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八条学園騒動記

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第七百一話 潜入前にその十

 上等兵は違和感を感じて隣を進む大尉に話した。
「連合市民にです」
「なった様だな」
「こうして隣を歩くのも」
「ないからな」 
 大尉は薩摩星系の方言で応えた。
「本来は」
「ここでは言えないですが」
「どうしてもな」
 エウロパでのことはというのだ、エウロパでは貴族と平民が並んで進むことなぞ決してないことであるのだ。ただし軍の階級が上なら平民でもある。
「それはない」
「そうですね」
「だが今の我々はな」
「薩摩人です」
「薩摩っぽだ」
 まさにそれだというのだ。
「好物もだ」
「薩摩揚げですね」
「そしてかるかんにだ」
「きびなごですね」
「豚肉だ、その豚肉もだ」
「角煮等ですね」
「美味いな」
 今挙げた料理達はというのだ。
「そうだな」
「そして武道ですね」
「示現流をだ」 
 この剣術をというのだ。
「やっていないにしてもな」
「好きですね」
「フェシングをしていてもな」
 それでもというのだ。
「そうだ」
「左様ですね」
「そして硬派だ」
「我々は」
「それになっている」
 上等兵に話した。
「薩摩星系といえばだ」
「硬派ですね」
「そうだという風潮がな」
「あるのですね」
「連合だがな」
 ここで大尉は侮蔑に満ちた声で言った。
「連合と言えばだ」
「軟弱ですね」
「豊かな生活に溺れてだ」
 エウロパから見てだ。
「スポーツに興じていてもな」
「只の娯楽で」
「身体を鍛えだ」
 そうしてというのだ。
「戦いに備えるという考えはだ」
「ありませんね」
「本来スポーツとはな」
「身体を鍛え」
「そしてだ」
 そのうえでというのだ。
「有事、戦いにだ」
「備えるものでしたね」
「スパルタではじまったな」
「そうでしたね」
「だが連合ではな」
「娯楽に堕ちていますね」
「連合は全てそうだ、学問もだ」
 大尉はこちらの話もした。
「教養を備え自身を高め」
「国家に奉職する」
「そうしたものだが」
「連合ではこちらもですね」
「娯楽だ、まさにこの世の全てがだ」
「娯楽ですね」
「そうしたものだと考えているな」
 そうしたというのだ。 
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