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ようこそボンゴレⅩ世。実力至上主義の教室へ

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Ⅹ世、解決に向けて動く。

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ようこそボンゴレⅩ世。実力至上主義の教室へ   作:コーラを愛する弁当屋さん

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Ⅹ世、解決に向けて動く。

 

 —— 佐倉愛里の独白 ——

 

 人と触れ合うのが苦手だ。  

 人の目を見て話すのが苦手だ。  

 人が集まっているところで過ごすのが苦手だ。

 

 そんな私は、偽りの仮面を被って自分を守ってきた。

 

 だけど……私は昨日、初めて自分の事を見て欲しい、触れ合ってみたいと思える人と出会った。

 

 真実を知っていながら、自分を守るために逃げようとした私に、彼は私をまっすぐ見つめてこう言ってくれた。

 

『たとえ誰も信じなくても、俺だけはずっと君の味方で居続ける。約束する!』

 

 その言葉と、その人の優しい目が嬉しくて、私は彼の助けになる事を決めた。

 

 そして今日。私はCクラスとDクラスの話し合いの場で、自分が見た事を証言することになった。

 

 会議室に呼ばれた私は、いろんな人からの視線が怖くて、思わず彼の方に視線を向けてしまった。

 

 その時の彼の目は昨日と同じ優しい目で、「大丈夫だよ」と言ってくれているように私を見ながら頷いてくれた。

 

 そんな彼の姿に勇気をもらい、私は自分の見た事を全て証言することができた。

 

 これで彼の役に立てたかな……そう思ったけど、やはり私では彼の役には立てないみたい。

 

 Cクラスの担任の先生が、私の証拠に難癖を付けて無理やりに審議を終わらせようとしてきた。

 

 ああ、なんで私はこんなにダメな人間なの……

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 悲しい現実に頭が真っ白になっていき、気づいた時にはすでに審議は終わっていた。

 

 どうやら彼と堀北さんの頑張りで、明日の放課後まで審議を延長してもらえたらしい。

 

 生徒会書記さんの号令で審議が終わりが宣言されると、Cクラスは乱暴に椅子から立ち上がり、こちらを睨みながら会議室を出て行った。

 

 その後、私達Dクラスも会議室を出る事になり、私は最後尾で会議室を出た。

 

 

 廊下に出ると、彼が心配そうに話しかけてくれた。

 

「佐倉さん、大丈夫? すごい震えているけど」

「! あ、はい……まだ緊張が解けないだけで……」

「そう? ……堀北さんと綾小路君。悪いけど先に特別棟の現場を調べといてくれない? 佐倉さんが落ち着いたら俺も行くから」

 

 彼にそう言われると、堀北さんと綾小路君は廊下を2人で進んで行った。

 

 あれ、いつのまにか須藤君と先生もいなくなってるな。

 

 2人を見送った彼は、廊下の壁に背中を付けて私の回復を待ち始めた。

 それがすごく申し訳なくて、私は先に彼に謝ることにした。

 

「……あの、沢田君。ご、ごめんね? 結局須藤君の無実を証明する事は出来なかったよ……」

 

 そう言った私に、彼は優しい笑顔でこう言ってくれた。

 

「何言ってるの! 佐倉さんの写真のおかげで一方的に須藤君が悪いって事にならなかったんだよ? 十分過ぎる活躍だったよ。本当にありがとう、佐倉さん」

「! ……」

 

 こんなダメな私でも、優しく包み込んでくれる沢田君。

 その優しさに思わず涙が出そうになった。

 

 涙ぐんでいるのがバレないように、手で拭おうとした瞬間。

 

 ガララ……と音を立てて会議室の扉を開き、生徒会長と書記の方が出てきた。

 

「……! なんだ。まだ残っていたのか」

「すみません、佐倉さんが疲れてるので少し休憩をと」

 

 生徒会長にここにいる理由を説明すると、生徒会長は彼に更に問いかけた。

 

「明日の放課後までに須藤の完全無実を証明する……本当にそんな事ができるのか?」

「はい、もちろんです。明日は今日みたいな下らない話し合いをする必要は無いですよ」

「フン……お気遣い感謝しよう」

 

 彼の答えに、生徒会長は少し笑って返した。

 次の瞬間、生徒会長の視線がなぜか私に向けられた。

 

「佐倉、といったか?」

「! ……は、はい」

 

 生徒会長に名前を呼ばれて、思わず萎縮してしまう。

 そんな私に生徒会長は一歩近づくと、冷ややかな目つきで語りかけてきた。

 

「……真実と判断されない証拠には何の意味もない。それを知れ」

「……わ、私はただ……本当の事を……」

「審議において一番大事なのは証拠の信用性だ。Dクラスの時点で他のクラスよりもマイナスからのスタートだぞ。それなのに、お前がそんな風に自信なさげでは証拠の信用性は更に下がってしまうんだ」

「……わ、わた……わたしは……」

 

 生徒会長に威圧され、さっきとは別の感情で泣きそうになっていると。

 私と生徒会長の間に彼が入ってくれた。

 

「大丈夫です。俺は佐倉さんの事を信じているので」

「……信じているだと?」

「……さ、沢田君」

 

 そして彼は、生徒会長に向かって堂々と宣言してみせました。

 

「佐倉さんが真実を証言している事は、俺が必ず証明してみせます。なので安心して下さい」

「……いいだろう。沢田、私を失望させてくれるなよ?」

 

 そう言うと、生徒会長は書記の方を連れてスタスタと歩いて行ってしまいました。

 

 また2人きりに戻ると、彼に声をかけられました。

 

「あっ、佐倉さん震え止まったみたいだね!」

「えっ? ……あ、本当だ」

 

 いつのまにか私の震えは止まっていた。

 きっと、さっきの彼の言葉が嬉しかったんだろうな。

 

「じゃあ、教室に戻ろうか!」

「うん、そうだね……」

 

 彼と一緒に歩きながら、私はなぜか寂しいなと感じていた。

 

 ……沢田君なら、あのストーカーについて相談しても嫌がられないかな……

 

 

 —— ツナside ——

 

 佐倉さんを連れて教室に戻ると、桔梗ちゃんが声をかけてきた。

 

「あっ! 審議はどうだったの?」

「なんとか明日まで審議を持ち越せたよ。本当に佐倉さんのおかげだね」

「よかったぁ♪ あ、佐倉さん。今日は一緒に帰らない?」

「え? 私が……ですか?」

「うん!」

 

 佐倉さんが少し悩んでいるようなので、俺は理由を説明する事にした。

 

「Cクラスの奴らがちょっかいをかけてくるかもしれないからさ。桔梗ちゃんと一緒にいれば多分大丈夫だと思うんだ」

 

 本当は別の事が心配で1人で帰らせたくないんだけど、わざわざ不安にさせることはないよな。

 

「……は、はぁ……」

「よし! じゃあ帰ろ〜♪」

「えっ! ちょっと待って下さい」

「いいからいいから♪ 今日のところはお願いだから大人しく従って! ね?」

「え〜……わ、わかりました」

 

 こうして、桔梗ちゃんと佐倉さんは一緒に帰って行った。

 

「……よし。俺も行くか」

 

 そして、俺は綾小路君達の待つ特別棟へと向かった。

 

 

 —— 特別棟3F ——

 

「2人共、お待たせ」

「ああ」

「遅かったわね」

「ごめんね。……で、どう? やっぱり監視カメラはない?」

 

 俺の質問に、2人共無言で首を降った。

 

「ないわね。この特別棟には教室内以外には監視カメラは設置されていないわ」

「そのようだな……それにしても、暑いな」

 

 綾小路君はブレザーを脱いでいて、シャツの首元をパタパタと動かしている。

 

 確かにこの特別棟の廊下はすごく暑い。それは、一昨日須藤君の目撃者探しをしていた時に分かっていた。

 

「そうね……こう暑いと、正常な思考は出来ないでしょうね……」

「……なぁ堀北。お前、須藤の完全無実をどうやって証明するつもりなんだ?」

「……知らないわ」

「……はぁ? じゃあなんで生徒会長にあんな啖呵切ったんだよ」

 

 気怠げな綾小路君の質問を、堀北さんはばっさりと切り捨てた。

 

「私はただ、沢田君にバトンタッチされた時に言われた通りにしただけよ」

「……言われた通り?」

「ええ。『佐倉さんの出す証拠を見ても、Cクラスは須藤君の無実を認めないと思う。きっとお互いに罰を受けるという和解案で終わらせようとしてくるはず。そうなったら……絶対にその和解案を受け入れないで、あくまで須藤君の完全無実を主張してほしい。そうすれば絶対に須藤君を完全無実にできるから』ってね」

「! ……沢田、どういうことだ? そんな方法をいつ思いついたんだ?」

 

 綾小路君が訝しげな表情で俺にそう聞いてきた。

 

「あはは、ちゃんと思いついたのは会議室に入った時だよ」

「……会議室に入ってから?」

「うん。会議室に入ったらね、須藤君が不思議そうな顔で石崎君達の事を見てるんだよ。それでどうしたのってきいてみたらさ……」

 

 〜 1時間前、会議室 〜

 

「いや、あのよ……石崎達の怪我の度合いがおかしいんだよ……」

「怪我の度合い?」

「ああ。俺があいつらにした暴力ってのはさ、ボディを2、3発殴って動けなくしただけなんだよ。それなのに……あいつらは顔面や腕に怪我してんだろ? どうもおかしいんだよなぁ……」

 

 〜 回想終了 〜

 

「って、言われたんだ」

「……それが?」

 

 理解できなかったのか、堀北さんがそう言ってきた。

 

「あのね。石崎君達の負っている怪我が須藤君によるものじゃないとしたら、石崎君達の怪我はあの事件の後に受けた暴力が原因になるでしょ?」

「……ええ」

「だったらさ、一番可能性の高いのは……須藤君に受けた暴力が思ったよりも軽くて、今の状態じゃ『須藤君に受けた暴力が原因で怪我をしました』って状況を作り出せない。だから……そう見えるように追加で別の誰かから暴力を受けた、って事じゃない?」

「っ! ……確かにそうね」

「……なるほどな」 

 

 綾小路君と堀北さんは目を見開いて頷いている。

 

「……それで、その追加の暴力を行った奴を探すのか?」

「ううん、多分そんな事を証明する証拠は見つからない」

「……どうして?」

「こんな事件を引き起こすCクラスだ。Cクラス内部で行う暴力には細心の注意を払ってると思うんだ」

「……そうね。今回の事件も監視カメラがない場所に連れ込んでいるわけだし」

「うん。そして、須藤君を退学にする為とはいえ追加で暴力を振るわれている訳だし、石崎君達は暴力による恐怖で縛られているはずだよ」

「だろうな……」

「それで、Bクラスの神崎君が『石崎は中学時代は不良の頭をやっているような奴だった』って言ってたよね。そんな人が、恐怖で縛られてるからって誰かにいいように使われて平気だと思う?」

 

 俺の質問に2人共首を振った。

 

「きっと相当なフラストレーションが溜まっていると思うんだ。他の2人も一緒、須藤君にバスケの実力で勝てないからって練習の邪魔をするくらいだし、相当フラストレーションが溜まってるはず」

「……そして?」

「そのフラストレーションを利用して、須藤君への訴えを取下げさせようと思うんだ」

「確かに……須藤が暴力を振るった事は事実だから、須藤を完全無罪にさせるには、訴えを取り下げさせるしかないだろうな」

「でも……石崎君達の不満を利用して訴えを取り下げさせるなんて、そんな事できるの?」

「きっとできるよ! あのね、こう言う作戦なんだけど……」

 

 俺は考えた作戦を2人に聞かせた。

 

 その作戦を聞いて、綾小路君は少しだけ笑っているような顔になり、堀北さんは呆れたようにため息をついている。

 

「ふふ……なるほどな。いい作戦だ」

「はぁ……確かそれならうまく行きそうだけど……沢田君が無傷では済まないわよ?」

「わかってるよ。でも大丈夫! 俺は怪我には慣れてるし、これが一番いい方法だと思うんだ」

「……わかったわ。そこまで言うなら、沢田君の作戦で行きましょう」

 

 その後、俺達は作戦の細かい打ち合わせをしてから解散した……

 

 

 —— 次の日、早朝 ——

 

 次の日。作戦を実行するためにかなり早めに教室に向かうと、すでに佐倉さんが登校していた。

 

「あれ? 佐倉さん。おはよう」

「! さ、沢田君! お、おはよう……」

 

 声をかけると、佐倉さんは一瞬びっくりしたようだが、すぐにいつも通りに戻った。

 

「来るの早いんだね。俺はちょっとやる事があって早めに来たんだけど……」

「……実は、沢田君に聞いて欲しい話があって」

「え? 俺に話?」

「うん……」

 

 佐倉さんはそう言うと、俺の方を見てきた。

 俺を見る佐倉さんは微かに震えていた……

 

(もしかして……あの男のことかな?)

 

「あ、あの……沢田君に相談したい事があって……」

「……ストーカーの事?」

「! な、なんで?」

 

 俺が佐倉さんの相談内容を当てると、佐倉さんはとても驚いた。

 

「ごめんね、一緒に家電量販店に行った時の佐倉さんの様子が気になってさ。もしかしてあの店員に何かされてるんじゃないかと思って調べさせてもらったんだ」

「……し、調べたの?」

「う、うん。それで、このSNSのページを見つけたんだ」

「あ……」

 

 俺は学生証端末で、一昨日調べたページを開いて佐倉さんに見せた。

 

「……見られちゃったんだね」

「うん。それで君にネットストーカーしている奴がいる事に気づいたんだ」

「……あ、あのコメント?」

 

 佐倉さんは、俺が言っている奴が誰のことかすぐに分かったらしい。

 

「うん。そして、その書き込み主が誰かも検討がついてる」

「え? ……本当?」

「うん。だから安心して? 今日の須藤君の件が片付いたら、すぐにそっちのストーカーをなんとかするから」

「……っ! あ、ありがとう……」

 

 佐倉さんは線が切れたみたいに大泣きし始めた。

 すごく怖かったんだろうな……

 

 佐倉さんの頭に手を置いて、優しく撫でてみる。

 佐倉さんは撫でられた事に驚いて顔をあげたが、どうも嫌ではなさそうに見えるので、そのまましばらく撫で続ける。

 

 そして、佐倉さんに言おうと思っていた言葉を伝える事にした。

 

「……佐倉さん。これからも何か困った事があったら、いつでも俺に相談してよ」

「……え?」

「須藤君の為に証言してくれたお礼……いや、それよりも、友達の助けになりたいからさ」

「うん……ありがとう」

 

 佐倉さんはまだ泣いていたが、俺に微笑んでくれたので、俺も微笑み返して手を離した。

 

「……だからさ。今日の放課後は、俺がいいって言うまで学校の外には出ないでほしいんだ。もしかしたら怖い目に遭わせてしまうかもしれないから」

「う、うん。わかったよ」

 

 

 数分後。佐倉さんが泣き止んだのを確認すると、俺は作戦を実行するべく教室から出た……

 



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