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第八十話 久しぶりに会ってその一
第八十話 久しぶりに会って
鳴海は夜の七時位にかな恵に家に来た、その手にはコンビニのビニール袋がありそこに缶やカップ麺、スナック菓子が透けて見えている。
その彼を出迎えた明男はその袋を見てがっかりした様に言った。
「何だよ、ただ飲んで食うだけかよ」
「お前何期待してたんだよ」
鳴海はその彼に口をへの字にさせて尋ねた。
「一体な」
「キスとか上になったり下になったりとか」
「馬鹿、そんなことするか」
顔を怒らせて否定した。
「そんなのまだ先だよ」
「高校生になってもかよ」
「高校生だからだよ、早いだろ」
「何だよ、兄ちゃん相変わらず真面目だな」
「真面目でもねえよ、そうしたことに興味はな」
「あるんだな」
「そうだよ、お前と同じだよ」
こう明男に返した。
「そこはな」
「そうなんだな」
「だからかなの部屋で飲んでもな」
そして食べてもというのだ。
「けれどな」
「何もなしかよ」
「絶対にするかよ」
強い声で言い切った。
「俺はな」
「じゃあ姉ちゃんが迫れば」
「そんなこともな」
「ないのかよ」
「俺がまだだって言ったらな」
それならというのだ。
「かなだってな」
「まあ姉ちゃんそう言われたらな」
弟として姉のことを知っているからこその言葉だった。
「もうな」
「そこからはだよな」
「動かないしな」
「だから期待するなよ」
「覗いたら二人でとかはか」
「ねえよ」
また口をへの字にして言った。
「あまり変なこと言うと回天に乗せるぞ」
「あれ特攻じゃないかよ」
「だから特攻隊に入れるって言ってるんだよ」
変なことを言えばというのだ。
「これ以上はな」
「ちぇっ、仕方ねえな」
「それでかな今うちにいるよな」
「姉ちゃん今風呂に入ってるよ」
「そうなのかよ」
「ああ、もうそろそろ出るよ」
「そうなんだな」
「襲うなよ」
明男は笑って言った。
「兄ちゃん今そんなことしないって言ったけれどな」
「する筈ないだろ」
鳴海は真面目な顔で返した。
「ちゃんと待つよ」
「そうなんだな」
「ああ、じゃあテーブルで待つな」
「そうするんだな」
「酒とおつまみ用意してきたからな」
その袋を掲げつつ話した。
「だからな」
「それでか」
「ああ、待つな」
「そうか、それじゃあな」
「上がっていいよな」
「そうしなよ、じゃあ俺部屋に戻るから」
自分の部屋にというのだ。
「二人で宜しくな」
「ああ、またな」
「俺まだ飲めないしさ」
「お前誕生日まだだったな」
鳴海は八条町の条例を思い出した、この町では十五歳になれば酒が飲めるというそれをだ。彼等は大阪にいるがこの団地には特例としてその条例が適用されているのだ。
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