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八条学園騒動記

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第七百一話 潜入前にその二

「三種の神器の一つだな」
「日本の皇室に伝わる」
「これに見られる様にだ」
「日本でも剣は使っていました」
「その長い歴史の中でな」
「そうですね」
「では走れメロスの作者は誰だ」
 今度は文学の話だった。
「芥川龍之介か」
「いえ、太宰治です」
 上等兵はこの作家だと答えた。
「他の代表作は人間失格、斜陽、富岳百景等です」
「そうだな」
「では芥川龍之介は何歳で亡くなったか」
「三十五歳だ」
 大尉も即答だった。
「自殺している、命日は河童忌だ」
「その通りです」
「袴は穿けるな」
「出来ます、大尉殿もですね」
「私もだ、下駄も履ける」
「箸も使えます」
 この食器もというのだ。
「そして風呂には全裸で入ります」
「連合全ての国がそうでな」
「日本でもです」
「我々は合格だな」 
 まさにとだ、大尉は言った。
「日本文化をよく学んでだ」
「修得していますね」
「落語や能も知っている」
 こちらの文学もというのだ。
「国鳥も雉とだ」
「知っています」
「国花は菊と桜だ」
 この二つだというのだ。
「国旗は日の丸でな」
「旭日旗は軍艦旗です」
「元は大漁を示していてな」
「それが軍艦旗となりました」
「そして寿司も刺身もだ」
 こうした食べものもというのだ。
「食べられるな」
「納豆や塩辛も」
「味噌もだな」
「大丈夫です」
「ならいい、我々ならだ」
 まさにとだ、大尉は真剣に言った。
「見破られない」
「エウロパの工作員とは」
「外見を少し変えれば」
 それでというのだ。
「アジア系の趣を入れるとな」
「アフリカ系でもですね」
「それでだ」
「連合の人間と思われますね」
「連合で純粋な白人は少数だ」
「いるにはいますが」
「極めて少数だ」
 そうなっているというのだ。
「混血が進んでな」
「そうですね、連合は」
「この国は誰彼なく結婚してな」
「子供をなしますね」
「だからな」 
 そうした国だからだというのだ。
「混血が進んでいる」
「そうですね、まことに」
「エウロパは国家が違っても結婚するがな」
 大尉は自分達の国のことも話した。
「しかし貴族と平民はな」
「基本結婚しませんね」
「また民族が違う」 
 貴族と平民ではだ、このことはノルマン=コンクェストを見てもわかることだ。日本等とはそこが違うのだ。 
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