ドラゴンボールZ~孫悟空の娘~
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師弟と父子
前書き
悟飯は父親としての威厳を見せれるのか?
かつて、サイヤ人を迎え撃つために修行していた荒野で潜在能力を解放したピッコロと同じく潜在能力を解放した悟飯が組手を行っており、悟飯の激しい猛攻に対してピッコロは大魔王と神、そして自身が積み上げてきた経験とセンスで受け流し、悟飯の顔面に鉄拳を叩き込もうとする。
悟飯は咄嗟に後退するが、ピッコロの腕が伸びてそのまま悟飯の顔面に炸裂するが、何とか耐え抜いて回し蹴りでピッコロの腕を切断する。
即座にピッコロは腕を再生し、無数の気弾を放つ。
悟飯はそれらをかわしながら接近しようとするがあまりの弾幕に動きを止められる。
気弾の連射が止まるのと同時に仕掛けようとするが、悟飯の周囲に無数の気弾が残留していることに気付くが既に遅い。
ピッコロは容赦なく気弾を操作して悟飯に叩き込み、最後に渾身のフルパワー気弾を放つ。
何とか悟飯も咄嗟に気のバリヤーを展開して攻撃を防いだ。
「よし、今日はこれまでだ」
ピッコロの最高クラスの2つの技を耐えたのだから上出来だろう。
「あ、ありがとうございます…」
「凄ーいっ!!」
悟飯とピッコロの組手を見ていたパンが興奮しながら拍手をする。
「はは、どうだいパン?パパは強いだろ?」
「うん!パパって何時も伯母ちゃんに負けてばかりだから弱いんだって思ってた!!ピッコロさんが言っても全然信じられなかったけど本当だったんだ!!」
幼さ故の残酷な言葉に悟飯の表情が引き攣る。
「ふん、しっかりと修行しないから娘にまで情けない奴扱いされるんだ。普段から修行していればお前は悟林にも負けんと言うのにな」
ピッコロはニヤリと笑いながら言うが、悟飯には良い薬だと思っていたのでフォローは一切しない。
実際にこれは嘘ではなく、たまに顔見せに来る未来悟飯がしっかりと修行を継続しており、悟飯の変身にムラがある獣化をしっかりと物にしている。
あのセルマックスを遥かに凌駕し、進化を続けたブルーセル2を圧倒したレベルの力を使えるのだから当然悟林は未来悟飯と本気の手合わせをし、一時は次元がおかしくなってしまうと言うトラブルはあったが、別次元とは言え愛弟子の成長は嬉しかったピッコロであった。
「うう…でも僕も仕事が…」
言い訳しようとする悟飯だがピッコロは冷たい目で悟飯を見つめる。
「お前は極端すぎるんだ。体を動かす暇が微塵もないとは言わせんぞ。この馬鹿弟子が」
「うぐ…」
悟飯の言い訳を一刀両断するピッコロ。
実際に悟飯も体を動かす時間がないわけではないのでピッコロの鋭い言葉に呻いてしまう。
「やれやれ…悟林は初めて会った時から頼もしかったが…お前は何時になれば一人前になれるのだろうな…もし出来るなら4歳の頃の悟林や未来の悟飯の爪の垢を煎じて飲ませてやりたいくらいだ。」
悟林はもう人造人間との闘い時点で一人前の戦士になったのに対して悟飯は未だに詰めの甘さが目立ち、まだまだ一人前とは認められない。
深く溜め息を吐いていたピッコロに差し入れを持ってきた悟林が笑みを浮かべた。
「やあ、ピッコロさん。悟飯ちゃんのお守りお疲れ様。これ、差し入れ…悟飯ちゃんのお守りは大変でしょ?」
ピッコロに汲んできた美味しい水が入ったペットボトルを差し出すとピッコロも有り難く受け取り、それを飲んだ。
「ふん、今更だな。こいつに手を焼かされるのは…もう何年の付き合いだと思っている」
サイヤ人の襲撃に備えての修行で双子をしごいてからもう20年以上も経っている。
セルゲーム以降から気が抜けて修行をサボリ続けて痛い目に遭う悟飯を何度見ただろうか。
「はは、そりゃあそうだ。ピッコロさんのように根気強くて面倒見のある人じゃないと悟飯の師匠は務まらないからね…普通の人なら絶対に匙投げるだろうし…私もお父さんも何とかしようとしたけどまるで成長しないからほとんど放置してたもん」
「この大馬鹿者の師が他の奴に務まるわけがなかろう」
修行とサボリが極端すぎる悟飯に頭を悩ませていたピッコロ。
勿論悟飯の生き方を全て否定するわけではないが、それでも限度があると思っていた。
正直根気強く面倒見の良いピッコロでなければ悟飯の師匠など務まらないだろう。
「全くもってその通りだよ…亀仙人のお爺ちゃんでも杖を地面に叩き付けて諦めるんじゃないかなぁ?」
「…2人共…せめて本人のいない所で言ってもらえませんか…?」
本人の前でボロクソに言う師匠と姉に悟飯が震えながら怒る。
「事実でしょ?サボったせいで酷い目に遭っても全く全然懲りない学者の癖に学習能力皆無の悟飯ちゃん?」
ブウとの闘いで修行をサボったツケを払う羽目になったにも関わらずに修行をサボっていたので学習能力がないと思われても仕方ない。
「うぐ…っ!で、でも仕事とか勉強も…」
悟飯は何とか言い訳しようとするがそんなことを悟林が許すわけなかった。
「体を動かす暇もなかったわけじゃないでしょ。お前の場合は極端すぎなの…修行したかと思えば全力でサボりに向かうんだもん…あのお父さんですら声かけないってよっぽどなんだからね…」
「パパ格好悪い…」
プラス方向に向かっていたパンの父親を見る目がどんどんマイナス方向にぶっちぎっていく。
「それにしてもパンちゃんもいたんだ。修行に関心を持つとは結構…ピッコロさん、パンちゃんに気功波とかは教えてないだろうね?」
本格的に修行をした当時の自分達より幼いのにピッコロに修行をつけてもらっているのは悟林も感心はしたが、パンに気功波の類いは教えていないかを尋ねる。
「まだ早いと思ってな。まだ教えてはいない」
いくらサイヤ人の血を引いていると言ってもまだパンは舞空術が使えるようになったばかりだ…。
いや、悟空(地球組)達と悟林達が気功波→舞空術だったことを考えるとどうなのだろうとは思うが、悟空達の場合は当時の地球で舞空術を使える者が少なかったこと、悟林達は舞空術よりも攻撃面を重視する必要があったので事情が違う。
「それが良いよ。危ないし」
パンは赤ん坊時代から高い潜在能力を見せてきた。
もし、悟飯のように感情の高まりで発露するかもしれないなら教えないに越したことはない。
「でも姉さんは今のパンくらいの頃からかめはめ波撃ててましたよね…」
「私はちゃんと鍛えてるから問題ないの」
「ねえ、伯母ちゃん。手から出す気功波教えて」
「駄目」
パンの頼みを容赦なく一蹴する悟林。
確かにパンの才能なら気功波はすぐに使えるだろうが、悟林からすればパンは赤ん坊の頃からの問題児(悟林が知る赤ん坊のサイヤ人はトランクスとパンしか知らないが)である。
大人しかった赤ん坊だった頃のトランクスと比べて無駄に悟飯から潜在能力を引き継いだせいで赤ん坊時代から舞空術が使える上にそれなりのパワーもあったこともあり、変な場所に向かっていったりと手を焼かされた記憶しかない。
そんなパンに攻撃力のある気功波なんて教えられるわけがなかった。
「姉さん、少しくらい教えてあげても良いじゃないですか…」
頼みを一瞬で切り捨てられたパンは涙目になっており、悟飯はパンの頭を撫でながら非難する。
「赤ちゃんの頃から暴れ回って、無駄に持て余すような潜在能力を持ってる上に後先考えないお前の子供だから教えることにも慎重になるんだよ馬鹿…とにかくパンちゃんは気功波なんて駄目。まだ早い」
「何で!?伯母ちゃんはパンと同じくらいで使ってたって…」
「駄目な物は駄目。聞き分けなさい、パンちゃんが誰かを怪我させたらみんなに迷惑がかかるんだから…せめて気と感情のコントロールが出来るようになるまでは我慢しなさい」
自分達はまだしもパンはサタンの孫なのでもし、感情に任せて気弾や気功波を撃ってしまったら怪我人どころか死人を出してしまい、大変なことになる。
特に父親の幼少期の悟飯は一度感情が昂ると後先考えずに力を放出する所があったのでもしかしたら悟飯の性質を受け継いでいるのではないかと思うと無闇に教えられない。
「パン、聞き分けろ。お前はまず気のコントロールを極めねばならない。気のコントロールが出来なければ気功波は使えんし、もし使えてもロクな結果にならん」
ピッコロもパンが赤ん坊時代から世話をしているためにパンの父親譲りの潜在能力を目の当たりにしているため、教えることには慎重になっている。
幼少期の悟飯と違ってパンは活発で勝ち気な子供だから尚更だ。
悟林だけでなくピッコロからも駄目出しを喰らったパンは渋々頷いた。
「悟林、最近のお前はベジータの技を使うようになったが俺の技を忘れてはいないだろうな?」
「私が修行をサボると思ってんのかなピッコロさん?私を馬鹿にする気?」
「ね、念のためだ…」
修行をサボっていると思われた悟林はピッコロを鋭く睨む。
愛弟子の1人にして地球最強の女戦士の鋭い眼光をまともに喰らったピッコロは少したじろいだ。
「まあ、悟飯ちゃんがあれだから心配するのも分かるけどね…何ならピッコロさん、自分の目で確認してみる?」
構える悟林に対してピッコロも無言で構える。
「悟飯、お前もピッコロさんに加勢しなさい。圧倒的な力で2人まとめてぶっ潰してやる」
「チッ、舐めやがって…」
「今の僕とピッコロさんを同時に相手する気なんですか姉さん?」
「頭に来たなら、私を倒してみなよ。出来ればの話だけどね」
潜在能力を解放した悟林は神の気を纏わずに今のピッコロと悟飯と同じ条件で闘うようだ。
「悟飯、行くぞ。少々生意気になりすぎた弟子に灸を据えてやる!!」
「はい!姉さん、前の僕だと思っていたら痛い目に遭いますよ…ぐはっ!!」
「隙ありっ!!」
気を抜いていた悟飯に先制攻撃の鉄拳を顔面に叩き込んで岩に叩き付ける。
「悟飯!?ぬおっ!?」
「そおれっ!!」
岩に叩き付けられた悟飯に気を取られたピッコロは頭を鷲掴みにされ、地面に叩き付けられながら引き摺られ、悟飯がめり込んでいる岩に放り投げ、叩き付けたことで2つ目のクレーターが岩に出来上がる。
「かめはめ波ーーーっ!!!」
追撃の気功波が岩にめり込んでいる2人に迫り、何とか岩から飛び出したが、放ったかめはめ波は恐ろしい破壊力で岩だけでなくそのまま周囲の全てを吹っ飛ばしていった。
「な、何て破壊力だ…流石姉さんだ…」
「私はね、小さい頃から少しの気のコントロールのミスさえ許されない界王拳を修行に取り入れてきたんだよ?どうすれば効率よく気を溜めて威力を上げられるのか良く分かるんだよ。気の溜め方の速度と密度に関してはお父さん達より上だって自信があるんだよ。さて、こいつを避けられるかな!?」
悟飯とピッコロに向かって片手で気弾を連射し、悟飯とピッコロの動きを制限しながら額に指先を当てながら気を溜める。
「他の攻撃をしながら気を溜めてやがる…!相変わらず器用な奴だぜ…!」
元々気功波の合体技を思い付いて使えるような才能があったのだ。
成長してからの悟林の気の扱いに関しては怪物と言って良い。
「ピッコロさん、少し注意力が散漫してない?」
「何!?なっ!?」
周囲を見渡すとピッコロと悟飯の逃げ場を塞ぐように気弾が残留している。
「それ」
片腕を動かすと気弾が動いて2人に炸裂する。
「ん?」
爆煙が晴れると悟飯がバリヤーを張って攻撃を防いでいた。
「すまん、助かったぞ悟飯」
「ええ、やっぱり姉さんは強い…」
悟飯は改めて姉の強さを再確認した。
「ふうん、中々やるじゃない。じゃあこれはどうかな?魔貫光殺砲っ!!」
「ぐうっ!!」
貫通力に特化した気功波がバリヤーに直撃し、罅を入れていく。
「悟飯!少し保たせろ!!」
ピッコロも負けじと魔貫光殺砲の準備に入り、気を溜め終わると指先を向けた…直後にピッコロの目が驚愕で見開かれた。
魔貫光殺砲を撃ちながらもう片方の手から気功波を放った。
「魔閃光殺砲っ!!」
魔貫光殺砲に魔閃光を合体させた気功波がバリヤーに直撃し、あっさりと悟飯の全力のバリヤーが壊され、2人が慌てて避けたところで悟林は即座にピッコロの背後に回って回し蹴りを喰らわせると岩に何度も激突し、バウンドする。
ピッコロを追いかけてそのまま容赦のないラッシュを叩き込み、最後は組んだ拳を叩き付けて地面に埋めて特大の気弾をお見舞いする。
「ぐおおおおっ!?」
大爆発に巻き込まれたピッコロはあまりのダメージに動けなくなる。
「どう?これが怠けてる奴の攻撃?」
「ぐっ…少しは手加減しやがれ…」
相変わらず容赦のない攻撃にピッコロは呻く。
「手加減したら駄目でしょうが…さあて、悟飯ちゃん。どこまでマシになったか見てあげる」
「ま、待って下さい!せ、せめてあの姿に…」
「変身にムラがあるような変身を実戦で待つ奴がどこにいるの!お前に合わせてやってるんだからそのままで闘え!!」
悟林の拳が悟飯に迫り、何とかそれを受け止める悟飯。
「最近目を離してたから弱くなったかなと思ってたけど…うん少しはマシかな」
「…またサボってると思われてたんですか僕…」
「10年以上も修行サボってたんだからそう思われて仕方ないよね?」
「うぐ…っ!」
「気を抜くんじゃないよ」
拳に纏わせていた気を解放して悟飯を吹き飛ばすと追撃を仕掛け、腹に拳を叩き込み、蹲る悟飯の脳天に肘打ちを入れて地面に叩き落とす。
「とどめだ!!究極界王拳!!」
界王拳のオーラを纏いながら指先を額に当てて気を溜めていき、指先に凝縮すると凄まじい紫電が迸る。
「っ!!」
あまりの威圧感に顔を強張らせる悟飯。
「魔貫光殺砲ーーーっ!!」
全力の魔貫光殺砲を躊躇することなく放った。
強烈な一撃に悟飯は思わず死を覚悟したが、ダメージから復帰したピッコロが腕を伸ばして悟飯をギリギリで射程内から離脱させる。
「チッ」
舌打ちしながら気功波を地表で爆発させると直撃は避けられたが爆発の余波で充分過ぎるダメージを与えたはずだ。
「ピッコロさんの回復が早いおかげで命拾いしたね悟飯」
「あれだけの攻撃をしながら息切れすらしていないとは…我が弟子ながら末恐ろしいぜ…」
「で?ピッコロさん、私が怠けているように見える?」
「…分かった。疑ってすまなかったな」
「分かれば良いんだよ。私の心配はしなくても大丈夫だよ。ピッコロさんは悟飯ちゃんのことだけ考えて…目を離すとすぐにポンコツになるんだから。ピッコロさんも良く分かってるでしょ?」
「ああ…もうお前には教えることはもう何一つ無さそうだ…」
ピッコロの声はどこか寂しそうだ。
かつてのセル達人造人間に対抗するために悟空と精神と時の部屋に入った時点で既に自分の手から離れていったのだ。
今では戦闘力・技術共に自分など足元にも及ばない天使のウイスの元で修行しているのだから教えられることなど最早皆無だろう。
「何言ってるの、私の本格的な闘いの修行をしてくれた最初の師匠はピッコロさんじゃない」
最初に武術を教えてくれたのは悟空だが、あれは基本中の基本で本格的な戦闘の修行をつけてくれたのはピッコロだ。
「未来のトランクスさんが生き残れたのだってピッコロさんが教えてくれたことを私が教えられたからってのもあるしさ、今の地球があるのはピッコロさんのおかげだよ」
ベジータの息子と言うことで忘れられがちだが、未来トランクスは未来悟林の弟子なのでピッコロの技術が取り入れられているのだ。
悟空の剛とピッコロの柔を融合させた型は未来の世界を守る大きな力となっている。
今でも悟林の基本的な武術の型は変わっていないのでピッコロの技術は悟林の強さを支えている物の1つだ。
「…そうか」
「うん、それじゃあ私は帰るよ。2人は早くパンちゃんを迎えに行ったら?大分離れちゃったからね…私はこれからカプセルコーポレーションに用があるから…じゃあね」
悟林はそのまま飛び去ってしまい、ピッコロは強く成長して巣立っていった愛弟子を優しく見つめていた。
「悟飯…神の気を纏っていない同じ条件で悟林に勝てないようでは話にならん。徹底的に鍛え直すぞ」
「え、ええ!?ま、待って下さいよピッコロさん!僕姉さんにボコボコにされてボロボロなんですけど…」
「その程度で弱音を吐くな!あの姿に自在になれるようにならなければセルには勝てんぞ!!」
時間が経てば経つほどにセルは更なる進化を重ねるだろう。
あのセルには超天才戦士達の細胞が組み込まれているのだから。
何時来るのか分からないセルとフリーザの脅威に出来るだけ悟飯を鍛えておくのが自分の使命だとピッコロは気合を入れた。
一方のカプセルコーポレーションの重力室ではベジータとトランクスが向かい合っていた。
「父さん、行くよ!」
「全力で来い、良いな」
互いに超化して超サイヤ人に変身すると構えた。
もうトランクスの背丈は初めて過去に来た未来トランクスと変わらない。
初めての親子の修行は改めて思い返すと問題点ばかりだった。
未来トランクスのパワーに偏り過ぎた変身についても自分が言えば防げたことだ。
ただ、あの時の自分は妻子に対して今ほどの関心はなかった。
しかし、あの日から今でも思うことがある。
もし、セルとの最初の闘いで敗れた時にもう一度未来トランクスと精神と時の部屋に入っていれば、未来の息子はあの時の双子のような爆発的な力を手に入れることが出来たのではないかと。
「トランクス、俺に一撃を当ててみろ。」
「うん!」
トランクスが足に力を入れ、ベジータに拳を突き出す。
鋭く重い一撃をベジータは顔を横にずらしてかわすと、トランクスはラッシュを繰り出す。
「だああああっ!!」
悟林との長い付き合いのせいか動きが悟林に近い物になっている。
未来トランクスも悟林と同じ動きだったが、こっちのトランクスはそれ以上だ。
「だっ!!」
「がっ!?」
かわし続けていたベジータだが、トランクスの僅かな隙を突いて顔面に拳を叩き込む。
よろめくトランクスだがすぐに持ち直した。
昔の天下一武道会に備えての修行の時はあっさりと吹き飛ばされていたのにだ。
「(これがガキの成長か…)」
昔の自分ならこんな気持ちは微塵も感じなかっただろうし、寧ろ疎ましく思っていたかもしれない。
我ながら良くここまで変わったものだ。
ベジータの拳と蹴りを何とか防ぎながら、トランクスは何とかベジータに一撃を入れようとする。
しかしベジータはトランクスよりも多くの実戦を経験し、技術もウイスとの修行で高まっており、おまけにベジータの最大の問題点でもあった本人も他人も気付かなかった程の気の技術の拙さはヤードラット星での修行で克服済みだ。
そう簡単にトランクスに一撃を当てさせはしない。
「どうした!それでは俺に一撃を当てられんぞ!!」
「絶対に当てて見せるよ父さん!!」
必死に攻撃を捌いて何とかベジータに一撃を入れようと隙を狙うトランクス。
「行くぞっ!」
ベジータの攻めが激しくなり、トランクスは防戦一方だ。
「ぐ…っ!」
トランクスはベジータの拳を受けるだけになり、ここまでかとベジータの攻めが僅かだけ緩んだのをチャンスを待っていたトランクスは見逃さなかった。
重力室でも使える小規模の気爆破でベジータの虚を突いた。
「何!?」
「今だぁっ!!」
トランクスは僅かな隙を逃さずベジータの顔面に拳を叩き込んだ。
吹き飛ばせはしなかったが、ベジータが僅かだけ後退したのを見て喜んだが、次の瞬間にはトランクスの腹にベジータの拳が突き刺さる。
「が…っ!」
「隙だらけだぞ。気を抜きやがって…まあ、今のお前には上出来だろう」
「は…はは…」
腹を押さえながら苦笑するトランクス。
今日の修行は終わりだと言おうとした時、悟林が重力室に入ってきた。
「お疲れ、トランクス君。モニターで見てたよ。ベジータさんに一撃入れるなんて大したもんだよ」
「…あっさりとやられたけどね…」
まさか情けない結果を見られていたことにトランクスは落ち込んだ。
「それでもだよ。ベジータさんの強さや経験を考えれば君は寧ろ大健闘だ。自信を持っていいと思う」
「そう…かな…?」
「そうだよ!はい、ケーキ作ってきたんだ。食べて?」
大きな箱に入ったパオズ山に自生している野苺で作ったケーキがトランクスに渡された。
「え!?ケーキ!?ありがとう!」
沈んでいた気分も悟林の手作りケーキで浮上する。
現金な息子に呆れるベジータだが、ベジータにも箱を渡された。
「はい、ベジータさんの分!」
「ふん、貰ってやる」
悟林のケーキ…それはとても美味なる物だった。
地球に来てから数多くの美食…菓子も含めて食べてきたベジータは相当に舌が肥えていたが、チチと悟林の作る手料理はベジータも素直に唸るレベルだったのだ。
悟空は常にこんな物を食べているのかとライバルを多少疎ましく思ったりしたが、いずれはこれが日常で食べることが出来ると思うと自然と顔が綻ぶ…流石は食べるのが大好きなサイヤ人だ。
リビングに向かい、ケーキを食べているとブルマもやって来た。
「あんた達…私を除け者にして何食べてんのよ!私の分は!?」
「安心してよブルマさんの分もしっかりあるから」
悟林は普通サイズのケーキが入った小さな箱をブルマに渡す。
夫と息子のケーキと比べて自分のは遥かに小さい。
「何か私だけ差別されてるみたい…」
「ブルマさん…このサイズ食べられるの?」
トランクスとベジータに渡したケーキはサイヤ人が満足出来るサイズなのでブルマでは確実に容量オーバーだ。
「そうなんだけど…何となく疎外感を感じるわ…うーん、美味しいっ!!」
ケーキを食べ始めるとブルマの顔が綻んだ。
ベジータ(無表情だが)とトランクスも美味しそうにケーキを頬張っている。
「それにしても悟林ちゃんとベジータの仲が良くて良かったわねトランクス。嫁舅問題が起きなくて?はあ、私も早く孫の顔が見たいわ~。出来れば初孫は女の子が良いわね~?」
「むぐっ!?」
ブルマの言葉にトランクスはケーキを喉に詰まらせた。
「止めろ馬鹿者」
ブルマのからかいに溜め息を吐くベジータ。
トランクスはまだ学生だ。
結婚はせめてトランクスが卒業してからだ。
「初孫…子供か…そうだ。もし子供が出来たらベジータさんが名前付けてくれる?」
初孫と聞いて、何時かは自分も母やブルマ、ビーデルのようになると思うと不思議な気分になった悟林は何となくだが、ベジータに頼んでみた。
「何?」
「たまにはサイヤ人の名前の子供でも良いんじゃない?…正直ブルマさんに頼むの怖いし」
ブラの時も結構考えていたようだし、グレートサイヤマンのデザインをしたブルマのセンスは少し怖いのでベジータを頼ることにした。
「どういう意味よ!?」
「…ふん、良いだろう。サイヤ人王族の血を引くんだ。それに相応しい名前を考えておいてやる。楽しみにしていろ」
ブラの時はブルマが既に決めていたようなので無駄になってしまったが、近い未来にリベンジも兼ねて備えさせてもらうことにしたベジータであった。
何だかんだベジータも初孫は楽しみなのだろう。
「えー!?私に名前付けさせてよーっ!!」
「「駄目(だ)」」
「何でよケチーーーッ!!」
ブラの時は良かったが、ブルマのセンスを疑っている2人は変な名前を付けられては困るので即座に却下した。
ベジータと悟林に却下されたことで両手足をバタつかせるブルマの叫び声がカプセルコーポレーションに響き渡った。
一方で悟飯はパンと共にピッコロとの修行を終えて帰路に就いていた。
「………」
「そんなに気功波が使いたいかい?」
「うん…」
「うーん、姉さんも心配性だからなぁ…でも、今のパンくらいの頃には姉さんも使ってたし…大丈夫かな…?よし!パン!昔パパと伯母さんがピッコロさんに教えてもらった最初の気功波を教えてあげるよ」
「本当!?」
「勿論さ!寧ろ姉さんが気にしすぎなくらいだよ!大丈夫!!まずは形から…両手を額の前で重ねて…全身の気を額を通して手に集めて、その集めた気を両手を前に突き出す際に放出する…それが魔閃光だよ。舞空術が使えるなら気功波はすぐに撃てるさ。気の練り方も覚えないとね」
悟林とピッコロからも駄目出しをされているのに娘可愛さで教えてしまった悟飯。
魔閃光を覚えてしまったと言うことは当然気弾も使えるようになってしまったと言うことで、パンが感情のままに気弾を撃ってしまったことでバレてしまい、悟飯は悟林とピッコロによって説教の後にボコボコにされて川を漂流することになったとか。
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