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ハッピークローバー

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第八十三話 映画館へその十二

「屑だな」
「それで屑を雇う様なお店だから潰れるのね」
「ましてやこんな奴が社長とかだったらな」
「どんな会社も駄目になるわね」
「ならない筈がないな、世の中無能な働き者って言われる人でもな」
 ゼークトが言ったことだ、これが一番害になると。
「向いている仕事に就けるとな」
「変わるわね」
「働き者だからな」
 それ故にというのだ。
「それが有能な働き者になるんだよ」
「一転して」
「そうなるけれど屑はな」
 こう呼ばれる輩はというのだ。
「何をしてもな」
「屑なのね」
「どうしようもないんだよ」
「そうなのね」
「こんな奴こそいらないんだよ」 
 無能な働き者は向いている仕事に就ければいいというのだ。
「雇う様なお店は危なくてな」
「潰れることもあるのね」
「ああ、だからそのお店は潰れたんだよ」
 上本町のハイハイタウンにあったその店はというのだ。
「親会社ごとな」
「そういうことね」
「俺にとっていい教訓になったよ」
 こうもだ、越智は言った。
「本当にな」
「そういうことね」
「ああ、こんなことを知るのも大事だよな」
「ええ、自分はそうなりたくないしね」
 富美子は口をへの字にさせて応えた。
「そこまでの馬鹿には」
「それで吉本隆明みたいなのにもな」
「常識とかなかったのね、吉本隆明って」
「そうかもな、思想家でもな」 
 それも戦後最大と呼ばれるまでにだ。
「子供でもわかる常識がな」
「なかったのね」
「ああ、けれえどドラえもん読んで観るとな」
「そうしたこともわかるわね」
「だからな」 
 それ故にというのだ。
「観ような」
「デートでね」
「面白くてな」 
 それに加えてというのだ。
「為になる」
「それ最高よね」
「しかもわかりやすいしな」
「読んでもわからなくて面白くなくて中身もない」
「それが吉本隆明だよ」
 この思想家の主張だというのだ。 
「本当に読むだけ時間の無駄だ」
「それでそんな人の本読むよりドラえもんね」
「そっちの方がずっといい」
「私その人のことは知らないけれど」
 吉本隆明のことはとだ、富美子は越智に言った。
「けれどドラえもんは知ってるから」
「観られるな」
「楽しみにしてるわ」
 これが返事だった。
「本当にね」
「それじゃあな」
「一緒に行きましょう」
「ああ、ドラえもんは最高だよ」
 笑顔でだ、越智は言った。
「幾つになっても観られて面白くて学べる」
「最高よね」
「だから楽しみにしてな」
「行くといいわね」
「ああ、ただな」
「ただ?」
「フィンランドの映画もな」
 そのホラー映画もというのだ。 
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