこと知っているのって先輩しか居ないと思って・・・ずーと憎んでいたの 襲われたことより、その方が悔しかった だけど、大会に行ったでしょ その時、思い切って聞いたのよ でね すっぱり否定された あの人は本当は私を伸ばしたかったんだ と、反省したわ だから、今は・・・」
「そんなことあったの だから、山葵は必死になって喰らいついていったんだぁー ねぇ もしかして音女にきたのも そのことで・・・?」
「さぁー それは どうだかねー きっと 運命だったのよ」
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