吸血鬼の真祖と魔王候補の転生者
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第11話 殺戮
前書き
前回のあらすじ
酒場でのひととき
悪の魔法使い
※※注意※※
前話に引き続き、一宗教を敵役として表現しております。
あくまで物語の一部として、お読みください。
「あれか?」
「えぇ、そのようね」
皆さんごきげんよう、シルヴィアよ。
私達は昨夜酒場で決めた事を実行するため、昼過ぎに宿を出た。
そうして村外れまで来てみれば、それが視界に入る。
「この村の規模にしてはでかいな」
「えぇ・・・まぁどうせ、信者からかき集めたお金でしょうけどね」
目の前に立つ教会は、確かに辺境の村に建つにしては大きな規模だった。
大方、大きさで財力や権威を誇示しようといったところだろう。
まぁ、大きかろうが小さかろうが、やる事は同じなのだけど。
私は大抵同じだが、普段から色々な服を着ているエヴァも、今日は本気で私と同じ服装をしている。
神様から貰ったブーツ・ホットパンツ・ブラウス・ローブ・マント。
左の腰には短刀とレクイエム。
エヴァも左右の腰にクライストを差し、2人揃ってマントを翻し悠々と歩く。
その2人の左手薬指には指輪が光る。
ここに来るまで、村人の視線をかなり受けた。
全身黒に身を包んだ美女2人。視線を集めない訳ではないが理由は別にある。
黒い物を着る・猫を飼う・不審な行動をする。
魔女狩りの時代に避けられた行動の1つだからだ。
昨夜は夜で酒場という事でそれほどでもなかったが、昼間に堂々と着ればさすがに注目を浴びる。
そんな些細なことで魔女とされ処刑されたのが魔女狩りの時代なのだから。
この村でもその空気はしっかり根づいてしまっている。
・・・やはり、決まりね。
マスターの話でほぼ100%だったのが、ここまでの道中でより確信となる。
「おい、お出迎えのようだぞ」
「そのようね」
教会を視界に入れてから少し歩くと、向こうもこちらを視認したようで、視線を向けてくる。
教会の入り口に立っているのは男2人。革の鎧に長剣。賊か傭兵か、見分けがつかないような風貌だ。
まぁ、美女2人をにやけた顔で見ているのも主原因かもしれない。
男達が口を開く前に、小さく魔法を唱える。
「『コンフュ』」
効果が出たのか、一瞬2人の男の視線から光が消え無意識のように見える。
次の瞬間には元に戻り口を開く。
「なんだぁ、姉ちゃんたち?何か用か?」
「司祭様ならそろそろお勤めの時間だから会えないぞ」
にやにやと話す男2人。『お勤め』の言葉にエヴァがぴくりと反応する。
「私達、義姉妹で旅をしているの。ここには旅の安全を祈りに来たのよ。それより・・・お勤めってもしかして魔女絡みかしら?」
「あぁ。今ごろ魔女共を自白させるために、司祭様ががんばっているだろうよ」
「自白って事は・・・やっぱり拷問とかするのかしら?」
「あぁ・・・まぁそういう事をするときも有るけどな」
「司祭様は慈悲深いからな・・・鞭だけでなく飴も与えて罪を認めさせようとなさるのさ」
「飴?」
「男と女でする気持ちいい事さ」
そこまで言うと、下衆共のにやにやとした笑いが更に酷くなる。
「魔女なんて所詮家畜さ。そんな奴らにわざわざ飴を与えて自ら罪を認めさせようなんて・・・司祭様は本当に慈悲深い」
「あぁ、まったくだ。昨日は俺たちも、神の名の下その下僕としてお勤めを手伝ったんだぜ。いやぁ、大変だった」
そこまで言えば昨夜の事を思い出したのか更に笑いはじめる。
私は片方の男の目の前に立つ。
「ん?どうした?」
「ありがとう。いい話を聞けたわ・・・死んで頂戴」
「は?」
ザシュッ!・・・ゴロン・・・ドサッ!
微笑みかけながら宣告すると、私は迷いなくレクイエムを抜き、一太刀で下衆の首を斬りおとす。
すぐに隣でも同じ音がして、視線を向ければエヴァがクライストを一振りし血を払っている。
「あの魔法は?」
「私だけが使えるFF魔法の一種よ。相手を混乱させて、認識を誘導する魔法」
「認識疎外じゃだめだったのか?」
「あれは広範囲・大多数向けだもの。それに認識を阻害する範囲は個人差が出る。そもそもあれの効果は、あくまで認識をまったくしないか、認識した非現実を常識の範囲内に修正するくらいの力。言いかえれば、認識をOFFにするか、目の当たりにした現実を、掛けられた人間の常識に修正して認識する力よ」
「コンフュと認識阻害、どう違う?」
「あの下衆共にとって私達は、突然現れた女。不審や警戒を感じるのが当然で、彼らの常識には存在していない。そんな奴らに認識阻害を掛けても大して効果はない」
「・・・」
「それに対してコンフュは、相手の認識を直接阻害する。今回は私達に対して好意的な感情を抱くように混乱させたわ。だからあそこまでぺらぺら喋ってくれたのよ」
「認識阻害にそんな落とし穴があったとはな・・・」
「原作の知識のお蔭よ。野営で見つからないように結界として張るとか、その程度なら問題ないけれど」
「昨日の酒場では認識阻害の方を張ったな。対象が多かったからか?」
「それもあるけれど、あの場には酒場の客は酒を飲む、という常識があるのだから問題ないのよ。私達が何をしていようと、その常識に修正されて彼らには私達が酒を飲んでいるようにしか見えないのだから」
「実際はあんなにいちゃいちゃしていた訳だがな」
「エヴァの可愛い姿は私のものだもの。例えばだけど、平和ボケした時代に認識阻害を多用すれば、その影響下の人間はそれがどんなに危険な行為でも、平和と言う常識に修正、阻害されて躊躇いなく行ったりするわ」
原作の薬味パーティーの多さってこれが原因じゃない?とか思っている。
戦いについて何の心得も無い一般人(何名か除外)が英雄の息子と一緒に行動して、魔法使いは正義とか平気で言っちゃう連中のいる世界に関わるとか、自殺クラスの暴挙としか言えないと思う。
まぁ、今回は私が居るのだから、存分に邪魔させてもらうつもりだけど。
・・・約1名、物語の設定上認識阻害が効かないはずの人間が、真っ先に首突っ込んでいたりするけれど。
出生とか設定とか抜きにしてあれは、あれがどうしようもない馬鹿だから、と私は認識している。
そして私は、愛すべきバカ以外の馬鹿が嫌い・・・よって彼女は救わないけどね。
そんな事を話したり考えたりしていると、礼拝堂の扉前に到着。
気と魔力、更には魔眼まで使って気配を探る。
昨日の時点で酒場のマスターに、教会の横暴が始まってから村人は教会に近づかなくなったと聞いている。
中に居る気配は100程。
そのほとんどは力にものを言わす荒くれ者の三下の気。
後は後ろ暗い事をしている奴特有の濁り淀んだ気。
「どうする?」
同じく探り終えたのか、エヴァが聞いてくる。
「わかっているでしょう?」
微笑みながら答える。
「Are you ready? (準備はいい?)」
「Of course (もちろん)」
短く問いかければ、ゾクゾクする艶やかの声で答えが紡がれる。
2人は同時に脚を振り上げ・・・・・・・・・・目の前の扉を蹴り飛ばした。
礼拝堂の中に居た下衆共は、吹き飛んできた扉と私達を茫然と見つめる。
そんな奴らに、パーティーの始まりを宣言する。
「「Let’s rock!!! (派手にブチかませ!!!)」」
扉から祭壇に向かう中央の通路。その両脇に座るための長椅子が並ぶ。
その椅子にばらけて座り、昼間から酒盛りをする下衆共。
扉を蹴破った瞬間、私は左に、エヴァは右に分かれ駆ける。
そこから始まったの戦闘ではなく殺戮。
一番手前に居た5人にレクイエムを一閃。首を切り裂く。
次の10人の頭上を飛び越しながら、『魔法の射手・雷の20矢』を叩きこむ。
見た事もない現象に目を見開きながら、心臓と頭を貫かれた10人は絶命。
制御力に重点を置いたおかげで、無詠唱の魔法の射手でも十分な威力を出せるわ。
この辺りでようやく下衆共も事態を認識して、何かを喚きながら剣を抜き始める。
「このアマぁぁぁ!」
「喚く前に手を動かしなさい!」
喚きながら突っ込んできた猪を、避けざまに腹に一太刀。あっけない。
そのまま更に4人斬り伏せる。これで20人。
視界が開けたなと思ったら、祭壇の前に並ぶ30人の下衆共。
その手には弓矢が握られ、私に向けて引き絞られている・・・・・・・・・・なんて浅はかな連中。
「撃てぇぇぇ!」
中央の1人の掛け声で、30の矢が私に殺到する。
私は椅子の合間で、右手にレクイエムを持ちながら、悠然と佇む。
恐怖か何かで動けないとでも思ったのか。避ける動作を見せない私に下衆共は歓喜の表情を浮かべる。
しかし次の瞬間・・・
カン!カカカカカン!
マントに付与された防御魔法が、あっさり矢を防ぎ地に落とす。
実際問題、私にダメージを与えるには、マント・ローブ・指輪に付与された対物対魔の防御魔法、私自身が張っている魔力障壁、計4つの障壁を突破しなければならない。
まぁその時点で気と魔力を使い身体強化をしているので、攻撃は通ってもダメージを受けるかどうかは別問題なのだけど。
そんな訳で起死回生を狙った弓矢が訳も分からず地面に落ちた下衆共は・・・顔面蒼白。
だから私は、微笑みながら歌うの。
「『リク・ラク・ラ・ラック・ライラック!雷の精霊、101柱、集い来りて敵を射て!魔法の射手・連弾・雷の101矢!』」
鎮魂歌を奏でると、空中に101個の魔力の塊。
見た事もない現象にただ震えるしかない下衆共。
やがてその塊は矢の形状に変化、敵を貫く。
次の瞬間には体を串刺しにされ、雷の熱で体を炭化させた肉塊が30、崩れ落ちた。
回りに誰もいなくなったのでエヴァを探すと、彼女も最後の1人を斬り伏せたようだ。
「終わったか?」
「えぇ。全員斬り伏せたの?魔法使えば早かったのに」
「私はシルヴィアほど対多数に慣れていないからな、試しておきたかった」
そんな事を話しながら、剣の血を払い気配を探る。
「あとは地下か・・・」
「そのようね、行きましょう」
残りを片付けるために足早に次に向かう。
「な・・・何なんだ貴様らは!」
地下に降りて最初に見つけたのが、女性たちを捕えておく牢獄。
中には10人の女性が、ほとんど布切れのような服を纏い倒れていた。
「エヴァ・・・頼んだわ」
「あぁ・・・」
いざ目の前にすると、沸々と怒りが沸き起こるのを感じる。
所詮赤の他人と割り切ってもこれだけの怒りなのだ。
怒り故に逆に冷めていく私達。牢の女性たちの介抱をエヴァに任せると、最奥の部屋に進む。
中から聞こえる笑い声。内容は心の底からこの魔女狩りを楽しんでいると言う事、許可したローマを賛美するもの。
扉を蹴破り、教会の服を着た2人を残して斬り殺す。
その数10人。お楽しみの合間だったのか部屋の中に女性はいないので、遠慮なく殺戮する。
油断して酒を飲んで騒いでいる下衆10人、斬るのに1分も掛からない。
斬り終えて部屋を見回せば、用途が一発で分かる拷問部屋。
そうしてへたり込む、着ている服の豪華な装飾からこの教会の司祭であろう下衆の言葉と言うわけだ。
ちなみにもう1人、補佐役の方は部屋に隅で震えている。
「別にあなたが知る必要はないわ・・・ここで死ぬのだから」
剣を4回振る。手首と足首が斬り飛ばされる。
「ぎゃぁぁぁぁぁ!やめてくれぇぇぇ!」
・・・この言葉でカチンときてしまった私は、両手両足を斬り飛ばしてしまった。
むぅ、次は肘と膝を斬ろうと思っていたのに。
「あぁぁぁっぁぁぁぁ!」
「あの子たちがやめてくれと言って、あなたはやめたのかしら?助けたのかしら?」
もちろん、実際に言ったところを見た訳ではないが、容易に想像はつく。
「あああああああああ!」
「素直に答えれば命だけは考えてあげる。どうしてあんなことを?」
「ローマの友人に聞いた!教会が後ろ盾になってくれると!カトリック教会じゃどこでもやっている!」
予想通りの答えを喚き散らす下衆。
「そう・・・ならもういいわ。死になさい」
「ま、待ってくれ!助けてくれると・・・」
「考える、と言ったのよ。そして考えた結果・・・あなたは死ぬべき下衆よ」
冷たく見下ろしながら、一閃。あっさり斬り落とす。
「さぁ。あなたにはまだやってもらうことがある」
そうして1人残った補佐役を立たせると、後ろ手に手枷を嵌め部屋を出る。
「エヴァ、どう?」
「肉体的な傷は治療した・・・だがそれ以上は私には無理だ」
「そっちは任せて」
短く会話し、下衆をエヴァに任すと1人ずつ治療する。
『エスナ』
本来なら状態異常を治すこの魔法は、精神的な傷を治す事も可能になっている。
女性にとって襲われた、犯されたという事実は一生ものの傷として残り続ける。
その事実を消し去ることはできないが、本来数年・数十年懸けてようやく、過去の一事実として受け止められるかどうかという時点まで、癒す事ができる。
少なくともフラッシュバックで苦しんだり、男性恐怖症になったり・・・という事は限りなく0に近いはずだ。
「シルヴィア、リュックを出してくれ」
全員の治療を終えると、エヴァがそう言ってくる。
「どうしたの?」
「洋服袋の服を着せたい・・・このまま外に出す訳にもいかないだろう」
言われてみればその通り、彼女たちは殆ど裸に近い状態なのだ。
「それじゃぁエヴァはこのまま彼女たちの介抱をして落ち着いたら外へ。私はこいつに案内させて、溜めこんだ食糧と財宝を表へ運ぶわ」
「あぁ、分かった」
空だった4つ目の小分け袋を出すとリュックをエヴァに渡し打ち合わせ、下衆を促し作業を始めた。
後書き
お読みいただきありがとうございます。
さてさて、我らがシルヴィア様は本格的に敵対行動を起こし始めました。
それにしても戦闘シーン難しいorz
チートゴリ押しでこれでも軽いはずなのに・・・本格的に書かれている作者様たちを尊敬する今日このごろです。
この作品の戦闘シーンは、ゆるく行きます。まぁ、シルヴィア様が無双する作品ですので・・・
それではまた次回。
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