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ドリトル先生と桜島

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第五幕その二

「自害したとね」
「先生は思ってるんだ」
「大坂の陣で」
「あの人は」
「そうだよ、ただそうしたお話があって」
 木下家にというのです。
「木下家の分家の人でね」
「まさかと思うけれど」
「その人がなんだ」
「実は秀頼さんのお子さんだった」
「そうだったんだ」
「処刑された人は僕が思うにね」
 先生はご自身のお考えを言いました。
「大坂の陣の相手だった家康さんに人質に出されていた」
「その人?」
「その人がなんだ」
「処刑されたんだ」
「秀頼さんのお子さんの身代わりとして」
「その人は豊臣家の重臣のお子さんで」
 それでというのです。
「秀頼さんのお子さんの代わりにね」
「殺されて」
「それでなんだ」
「秀頼さんのお子さんは生きていたんだ」
「その実は」
「その人を連れて逃げたという人の行方もわからないし」 
 こうしたこともあってというのです。
「何かとね」
「謎が多いんだね」
「秀頼さんとそのお子さんについては」
「そうしたお話があって」
「うん、それで木下家の分家の人は一万石の大名になって」
 またその人のお話をしました。
「江戸時代の間ずっとね」
「残っていたんだ」
「そうだったんだね」
「その人も天寿を全うして」
「そのうえで」
「幕府も気付いていただろうけれど」 
 その人が秀頼さんのお子さんとです。
「処刑したということにして無益な殺生もね」
「ああ、江戸幕府ってそうしたこと嫌ったしね」
「死罪の判決出ても多くの場合そうしなかったしね」
「幕府って罪を軽くする風にしてたし」
「判決を」
「そうしていたし」
「だから気付いていても」 
 それでもというのです。
「死んだからいいということにして」
「見て見ぬ振りをして」
「その人をそのままにしたんだ」
「幕府も」
「そもそも家康さんも豊臣家を滅ぼすよりも」
 それよりいもというのです。
「大坂から出て行ってもらえばよかったし」
「あそこからなんだ」
「それでよかったんだ」
「家康さんとしては」
「そうだよ、大坂が手に入れば」
 それでというのです。
「幕府の統治は盤石になるからね」
「大坂は天下の台所で」
「日本の西の方の要だし」
「あそこが手に入ったらね」
「幕府にとっても大きいから」
「だからね」
 それでというのです。
「あそこさえ手に入ればもう幕府の統治が盤石なるからね」
「別に豊臣家を滅ぼさなくてよかったんだ」
「これといって」
「そうだったんだ」
「その大坂から出たら豊臣家はね」
 もうというのです。 
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