仮面ライダーAP
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暗躍編 真凛・S・スチュワートという女 後編
『自爆装置が作動しました。全構成員は直ちに避難してください。繰り返します。自爆装置が作動しました。全構成員は直ちに――』
研究所の自爆機能を作動させる時限装置。機密保持のために用意されていたそのシステムを躊躇なく作動させた真凛は、けたたましい警報が鳴り響く中、侵入の際にも使っていた地下水路に再び潜り込んでいた。
そして暗く冷たい水の中を恐れることなく泳ぎ続け、施設からの脱出を果たしていたのである。研究所の地下水路は、山地の近くに位置する滝壺に繋がっていたのだ。
「んっ……はぁあっ! ……んはぁ、はぁんっ……! ここしか潜入ルートが無かったとはいえ……良い気分じゃないわね。ブラもパンティもずぶ濡れだわ……」
じっとりと濡れそぼり、ボディラインにぴっちりと張り付いた青のチャイナドレス。その衣装の下に隠された、扇情的な黒い下着。
淫らなその形がくっきりと浮き出るほどずぶ濡れになったまま、水路を通じて滝壺から浮上した真凛は、息を荒げながらも地上の森林部へと生還していた。水面から顔を出し、滝壺の淵に辿り着いた真凛は、艶かしく息を荒げている。
「はぁ、んはぁ、はぁっ……!」
白く透き通るような肌に黒髪が張り付いたまま、上気した貌で水面から這い出る彼女は、ぷっくりとした唇から甘い吐息を漏らしていた。その肢体をなぞる水滴が、彼女の肉体を彩るように蠱惑的な光沢を放っている。
「ふぅっ、んっ……」
長い後ろ髪を優美な両腕で掻き上げると、その仕草によって露わにされた白い腋の窪みから濃厚な匂いがむわりと漂って来る。扇情的なY字を描く鼠蹊部とその箇所は、肌と肌が常に密着しやすい。そのため、肉体から分泌される汗の香りがより強く染み込むのだろう。
無防備に晒された真凛の両腋からは、特に濃く熟成された女の芳香が滲み出ていた。雄を誘うためだけに在るかのようなこの香りまで戦闘員達の鼻腔に届いていたなら、彼らはより早く理性を失っていたに違いない。
「んっ……ふぅっ、はぁっ……はぁっ……」
長時間の素潜りという過酷な運動を経た肉体は淫らに汗ばみ、そのきめ細やかな肌からは濃厚なフェロモンを漂わせていた。微かに息を荒げている彼女の頬は桃色に上気し、悩ましい吐息が唇から溢れ出ている。
さすがの彼女でも、水中からの脱出は容易ではなかったのだろう。妖艶な唇から漏れ出る吐息は甘く扇情的であり、きめ細やかな肌を伝う水の滴りは、真凛のボディラインをなぞるように伝っていた。凹凸の激しい極上の女体。その隅々から滲み出る魔性の色香が、全身からぶわっと匂い立っている。
「……待たせたわね」
そして地上への脱出を果たした彼女は、滝壺の側に停めていた愛用のバイクに視線を向け、腰をくねらせるように歩み始めていた。青基調のボディと丸型のヘッドライトが特徴の大型クラシックバイクが、主人の帰りを待ち侘びていたようだ。
チャイナドレスに深く入ったスリットにより、露わにされている白い美脚。そのスラリと伸びた長い脚が素早く振り上げられ、バイクのシートを跨いで行く。蠱惑的なY字を描いていた鼠蹊部と下腹部がシートの上に密着すると、ロングヘアの黒髪がふわりと靡き、爆乳と爆尻がどたぷんっと弾んでいた。
「んんっ……!」
颯爽と跨ったシートを通じて肉体に伝わる、熱いエンジンの鼓動。その獰猛な振動が、そこにぴったりと密着している下腹部と鼠蹊部を通じて、真凛の背筋をゾクゾクと突き抜けて行く。気高く凛々しかった真凛の怜悧な美貌が、恍惚の色に染まる。それはシートに跨り、エンジンを掛け始めてからすぐのことだった。
「あぁ、はぁっ……」
バイクの車体から広がって行くエンジンの熱さが、水で冷えた真凛の肉体をじわじわと暖めていた。彼女が対策室時代から愛用しているこのバイクは、マシンGチェイサーに次ぐ馬力を秘めた「特別製」なのだ。
対策室を去り、特務捜査官の権限を失った今となっては「違法改造車」でしかない、曰く付きのスーパーマシン。そんな代物の車体に積まれている規格外のエンジンは、シートを通じて真凛の下腹部に獰猛な「熱」を伝えている。
「はぁんっ……!」
やがて、天を衝くように迸るエンジンの「熱」。下腹部から脳天に向かって突き抜けて行くような、その熱く逞しい「昂り」に真凛は甘美な声を上げる。ゾクゾクと背筋を走るエンジンの脈動を感じ、彼女はうっとりとした様子で瞼を閉じていた。
真凛の優美な背はくの字に仰け反り、艶かしく開かれた唇から蠱惑的な吐息が漏れて来る。命を預けるに値する、獰猛なまでに逞しいエンジンの躍動。その熱く雄々しい胎動が下腹部に伝わる瞬間、真凛は愛車の鼓動を味わうように引き締まった腰をくねらせていた。
「はぁ、ぁあっ……!」
さらに艶かしく、悩ましい声が溢れ出る。前方に突き出された特大の乳房はどたぷんっと揺れ動き、後方に突き出された安産型の桃尻もぶるんっと弾んでいた。どうやらエンジンの勢いも、「本調子」に達して来たらしい。Gチェイサーに次ぐ加速を引き出せるモンスターマシンは、完全に目醒めたようだ。
「……んっ、ふぅっ……今日も良い調子だわ。その意気で、最後までお願いね」
シートから伝わる熱いエンジンの鼓動。その燃え滾るような熱気が伝播した下腹部に、恍惚の微笑を向ける真凛は、チャイナドレス越しにその箇所を白い指先でそっとなぞっていた。うっとりと細められた双眸は、熱に浮かされたように濡れそぼっている。むわりと汗ばむ白い肉体からは濃厚なフェロモンが匂い立ち、真凛の肢体も愛車と同様に熱を帯び始めていた。
本来の体温が取り戻され、熱く桃色に染まり行く柔肌。その隅々から滲み出る瑞々しい汗が真凛の肉体を淫らに彩り、極上の色香を全身に纏わせて行く。
エンジンの躍動に合わせて乳房と桃尻が弾むたび、輝く汗が柔肌を舐めるように滴っていた。スリットによって強調される白い太腿から、ピンと伸びたハイヒールの爪先まで滴り落ちて行く汗の雫が、長くしなやかな美脚を厭らしく撫でている。
「……次は地獄で逢いましょう」
そのままエンジンを全開にした真凛は、ハンドルを強く握り締めると――山地の方へと振り返る。これから自爆する研究所と運命を共にするノバシェードの構成員達は、その遺体すら残らないのだ。
そんな彼らへのせめてもの手向けとして、真凛は妖艶な唇を僅かに開き、小さく呟いている。いつかは自分も、同じ地獄に堕ちるのだと。
やがて彼女は愛車と共に、猛スピードで山地から走り去って行く。研究所を跡形もなく焼き尽くす爆炎の業火が、天を衝く轟音と共に外の世界へと噴き出したのは、それから間も無くのことであった。研究所の自爆機能が、ついにタイムリミットを迎えたらしい。
猛烈な馬力で砂塵を巻き上げながら、森林部の山道を疾走する真凛の後ろでは、激しい爆炎が凄まじい勢いで広がっていたのだが――その猛火が彼女の背中に届くことはなかった。
「ふふっ……生憎だけど、私はまだ死ねないのよ」
すでに最高速度に達していた青いクラシックバイクは容易く爆炎から逃げ切り、主人を「安全地帯」に連れて行ってしまったのである。
◆
その後――ギルエード山地で起きた謎の爆発事故に対応するべく、現地の警察隊と消防隊が緊急出動していた。
黒煙を上げる山岳地帯を目指して、慌ただしく森林部を駆け抜けて行く無数のパトカーと消防車。その様子を遥か遠方の崖上から見下ろしていた真凛は、愛車に跨ったまま鋭く眼を細めていた。
(救国の英雄と謳われたジークフリート・マルコシアンが軍部を去ってから11年。大衆から絶大な支持を集めていたカリスマ的存在を失ったこの国の情勢は、長い間不安定なままになっていた。現政権に移行してからは安定に向かい始めているようだけれど、今でも治安が劣悪な地域は多い。……なるほど、ノバシェードの隠れ蓑にはうってつけだったようね)
11年前の2009年に起きた、旧シェードの改造人間達による侵略行為。その魔の手から祖国を守り抜き、救国の英雄と称賛されたジークフリート・マルコシアン大佐が陸軍を去って以来、この某国は長きに渡る混迷期を迎えていた。その長期的な混乱を利用し、ノバシェードの構成員達はこの国に紛れ込んでいたのだろう。
首都近くの山地にまで大規模な研究所を構えていたくらいなのだから、それ以外の至るところにもアジトを隠している可能性がある。軍や警察の監視が満足に機能していない地域も少なくないこの国ならば、身を潜められる場所など幾らでもあるのだ。
(けれど……無意味だわ。どんな国に逃げ込もうと、どこで息を潜めようと……この私から逃げられはしないのだから)
だが、例えこの国の眼がどれほど曇っていようと、自分は決してノバシェードの影を見逃すつもりはない。特務捜査官としての地位や権限が無くなろうと、関係ない。
自分が真凛・S・スチュワートという女である限り、この戦いから手を引くつもりはない。それが、彼女自身の信念であった。
――あ、「悪魔」めぇッ……!
(……悪魔、か)
バイクのハンドルを握り直した瞬間、死に際に自分を「悪魔」と糾弾した戦闘員の呪詛が脳裏を過ぎる。
その言葉を敢えて否定せず、むしろ「褒め言葉」として受け止めていた真凛は、自嘲するように口元を緩めていた。乾いた笑みが、唇の動きに現れる。
(確かに私はもう……「悪魔」にしかなれない。けれど、「悪魔」であっても正しいと信じる道のために戦うことは出来るわ)
己の正義を通すためなら、正道から外れることも厭わない。そんな「矛盾」を背負って戦う決意を新たにした真凛は――踵を返すようにハンドルを切り、森の奥深くへと走り去って行く。その行方を知る者は居ない。
(せめてあなただけは、私よりは「利口」に生きなさい……ヘレン)
ノバシェードの改造人間とあらば、一欠片の情も持たない冷徹な女傑。そんな彼女の胸中に残された数少ない良心は、生真面目で実直な「後輩」への思慮のみであった。
自分の跡を引き継ぐヘレンのために真凛が「餞別」として譲り渡した、ワルサーPPK。その愛銃を手にノバシェードと渡り合っているヘレンは、真凛の分まで今も懸命に怪人犯罪を追い続けている。
どれほどこの手を血で汚しても、彼女のことを忘れた日はない。だからこそ真凛・S・スチュワートという女は、彼女には出来ないことを代わりに全て引き受けているのだ。
いつかヘレン・アーヴィングを守り抜き、幸せにしてくれる男が現れるその日まで、彼女の命が続くようにと――。
後書き
今回は女湯編で初めて存在が明かされた、ヘレンの先輩である真凛・S・スチュワートに改めてスポットを当てるお話となりました。本来ならこのお話も女湯編の内容に差し込むつもりだったのですが、ちょっと長くなりそうだったのでこちらに分けることになりますたm(_ _)m
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