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おっちょこちょいのかよちゃん

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291 西部の領土では

 
前書き
《前回》
かよ子達が藤木を取り返す戦いを続けている最中、3年4組の教室では余る給食に多くの者がお代わりをする争奪戦となっていた。更に掃除の人手が足りないという事で掃除係の前田が皆と揉めながらも掃除の時間を増やそうとしていた。結果、当番関係なく全員で掃除する事で決着する。その一方、三河口から杯奪還の手掛かりを聞いたゆり達も北の方角を目指す!! 

 
 りえは杉山より映像の鑑賞をさせられていた。映像の内容は藤木の過去の記憶が中心だった。りえは夏休みに皆と初めて会った時の事だった。
(あの時教会で私がピアノ弾いてる所を藤木君が幽霊だと思ったのね。そこでかよちゃんとも会ったし・・・)
 そしてりえは杉山と早速喧嘩し、ある夕方、杯を能力(ちから)を試してみろと挑発され、杉山と戦ったがかよ子の仲裁でその場は収まった。そして皆と花火を楽しんで寄せ書きを書いて貰った。
「そう言えばアンタの寄せ書き、最初は書こうとしなかったのに、結局私の夢応援してたのね」
「いや、それは・・・」
 杉山が俯いていた。
「何で顔見せないのよ」
「う、うるせえ、ほっとけ!次見るぞ!」
 りえはその寄せ書きの内容は「絶対に夢、叶えろよ!」と書いてあった。そして次の映像に移る。秋にかよ子の知り合いの高校生の文化祭に行った時の記憶だった。
「・・・、これってっ?」
「ああ、山田の知り合いの高校生の文化祭に行った時のだな。思えば藤木の『好きだった女子』もその文化祭に行くからあいつも行きたいって我儘言ってたぜ。ところがあいつはゲームでもなかなかいい所見せられなくってよ」
 そして文化祭の時の映像を進める(ただし、三河口が兄から暴行される所はカットされた)。
「あの三河口って高校生の提案で藤木は好きな女子と一緒に周る事ができたんだ」
「へえ」
 りえは藤木が照れながら同行する小学生の女子を見る。カチューシャをしている少女だった。
(あれが藤木君が好きだった女の子ね・・・)
 そしてその場に赤軍が侵入して藤木がその女子と一緒に逃げる。
「あの子、藤木君と楽しんでたみたいね・・・」
 そして時は過ぎ、合唱コンクールの練習の時の映像だった。藤木が笹山にかよ子と練習の約束をした時の記憶だった。だが、藤木はその時、風邪をひいてしまい、笹山の家に練習しに行けなかった。
(これは流石に藤木君もショックだったわよね・・・)
 そしてある時、かよ子に笹山と下校していた時、野良犬と遭遇し、藤木は笹山の手を引っ張って二人で逃げ、かよ子を置き去りにした。そして翌日、藤木はクラスの皆から卑怯者呼ばわりされ、非難されるのだった。
(藤木君、あんな事をっ・・・!!)
 さらにクリスマス・イブの合唱コンクールでは、歌い出しが遅れたという理由でまたもや皆から卑怯者と非難を喰らってしまう。
(藤木君、それで皆から、確かに辛そうわよね・・・)
 りえは流石に合唱コンクールで批判を受けた藤木に同情した。そしてその夕方、藤木は家から出て行き、ただ街中を徘徊しているだけだった。そんな時、ある人物が声を掛ける。
「ここの所は俺もよく知らねえ。何しろ名古屋で護符の持ち主と戦ってたからよ」
「うん・・・、ってあの人っ・・・!!」
 りえは確信した。間違いなく藤木に話しかけた女は妲己だった。そして異世界に連れて行く。
(皆から卑怯、卑怯と言われたら藤木君も別の世界に逃げたくなるかもしれないわよね・・・)
 そしてその後も藤木の記憶を垣間見させて貰うのだった。
「映像は以上だ。藤木がどうやってここの世界に来たのかは俺でも初めて知ったんだがな」
(・・・)
 りえは藤木の過去に複雑な経緯を感じていた。

 夕方となり、かよ子達は北へと進んでいた。
「はあ〜、お腹空いたなあ〜。お昼ごはんは炒飯にスープだったからとっても美味しかったなあ〜」
「そうじゃのう。夜もご馳走だとええのう」
 案の定友蔵とまる子は食べる事で頭がいっぱいだった。
(・・・もうほっとくか)
 大野はこれ以上関わるのは辞めた。他の皆と無言で同意だった。
『皆様、お疲れ様です。食事を支給します』
 皆の上に食事が提供された。この日は豚カツだった。
「お、豚カツじゃねえか!」
 大野は豚カツが好きだからか喜んだ。
「はは、この豚カツは栄養がよく付きそうだな。大野けんいち、お主は豚カツが好きか?」
 大政は聞いた。
「ああ、もちろんだぜ」
「大野君、アンタも結構食い意地あるねえ」
 まる子がからかった。
「うるせえ・・・!」
(豚カツか・・・。これなら元気いっぱいになれそうかも!)
 かよ子は藤木を取り逃がした失態を忘れられると思い、食につくのだった。

 すみ子、山口、川村、ヤス太郎達組織「義元」、そしてジャンヌやエレーヌの部隊は西側の領土を侵攻し、次々と奪還に成功していた。そして夕刻の食事となり、休んでいた。
「ここも落ち着いた所でやんすな」
「うん、でもまだ落ち着かない・・・」
「そういえば向こうの岸は戦争主義の世界の本部へと繋がる海への岸。ここまで来たとなると西側は殆ど奪還できたようなものです。ですがまだ落ち着けません」
 エレーヌが説明した。
「そうか、すみ子の兄ちゃん達はここを通って剣を取り返したんだな」
「そうだね・・・」
(お兄ちゃん、どうしてるかな・・・?)
 すみ子は兄が気になった。そして皆は談笑しながら夜を過ごそうとしていた。だが、すみ子は急に吐き気がするような胸騒ぎを覚えた。
「すみ子、まさか来てるのか!?」
 山口が心配した。 
「うん・・・!!」
「なら危険だ。こちらも体制を整えよ!」
「おう!」
 皆は迎撃態勢をとなる。すみ子は銃で周囲に結界を張った。
(どうか、守れますように・・・!!)
「・・・く、結界か!!」
「何としても破るぞ!」
 敵の声が聞こえた。
「あいつらか!」
 山口が矢を放った。毒の煙を発生させる矢だった。
「うわ!」
「何としても防げ!」
「毒なら毒で返すんだ!」
 その時、結界が消滅した。
「え!?」
「結界が破られた!」
「私が防ぎます!」
 エレーヌが腕を出して防いだ。だが、敵の矢が放たれた。すみ子は銃で壁を作って防御した。
「お前ら、やってやる!」
 川村がバズーカを、ヤス太郎がパチンコを発射した。前方で爆発が起きた。
「かわして貰ったぞ!」
 敵将が三人現れた。
「何だ、お前らは?」
「我が名は燕王・チンキム」
「我が名は安西王・マンガラ」
「我が名は北平王・ノムガン。お前らは我が父を討った仇か!」
「何の事だ?」
 山口が聞いた。だが、質問に答えず、チンキムとマンガラが矢を放った。エレーヌがもう一度、腕を出して矢が皆に当たらないよう防御した。
「皆様、あの学舎(まなびや)での祭りの後で()ビライという者と戦ったでしょう?その人の息子達です!」
「フビライ・・・!!」
 すみ子は思い出した。以前、兄の通う高校の文化祭にて赤軍はがテロを起こした後、現れた戦争主義の世界の人間だった。あの時は何とか石松やエレーヌの助力でフビライを倒したのだったが逮捕した赤軍の西川と山田を取り逃がされていた。
「敵討ちか、面白え!かかってこいってんだ!」
 川村はバズーカでフビライの息子に攻撃した。
「やったか・・・!?」
 だが、誰もその場にはいなかった。
「何!?」
「ふ、我々は今チンキムの術で霊となったのだ。これでは攻撃は当たらん!」
 山口達は攻撃のしようがないと思った。 
 

 
後書き
次回は・・・
皇帝(ハン)の息子達」
フビライの三人の息子達と交戦するすみ子達だったが、霊体として動く彼らになかなか攻撃を与える事ができずにいた。エレーヌの能力封じやジャンヌの天使の攻撃をフル活用しながらもお互い翻弄し合う状態となり・・・!?
 
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