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星河の覇皇

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第八十四部第一章 梟雄の復活その三十二

「飲むと口にしたいものも出て来るな」
「肴ですね」
「それですね」
「そうだ、酒を飲むばかりではな」
 どうしてもという口調での言葉だった。
「寂しくなるな」
「確かに。コーヒーでもです」
「それだけでもいいですが」
「しかしです」
「ここに甘いものがあれば」
「言うことはありません」
 コーヒーを飲んでいる将官達が笑って話した、そのイスラム世界では古来より飲まれているその飲みものを。
「では、ですね」
「我々もですね」
「そういったものを口にしていいですね」
「そうしても」
「私自身もだ」
 サルマーンはさらに言った。
「口にしたくなったしな」
「白ワインに合うものといいますと」
「魚介類がそうですね」
「赤ワインには肉類ですが」
「白にはそちらとなりますね」
「そして乳製品はどちらにも合う」 
 こちらはというのだ。
「白でも赤でもな」
「では今は」
「閣下は乳製品ですか」
「それを口にされますか」
「若しくは甘いものでもいい」
 菓子でもというのだ。
「別にな」
「そうですか」
「では、ですね」
「甘いものにされますか」
「そちらに」
「そうも考えている、そして指揮官に躊躇は禁物だ」
 サルマーンはこうも言った。
「そうだな」
「左様ですね」
「戦場では一瞬の躊躇が命取りになります」
「一瞬の油断も然りですが」
「躊躇もです」
「ならですね」
「そうだ、決して躊躇してはならない」
 絶対にとだ、サルマーンは言った。そしてだった。
 ここでだ、彼は即座に決めた。その断はというと。
「だからだ、私はここはドライフルーツにしよう」
「そちらですか」
「そちらにされますか」
「白ワインと共に口にするものとして」
「そちらを選ばれますか」
「そうしよう、各自好きなものを持って来させるといい」
 それぞれの飲んでいるものの友にはというのだ。
「ただし即座に決めることだ」
「それは絶対ですね」
「では今ここで決めます」
「そうします」
「そうだ、ただ人間は不思議なものだ」
 サルマーンは軍人というより学者それも哲学者の様な顔になり笑みもそうしたものになりそのうえで語った。
「かなりの時間考えた様でもだ」
「それでもですね」
「その考えていた時間は一瞬だった」
「そうしたこともありますね」
「人間には」
「人間の思考より速いといった言葉があった」 
 サルマーンはこの言葉も出した。 
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