仮面ライダーAP
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陰謀編 穢れた正義と堕ちた英雄 第2話
前書き
◆今話の登場ライダー
◆森里駿/仮面ライダータキオン
元ノバシェード構成員であり、「ライダーマンG」こと番場遥花に敗れた後は芦屋隷の保護観察を受けつつ、実験に協力していた改造人間。ぶっきらぼうに振る舞うが、情には厚い。当時の年齢は26歳。
※原案はエイゼ先生。
◆忠義・ウェルフリット/仮面ライダーオルバス
アメリカでは騎馬警官として活躍していた父の影響で警察官となった、ハーフの青年。明朗快活でお調子者だが、真っ直ぐな心根の持ち主でもある好青年。当時の年齢は21歳。
※原案はX2愛好家先生。
ギルエード山地での爆発事件から、さらに数週間が過ぎた――2020年7月下旬の夜。北欧某国の領海内に位置する、絶海の孤島「シャドーフォートレス島」は、島全体を飲み込むほどの戦火に包まれていた。燃え盛る激しい炎が、暗夜の空を照らしている。
「撃て撃てぇッ! あの変態女を生かして帰すなァッ!」
「確実にこの場で仕留めるんだッ!」
だが、それはノバシェードの襲撃を受けてのことではない。むしろこのシャドーフォートレス島こそが、ノバシェードの根城となっていたのである。その情報を聞き付け、島に訪れたノバシェード対策室の特務捜査官を排除するための砲火が、島そのものを焼き払わんとしているのだ。
「……まさか、あのタレコミが事実だったとはね。願わくば、イタズラであって欲しかったわ」
島の至るところに設置されている機関銃や大砲に狙われている、件の特務捜査官――ヘレン・アーヴィング。遮蔽物に身を隠している彼女は自動小銃「GM-01スコーピオン」を握り締め、白銀の仮面の下で苦々しい表情を浮かべていた。
軍部が保有する海上要塞である、このシャドーフォートレス島の兵士達は、密かにノバシェードと繋がっている。その匿名での情報提供を受け、ちょうど某国に滞在していたヘレンがこの島の調査に訪れたのだが――そこで待ち受けていたのは、「口封じ」を目論んだ兵士達による「手厚い歓迎」だったのである。
最悪なことに、情報通りの事態がこの島で起きていたのだ。「この情報は確かめる価値がある」という捜査官としての直感を信じ、この島に潜入していたヘレンは仮面の下で冷や汗をかいている。
万一の場合に備えて彼女が事前に着用していた、純白の新型強化服――「マス・ライダー軽装型」。このスーツが無ければ、間違いなく今頃は蜂の巣にされていたのだろう。装甲を極限まで削ぎ落とし、機動性のみを追求した彼女の新型スーツは、通常の量産試作型とは比較にならない移動速度を発揮出来るのだ。
(……裸より恥ずかしい格好だけど、この軽装型を用意しておいて正解だったわ)
そんなバリエーション機を纏っている彼女の扇情的なボディラインは、極薄の白い強化繊維によってくっきりと浮き出ており、凹凸の激しい極上の女体にぴっちりと隙間なく密着している。僅かに身動ぎするだけでぷるぷると揺れ動く特大の爆乳と巨尻は、当然この戦闘の中で激しくばるんばるんと躍動していた。細く引き締まった彼女の腰つきが、その豊満な果実をより蠱惑的に際立たせている。
「はぁ、はぁっ、んはぁっ……!」
圧倒的に不利な状況下。そこに立たされたヘレンの肉体は密閉されたスーツの内側でしとどに汗ばみ、淫らな雌のフェロモンを噴き出している。一切の無駄なく身体にフィットさせるため、下着を一切身に付けていない状態でこのスーツを着用している彼女は、蠱惑的に息を荒げていた。
――そんな中、ヘレンの脳裏にある過去の記憶が蘇る。それは決して思い出したくない、恥辱の過去であった。
(……こんな恥ずかしい思いをしたのは、あの時以来ね。アレよりも破廉恥な格好をすることになるなんて、思いもしなかったわっ……!)
数ヶ月前――当時の「先輩」だった真凛・S・スチュワート捜査官とバディを組んで活動していた頃。ノバシェードに攫われた女性達が、戦闘員達との「結婚式」を挙げさせられるという、極めて卑劣な事件に直面したことがあった。
同じ女性としての義憤に燃えたヘレンと真凛は現場を抑えるため、囚われた女性達が着せられていたものと同じ「ウェディングドレス」を纏い、現地に潜入していたのだが――そのドレスは非常に露出度が高く、2人の扇情的な肉体を強調するデザインとなっていたのである。
胸元をぱっくりと大きく開き、白く豊穣な谷間を露わにしている――だけではない。鼠蹊部に食い込む白パンティとレースのガーターベルトが、2人の白く肉感的な美脚を際立たせていたのだ。ウェディングドレスとは名ばかり。女性の尊厳を踏み躙るために用意された、あられもない恥辱的な衣装だったのである。人を人とも思わぬ鬼畜の所業。ヘレンも真凛も、その屈辱的な格好には怒りを隠せずにいた。
だが結局、潜入は失敗に終わってしまった。他の女性達とは比べ物にならない美貌とスタイルの持ち主だったヘレンと真凛は早々に見破られ、2人揃って組み敷かれてしまったのである。彼女達の突出したプロポーションと、全身の柔肌から滲み出る濃厚なフェロモンが仇となったのだ。それでも間一髪、新世代ライダー達の武力介入により、彼女達は事なきを得た。
彼らの到着が間に合っていなければ、ヘレンも真凛もその場で「純潔」を散らし、名実共に戦闘員達の「花嫁」にされていたのだろう。戦闘員達の前で両膝を着かされ、「誓いのキス」をさせられそうになった瞬間は、ヘレンにとっても真凛にとっても人生最大の汚点だ。
それでも新世代ライダー達の助太刀によって状況を覆した後は、対策室の特務捜査官として、事件の首謀者に「相応の裁き」を下したのだが――その時のことは、ヘレンにとっては思い出したくもない恥辱の記憶。紛うことなき、「黒歴史」そのものであった。
あの時に着る羽目になったウェディングドレス(のようなモノ)よりもさらに恥ずかしい格好が、この世に在るとは思いもしなかった。そしてあの時とは違って――真凛はもう、そばには居ない。このシャドーフォートレス島には今、ヘレンしか居ないのだ。
(……確かに形勢は不利。だけど私達対策室は、新世代ライダー達は、ジャスティアライダー達は常に……そんな状況の中を生き延びて来た! 今さら、恐れてなんかいられないッ!)
だが、どれほどの窮地に立たされていようと。背中を預ける「先輩」が居なくなった今、ノバシェードの脅威から無辜の市民を守れるのは自分しか居ない。いつまでも、対策室を去った真凛の影に縋ってはいられないのだ。
「……掛かって来なさいッ!」
気を取り直したヘレンは、己の弱さを振り切らんとする勢いで遮蔽物から飛び出すと、猛烈な速さで地を駆けながらスコーピオンを連射し始めていた。くびれた腰を左右にくねらせ、地を踏むたびに安産型のヒップラインが波打つように揺れる。
妊娠・出産に適した極上の巨尻がぷるんぷるんと弾み、男達の視線を惹き付ける。彼女が引き金を引く度に、発砲の反動でたわわに実った乳房が大きく弾んでいた。
そんな彼女を狙う銃弾が仮面を掠め、その後ろで砲弾が爆ぜる。それでもヘレンは怯むことなく戦場を駆け抜け、正確無比な射撃で矢継ぎ早に戦闘員達を撃ち抜いて行った。
「がはぁッ……!」
「そんな馬鹿な、相手はたった1人! それも量産試作型……のような装備を着ているだけの女だぞ!? 現役軍人たる我々が、あんな女1人にぃッ……ぐほぁッ!?」
機関銃や大砲の射手、さらには遠方から狙っていた狙撃手まで撃ち抜かれ、戦闘員達の迎撃体勢が徐々に乱れて行く。ノバシェードの構成員であり、現役の陸軍兵士でもある彼らは組織内においてもかなりの戦闘力を有しているはずなのだが――ヘレンは彼らの弾雨すらも、紙一重の動きで切り抜けていた。
(改造被験者であるために祖国からも疎まれ、この島に左遷されていた兵士達……。確かに現役の軍人というだけあって、狙いも正確ね! だけど……この軽装型の移動速度は、それだけで攻略出来るほど鈍くはないのよッ!)
上下左右に乳房と桃尻を弾ませ、くびれた腰をくねらせながら、ヘレンは遮蔽物から遮蔽物へと素早く駆け込み、スコーピオンを撃ち続けている。行く手を阻む戦闘員達を撃ち抜きながら前進する彼女は、徐々に島の中枢に位置する要塞内部に近付こうとしていた。
「死ねぇッ! 対策室の変態女ッ!」
「……ッ!」
そうはさせじと、物陰から飛び出して来た戦闘員の1人が至近距離からコンバットナイフを振るう。その刃先をスコーピオンの銃身で受け流したヘレンは、即座に身体を捻って華麗なハイキックを繰り出していた。
「……はぁあッ!」
スラリと伸びた優美な美脚が一気に振り抜かれ、風を切り裂いて行く。長い脚がI字開脚のように大きく振り上げられ、鼠蹊部に強化繊維が深く食い込んでいた。無防備に「開帳」された股間が周囲の注目を集める中、流麗な蹴りが戦闘員の延髄に炸裂する。
「ぐほぁッ!?」
戦闘員の悲鳴と鈍い衝撃音が、彼女のハイキックの威力を雄弁に物語っていた。その一撃に意識を刈り取られた戦闘員の身体が力無く倒れ、ヘレンの爆乳と巨尻が反動でぶるんっと揺れ動く。最前線に立つ特務捜査官として鍛え上げられ、細く引き締まっている筋肉質な腰つき。そのくびれによって際立つ長い美脚はピンと伸び、戦闘員の首に命中していた。
「……舐めやがって! その窮屈そうな強化服ひん剥いて、女に生まれたこと後悔させてやらァッ!」
「くッ……!?」
だが、伏兵は彼1人ではなかったようだ。もう1人の戦闘員がヘレンの懐に飛び込み、ナイフによる斬撃を何度も繰り出して来る。先ほどの男よりもさらに手練なのか、今度はヘレンも防戦一方となっていた。掌には到底収まらない張りのある爆乳と、安産型の瑞々しい巨尻が、彼女の回避行動によってばるんばるんと躍動している。
(さすが現役軍人、接近戦も一流ね……! だけど、私だって負けるわけには行かないッ!)
それでも、機動力に特化した軽装型のポテンシャルならば十分に対応出来る。その確信を胸に「反撃」に転じたヘレンは、一瞬の隙を突いてナイフを叩き落としていた。
だが、先ほどのようなハイキックを繰り出すには間合いが近過ぎる。かといってスコーピオンによる殴打では隙が大き過ぎるし、発砲しようとしても銃口を掴まれてしまう恐れがあった。
ならば、と。ヘレンは敢えて真正面から戦闘員に飛び掛かり――がぱっと股間を大きく開くと、彼の頭部を肉感的な太腿で挟み込んでしまう。そのまま股間をむにゅりと敵の顔面に押し付けた彼女は、戦闘員の首を太腿で完全に固定していた。
「んがぁっ!?」
「これで……どうっ!?」
扇情的なラインを描く鼠蹊部と股間。顔面に伝わる柔らかなその感触と、芳醇な雌の匂い。それを愉しむ暇など、戦闘員には無かった。彼の頭を太腿で挟み込んだヘレンは、そのままくびれた腰を勢いよく捻り――フランケンシュタイナーの要領で、戦闘員の脳天を地面に突き刺してしまう。
「ぐ、が……!?」
「……効くでしょ?」
傍目に見れば「役得」だが、喰らっている本人は何が起きているのかも分からぬまま、意識を刈り取られてしまったのである。強烈な「幸せ投げ」にダウンした戦闘員は、そのままピクリとも動かなくなっていた。
「さぁ、次は誰ッ!?」
戦闘員が昏倒したのを確認した後、即座にスコーピオンを構え直したヘレンは次の敵を仕留めるべく、再び乳房と桃尻を揺らして走り出して行く。左右に腰をくねらせて戦場を駆ける彼女の果実が、上下左右にばるんばるんと躍動していた。
――かつての冷戦時代。西側陣営のミサイル基地として開発されていたこのシャドーフォートレス島は、非常に重要な拠点とされていた。
だが冷戦終結後、核兵器が全て解体されてからは戦略的価値が大きく低下。海上要塞とは名ばかりであり、現在は左遷という形で「島流し」にされた「訳アリ」の軍人達が集まる、「流刑地」と成り果てている。
人々から疎まれ、追放され、忘れ去られた者達を封じ込めるための影の要塞。そんな場所に押し込められ、隔離され、鬱屈とした日々を過ごしていた元被験者の軍人達。
彼らがノバシェードに与するようになったのも、ある意味では必然だったのかも知れない。ヘレンとしても、そんな彼らに対する同情が無かったわけではない。それでも無数の重火器を向けられてしまった以上、撃ち返すしかないのである。
「……どこまで撃たせれば気が済むのよ、あなた達はぁあッ!」
悲鳴にも似た慟哭が天を衝き、スコーピオンの銃口が火を噴く。その銃弾に撃ち抜かれた戦闘員達の断末魔が、この島に響き渡る。
誰も救われない、勝利者など居ない無益な戦い。それは銃声と爆音が耐え果てるまで続いていた――。
◆
――同時刻。シャドーフォートレス島上空を飛行している1機のヘリが、燃え盛る戦場に接近しようとしていた。闇夜を照らす激しい猛火。その赤い輝きに、パイロットの男性は飄々とした佇まいで口笛を吹いている。
「ヒューッ……! おいおい見てみろよ忠義! 対策室のお嬢様、一足先におっ始めてるみたいだぜ! 清廉そうな顔してるくせに、ヤることが派手だねぇ……!」
ヘリの男性パイロット――マイクは陽気な声を上げながら操縦桿を握り締めている。一方、忠義と呼ばれた金髪碧眼の美男子は、悪魔の力を宿した変身ベルト「ジャスティアドライバー」をその腰部に装着していた。
「……しっかし、まさかあの情報提供通りの事態が起きてたとはな……。この国の軍部も政府も、領海の管理が杜撰過ぎるぜ。島ごとノバシェードのアジトにされてたことに、1年近くも気付かなかったままだなんて……」
赤と黒を基調とする、ノースリーブの特殊戦闘服。その繊維に袖を通している美男子は、開かれたヘリのドアから「降下」しようとしている。彼の背中に、パラシュートは無い。古い銘柄の煙草を咥えている彼の蒼い瞳は、真下の島を静かに見下ろしている。
「さぁな。案外……上の連中も、分かってて泳がせてたのかもよ?」
「泳がせるって、何のためにそんなこと……」
「そんなこと俺が知るかよ。……明らかなのは、俺達がブッ飛ばすべきクソ共があの島に居るってこと。お前にとっちゃそれだけで十分じゃねぇのか?」
「ハッ……言えてるぜ」
「仮面ライダータキオン」こと森里駿から餞別にと貰っていた、稀少な煙草。その1本から立ち昇る濃厚な煙が、夜風に流されて行く。最後の一服を終えた「仮面ライダーオルバス」こと忠義・ウェルフリットは、胸の携帯灰皿にその吸い殻を収め、ドアの縁に手を掛けていた。
「森里のダンナから貰ったって言うそれ、後で俺にも1本くれよなぁ。今じゃなかなか生産されてないプレミアものだろう?」
「だったら後でちゃんと迎えに来いよ、マイク。この前みたいに、弾切れだから『便所行き』……ってのはナシだぜ?」
「ハッ……それならそっちこそ、モタモタしてないでさっさとお姫様を助けに行くんだな。……鳥になって来い! 幸運を祈るぜ!」
「……おうッ!」
そして、マイクとのそのやり取りを最後に。忠義は前方に体重を預け――そのまま夜空に身を投じて行く。パラシュートを持たず、猛烈な勢いで落下して行く彼は空中で身体を大の字に開き、腰のジャスティアドライバーにその「風」を集めていた。
彼のドライバーは一定以上の「速度」を検知することによって、変身機能が作動する仕組みになっている。普段なら専用バイクのマシンGチェイサーでその加速を得ているところなのだが、行き先が絶海の孤島となれば、この方が「疾い」のだ。
「……ッ!?」
「新手だッ! 対策室の新手が来たぞッ!」
「対空機銃用意ッ! 撃ち落としてやれッ!」
だが、ノバシェード側もマイクのヘリに気付かないほど間抜けではない。彼らはヘリから急速に降下して来た忠義を撃ち落とそうと、地上から機関銃を連射している。かなり古い年代のものを使っているようだが、それでも正常に稼働している銃器だ。当然、1発でも当たれば即死ものである。
「対策室の相手で忙しいだろうに、サービス精神旺盛だなッ……!」
忠義は落下しながら空中で身体を捻り、紙一重のところで対空砲火をかわす。まだ彼のジャスティアドライバーは、変身に足る「速度」を検知していない。変身機能が作動する前に蜂の巣にされては、本末転倒だ。
「……!」
地上が近付くに連れて、忠義を狙っている機関銃の周囲も鮮明に見えて来る。戦火に照らされた機関銃の近くには、弾薬を運搬するための大型トラックが停まっていた。
そのトラックの燃料タンクに目を付けた忠義は、高速で落下しながら太腿のホルスターに手を伸ばす。そこから引き抜かれたのは、1丁の拳銃――「M1911」。アメリカ軍に制式採用されて以来、70年以上も使われて来た45口径の自動拳銃だ。
(見てな……親父)
アメリカの騎馬警官として活躍していた父の影響を受けて以来、どの現場に赴く時も必ず携行して来た傑作拳銃。そんな「相棒」を手にして不敵な笑みを溢した忠義の銃口は、燃料タンクの位置を正確に捉えていた。
確かな信頼性と威力故、長きに渡り重宝されて来た名銃。その歴史を誇らしげに語っていた父への憧れ。忠義はその憧憬を胸に、重く無骨な引き金に指を掛ける。
「……こっちもサービスしてやるよ。盛大な『花火』でな」
刹那。大口径の銃口が火を噴き、強力な.45ACP弾が空を裂く。夜空を閃いた1発の銃弾が、トラックの燃料タンクに突き刺さり――そこから爆ぜた猛炎が、機関銃もろともその一帯を根刮ぎ焼き払って行く。火だるまと化した戦闘員達は地面に転がり、身体に付いた火を消そうとのたうち回っていた。
「うぐわぁぁあッ!」
「あ、熱い、熱いぃぃいッ!」
改造人間そのものに銃弾が通じるケースは限られる。だが、ただ銃弾を当てるだけが実戦の勝ち方ではない。並外れた身体能力に胡座をかいた「超人擬き」を倒す方法など、いくらでもあるのだ。
「爆発だと!? 一体何が起きたッ!?」
「奴め、トラックの燃料タンクに……ッ!」
予期せぬ事態に動揺した周囲の兵士達が、対空砲火の手を緩めたのはその直後だった。そして、彼らの手が止まった瞬間。ジャスティアドライバーがついに、一定の「加速」を検知する。
「来たな……! 変身ッ!」
やがて、激しい衝撃音が響き渡ると。その震源地から噴き上がった猛煙を掻き分けるように――真紅の騎士が、この戦場に降臨した。大型刀剣「エンジンブレード」を携えた仮面ライダーオルバスが、ついに変身を完了させたのである。
「……変わり映えのねぇ戦闘員の群れ。そろそろ飽きたが……付き合ってやるか」
自身を迎え撃とうと、小銃を手に迫り来る戦闘員達。彼らを眼前に、エンジンブレードの峰を肩に乗せた真紅の騎士は――仮面の下で、軽くため息を吐いていた。「多勢に無勢」という、本来なら絶望的であるはずのこの状況ですら、彼にとっては見飽きた景色なのである。
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