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ようこそボンゴレⅩ世。実力至上主義の教室へ

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Ⅹ世、審議に挑む。

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ようこそボンゴレⅩ世。実力至上主義の教室へ   作:コーラを愛する弁当屋さん

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Ⅹ世、審議に挑む。

「お邪魔しまーす!」

「どうぞ〜」

 

 桔梗ちゃんと一緒に部屋に入る。前もってリボーンにはメールを送ってあるから居抜きスペースは隠されている。

 

 お茶を入れて、桔梗ちゃんとダイニングテーブルに座った。

 

「で、何か話したい事があるの?」

「うん、さっきネットで調べてたらね、こんなのが見つかって」

 

 桔梗ちゃんが学生証端末を俺に渡してくる。画面には雫という人のSNSページが表示されていた。

 

「その人の投稿してる写真見てみて?」

「うん」

 

 パラパラと投稿された画像をスクロールして見ていく。この人はグラビアアイドルなのか、セクシー系の写真が多かった。

 

 なんとなく流しみしていた俺だが、一枚の画像を見て手が止まった。

 

「……これは」

 

 その画像は、室内でアイドルのような衣装を着て撮影されたものだった。

 

「ツナ君も気付いた?」

「うん。この写真、このマンションで撮られた物だよね。……しかもこの人の顔……え? 佐倉さん?」

 

 そう、雫という人の顔は佐倉さんにそっくりだったのだ。

 

「うん、きっとこの人は佐倉さんだよ。きっとあのカメラも自分を撮るようのカメラなんじゃないかな?」

「そっか……」

「だからさ、きっと佐倉さんは事件当時の写真を撮ってるんじゃないかと思うの!」

「! そっか。それがバレたら事件に関わらないといけなくなる、だから最初は逃げたのかもしれないね」

「きっとそうだよ! だから、明日の話し合いではその写真を出してくれるんじゃないかな?」

「そうだとしたら、心強いね!」

「うん♪」

 

 その後、話したい事は伝えたからと桔梗ちゃんはすぐに帰っていった。

 

 桔梗ちゃんが帰宅後。

 気になった事があった俺は、先ほど見せてもらった雫さんのSNSにアクセスした。

 

(佐倉さんがアイドル活動をしているなら。ストーカーがついてるのかもしれない)

 

 最近の投稿を一つ一つチェックしていく。すると、一つ分かった事があった。

 

 この学校に入学してから投稿された全ての画像に、同じ人からのコメントが付けられていたのだ。

 

 そのコメント主の名前は、『いつも傍にいるよ』。この名前のアカウントから、まるで自分が雫さんと結ばれる運命かのような文面を、同じ画像に何回もコメントしているのだ。

 

 そんなコメントの中に、更に気になるものを見つけた。画像の投稿日は今日。ついさっき投稿された画像に付けられたものだ。

 

 いつも傍にいるよ

 雫ちゃん、今日は僕に会いにきてくれてありがとう。

 でも、一緒に来たあの男とつるむのはやめなさい。 

 あいつは悪魔だ。僕と君の仲を引き裂く悪魔なんだ!

 

 こんな内容のコメントだった。

 

(今日会った……男と一緒にいた……佐倉さんは基本1人で過ごしている、今日一緒に行動した男は俺くらいだろう)

 

 つまり、このコメントの主はあいつしかあり得ない。

 これで佐倉さんがあんなに怖がっていた理由がはっきりしたな。

 

「……よし」

 

 ある決意をした俺は電話をかける事にした。

 

 プルルルルル……ガチャ

 

「あ、博士? ごめんね夜に、ちょっと聞きたい事があって……」

 

 

 —— 翌日、放課後 ——

 

 ついにCクラスとの話し合いの時が来た。

 

 Dクラスから話し合いに参加するのは、茶柱先生・須藤君・俺・綾小路君・堀北さんに決まっていた。

 

 佐倉さんは証人としての途中参加になる。

 

「よし、それでは行くぞ」

『はい』

 

 茶柱先生に連れて行かれた場所は、こういう事態の為にあるという会議室だった。

 

 扉を開けて、茶柱先生から順々に入室していく。俺は最後に入室することにし、入る前に佐倉さんにただ無言で頷いてみせる。

 

 佐倉さんも頷き返してくれたので、俺も入室した。

 

 

 —— 会議室 ——

 

 会議室には、すでにCクラスと生徒会の面々が揃っていた。

 

「ほう、まさかこんな小さな事案で生徒会長がお出ましとはな」

「ふっ、多忙なので参加できない事が多いだけですよ。基本は参加するに決まっています」

「はっ……そうか」

 

 席に座りながら、茶柱先生が生徒会長とそんな会話をしている。

 

 俺達が席に座ると同時に、生徒会長の横に立っている女子の先輩が口を開いた。

 

「それでは、1年Cクラス及びDクラスによる争いの審議に入らせていただきます。進行は私、生徒会書記の橘が務めさせていただきます」

 

 橘先輩の号令により、ついにCクラスとの対決が始まった……

 

 

 

 —— 綾小路side ——

 

 須藤に対しての審議が始まった。

 Cクラスの参加メンバーは、石崎、小宮、近藤。そして、俺達と同じく当事者ではない者。

 名前は伊吹と言うらしい、Cクラスの女子生徒だ。

 

「須藤君に部活終了後に特別棟に呼び出されたんです。そしたらいきなり暴力を振るわれたんです!」

「嘘つくな! お前らが俺を無理やり特別棟に連れてったんだろ! それで俺の腕や足に怪我をさせようとしてきたんじゃねぇか! 俺は自分の身を守っただけだ!」

「須藤君は嘘をついています! 彼は日頃からバスケ部でも僕達に暴力を振るっているんです!」

「それもお前らがやってんだろ! いつも練習の邪魔ばっかりしやがって!」

 

 審議の序盤は、バスケ部である小宮と近藤、そして須藤による「自分が正しい。相手が嘘を言っている」という文言を色々な言い方で言い合うだけの場となってしまった。

 

(……これでは審議が進んでいかない)

 

 そう思った所で、生徒会長が手を上げて須藤達を制した。

 

「……もういい。お互いに相手が悪いの一点張りでは審議などできない。……そこで、当事者でない者達に意見を述べてもらおうか。まずはCクラスからだ」

 

 生徒会長にそう言われた伊吹は、椅子から立ち上がるとビシッと須藤を指さした。

 

「生徒会長。お互いの証言に証拠はなくとも、見ればすぐに分かる事実があります」

「……それはなんだ?」

「もちろん。石崎達は怪我をしているのに、須藤は怪我をしていないという事です。これは、須藤による一方的な暴行を受けた証拠に他なりません」

「そうだな。須藤の暴力によりCクラスの生徒3名が怪我をした。これは間違いない事実だ」

 

 生徒会長は伊吹に頷いて見せると、今度は俺達の方に顔を向けた。

 

「……Dクラス、新たな証言や証拠がない場合は、ここで結審とするぞ。……どうする。何か言いたい事があるか?」

「もちろんです! 生徒会長」

 

 すでにDクラスの負けだと遠回しに言っている生徒会長だが、一応形式上はこちらの意見も聞いてくれるようだ。

 

 沢田が手を挙げて生徒会長にアピールすると、生徒会長は頷いた後「言いたい事を言え」と言いたげに顎で示した。

 

「はい。では、Dクラスの意見を言わせて……」

「ちょっと待て!」

 

 沢田が立ち上がり、意見を述べようとしたその瞬間。

 伊吹が机を強く叩いて注目を集める。

 

「……なんだCクラス。今はDクラスが意見を言う場だぞ?」

「生徒会長。そこの沢田に意見を求めても意味がないと思われます」

「なっ!?」

「ほう……なぜだ?」

 

 伊吹は沢田の発言は意味がないと言ってのけた。

 そんな伊吹に沢田は驚愕し、生徒会長は興味ありげに話の続きを待っている。

 

「そこの沢田は、須藤の言いなりです。4日前の放課後に小宮と近藤に対して、須藤と一緒に暴力を振るおうとしています! つまり、須藤贔屓の発言をする可能性が高い。よって、沢田の発言も須藤達と同じように証言にはならないと考えます」

「! そんな!」

「……ふむ。無視はできない発言だな。よし、Dクラスは沢田以外の者が意見を述べろ」

 

 沢田が椅子にへたり込む。

 

 そりゃそうだろうな。自分が一番須藤の無実を信じているのに、その自分の発言は証言にならないと言われたのだから。

 

 ……沢田はここからどうするだろうか。

 

 俺は沢田の取る行動に興味津々だった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 〜綾小路清隆の独白〜

 

 この学校に入学してから、お前ほどに興味を引かれた奴はいない。

 

 お前はそこまで頭脳明晰ではないのに、変に直勘が働く奴だ。

 

 起きてしまったトラブルにおいて、気づかなければならないポイントに必ずたどり着き、そのまま解決方法まで見つけ出す事が出来ている。

 

 しかしお前は、考えて導き出してるわけじゃなく、並外れた直感で答えまで辿りついている。

 考えて答えを出す俺とは、問題の解き方が全く違うという訳だ。

 

 だからこそ気になる点が一つある。

 

 Sシステム、中間テスト対策、須藤の赤点回避。これまでDクラス訪れた問題において、俺はお前が導き出した結論と全く同じ答えを出している。

 

 だが、解決への持って行き方が俺とは真逆なんだ。

 

 例えば中間テスト対策。俺なら最初から過去問を手に入れて櫛田か平田に配らせる。しかしお前は、過去問は最後の手段として利用した。

 

 今回のテストだけでなく、須藤達が少しでも勉強ができるように自分で勉強して赤点を回避する事を最上としていたからだ。

 

 ……お前も俺と同じで、自分の為に動いているはず。

 

 俺にとってクラスメイトは、目的を果たすための駒としか思えない。

 

 しかしお前は、自分の為に動きつつ、クラスメイトの事も第一に考えて行動を選択している。

 

 俺は知りたい。俺の選ぶ選択肢と、お前の選ぶ選択肢。

 目標に確実にたどり着く為には、どちらの選択肢が最適なのかを。

 

 ……そしてそれ以上に、お前が選ぶ道で、一体どこまで這い上がれるのかも見てみたいと思っている。

 

 だから見せてくれ沢田。お前が持っている、俺の人生では選択肢にもならなかった考え方を。

 

 そして、お前の選ぶ道がどこまで繋がっているのかをな。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 椅子に座り込んだ沢田は、堀北の顔を見た。

 

「……」

 

 堀北は兄である生徒会長がいるからか、完全に戦意喪失してしまっている。

 

 こう言う時、何か体に刺激を与えれば意識は覚醒させる事ができるが、沢田はどう対処するだろう。俺なら脇腹を鷲掴みにでもするな。

 

「……堀北さん」

「……」

 

 沢田が呼びかけても、上の空の堀北は返事をしない。

 

 すると沢田は、堀北の右肩を掴んでもう一度声をかけた。

 

「堀北さん」

「! さ、沢田君」

「ごめん、俺の代わりに須藤君の無実を訴えてもらってもいい? 俺の発言は証言として認めてもらえないみたいだからさ」

「えっ? あ……」

 

 沢田の言葉で、ようやく今がまずい状況だと理解した様子の堀北。

 しかし、兄に見られているからか、いつもの不遜な態度の堀北は見る影もない。

 

「堀北さん、頼むよ。今須藤君を救えるのは君しかいないんだ」

「……私が? 兄さんの前で?」

「うん。ついでにお兄さんに見せてやろうよ! 堀北鈴音は優秀だって所をさ。前にも言ったけど、俺は堀北さんを信じてる。だから、堀北さんも自分の力を信じてあげて? 君は頭が良くて優秀な人なんだから」

「! 沢田君。……ありがとう」

 

(なるほど、沢田は基本的に言葉を使って相手の気持ちを操作するのか)

 

  沢田にお礼を言った堀北は、いつものような態度に戻り、椅子から立ち上がった。

 

「それでは、ここからは私が話させて頂きます」

「よろしい。……Cクラスも文句ないな?」

「……はい」

 

 堀北は発言しないと思ってたのか、伊吹は若干苛立っている様子だ。

 

「まずお聞きしたいのですが、部活後に呼び出されたのに、どうしてバスケ部じゃない石崎君がいたのですか?」

「……それは、須藤君への対策ですよ。彼は暴力的ですから」

「では、暴力への対策として石崎君を連れて行ったんですか?」

「そうです、いけませんか?」

「いいえ。しかし、3対1なのにそちらだけが一方的に傷を負っているのはおかしくないですか?」

「! そんなの、僕らに争う意思がなかったからですよ」

「私も少々武道の心得があります。3対1の戦いにおいて、1の方が圧倒的に不利であるはずです」

 

 堀北のその発言に、茶柱先生が賛同する。

 

「うむ。普通はそうだろうな」

「はい。そして、石崎君は中学時代は不良のトップに君臨していて、喧嘩ばかりの毎日だったとか。それなのに、一方的に暴力を受けるなんておかしくないですか?」

 

 その発言に、石崎が吠えて反論する。

 

「こ、高校に入って改心したんだよ!」

「その服装、その話し方でですか? どうも信用できませんね」

 

 堀北が石崎の事を指さしながらそう言った。

 

『ぐっ……しかし! それだけで須藤が無実なんて横暴ですよ!』

「安心してください。今回の騒動を、全て見ていた生徒がおりました。……証人、入室して下さい」

 

 堀北に呼ばれて、佐倉が証人として入室してくる。

 

「証人。学年とクラスと氏名を述べて下さい」

 

 橘先輩にそう言われて、佐倉が口を開いた。

 

「1年Dクラス。……佐倉愛里です」

 

 佐倉がチラッと沢田の方を見る。

 沢田は無言で頷き、佐倉も頷き返す。

 

「……す〜は〜」

 

 佐倉は一度深呼吸をすると、一枚のSDカードを取り出した。

 

「私はあの日、須藤君に暴力を振るおうとするCクラスの人達を見ました。このSDカードには、その証拠が記載されています」

「……写せ」

「はい」

 

 橘先輩が佐倉からSDカードを受け取り、プロジェクターで壁に投影し始めた。

 

 そこに写っていたのは……特別棟で自撮りをしている佐倉と……その後ろで須藤に殴りかかっている石崎の姿だった。

 

「なっ!?」

「これが……私があの時に特別棟にいた証拠です。時間もしっかり記載されています」

 

 石崎が動揺している中、今まで発言しなかったCクラスの担任が口を開いた。

 

「はっ、デジカメならばいくらでも日付の偽造ができる! それに、確かにこの写真では石崎が殴りかかっているように見えるが、どちらが先に手を出したのかを判断する証拠にはなりえない!」

 

 担任の反論に、堀北は真っ向から対抗するようだ。

 

「そうかもしれません。しかし、Cクラスが一方的に暴力を振るわれたという証言は嘘だった、という証明にはなりますよね?」

「ぐっ……」

 

 一瞬怯んだ様子の担任だったが、すぐに冷静さを取り戻し、ねちっこく反論してくる。

 

「確かにその通りですな。しかし、結局怪我をしたのはCクラスの生徒だけなのです。どちらが先に手を出したのか判断がつかない以上、どちらが悪いのかを決める事は出来ない。そこでだ、Dクラスに提案がある」

「……提案?」

「そうだ。喧嘩両成敗ということで、怪我をさせた須藤は2週間の停学。石崎達は1週間の停学。これで手打ちにしないか?」

 

 本当なら退学になってもおかしくなかったのが、1週間の停学で済むというのは大きな譲歩だ。

 

 この提案を受け入れることも手だと思うが、堀北はそれをよしとしないようだ。

 

「いいえ。その和解案は受け入れられません。Dクラスとしては、須藤君の完全無罪を要求します」

 

 悪手とも取れる堀北の発言。その発言に、生徒会長が鋭い目で睨みながら再度確認を取る。

 

「……ならば、Dクラスはそれを証明する手を持っているのか?」

「はい。しかし今はそれを掲示できません。なので1日だけ時間を頂けないでしょうか。明日の放課後までには、須藤君の完全無罪を証明してみせます」

「……沢田」

「! はいっ」

 

 生徒会長はなぜか沢田に声をかけた。

 

「今の堀北の発言、Dクラスとしての意見に間違いないか?」

「はい。もちろんです!」

「……いいだろう。それでは、この審議は明日まで持ち越しとする」

 

 生徒会長のこの発言で、本日の審議は終わりとなった……

 



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