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おっちょこちょいのかよちゃん

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287 廃墟化した屋敷

 
前書き
《前回》
レーニンおよび杉山と相対したかよ子は白魔術や身体能力強化の術で攻撃する。善戦するが、杉山はかよ子の杖が、そしてかよ子もまた強くなっていると認め、紂王や妲己、そしてりえを連れてその場を離れてしまう。りえや藤木の奪還に失敗してしまい、また一から出直しに!! 

 
 夜が明けた。かよ子達は朝食を済ませた後、あり達と別れて再び藤木の救出へと向かおうとした。その前にフローレンスから連絡が来て、藤木とりえの奪還に失敗し、取り逃がしてしまった事を伝えた。
『そうでしたか・・・。しかし、諦めてはいけませんよ。領土攻撃班も多くの領土を着々と我々の世界の領土へと戻していますのでいずれは追い詰めます事になりますからね』
「はい・・・!!」
『では、ご武運をお祈りしています』
「は、はい、ありがとうございます・・・」
 通信を終了した。
「山田かよ子、長山治にも連絡したほうがよいぞ」
「うん、そうだね・・・」
 かよ子は通信機を長山に繋げた。
「こちら山田かよ子。長山君、聞こえる?」
『あー、山田、どうしたんだい?』
「夜中まで藤木君とりえちゃんを連れ去ったって思われる人と戦ってたんだ。それで逃しちゃったんだけど、今藤木君やりえちゃんがどこにいるか探知してくれるかな?」
『ああ、それなら今知り合いのお兄さんからも頼まれて探してるところだよ。ちょっと待っててくれよ』
 かよ子は知り合いのお兄さんと聞いてりえの救出に当たっている北勢田の事だと解った。長山と北勢田は近所付き合いで仲が良いのだった。
「うん、待ってるよ」
 かよ子は情報を待ちながら北へと羽根を進めた。

 三河口はありと通信機で連絡を取っていた。
「そうですか、かよちゃん達は藤木君を奪い損ねた訳ですか・・・」
『うん、もっと北の方に逃げたらしいの』
「そうですか、それならさりちゃんと行動を一緒にしている長山治君と連絡を取り、りえちゃんや杉山君、藤木君の行動を探ってくれと頼むといいですよ。北勢田にも伝えましたが」
『うん、ありがとう』
 連絡を終えた。
「ねえ、やっぱりあの時、大野君達を待ってた方が良かったんじゃないかしらあ?」
 冬田は聞いた。
「それは大野君達の仕事だろ。俺達の目的は杯を奪い返す事だ。他人の手柄を横取りする気はない」
「それより三河口、あの狐に変身する女が言ってた言葉覚えてるか?」
「ああ、ヨウダイとか何とか言ってたな・・・。その場を凌ぐために嘘ついてた可能性もあるが、本部に詳細を聞いてみよう」
(ヨーダイ・・・、どうも昔の皇帝が頭に浮かぶんだが・・・)
 三河口は本部に連絡を取り始める。
「こちら三河口健。フローレンス、イマヌエル。夜中までかよちゃんやうちの従姉達と藤木茂がいるって屋敷での戦いに参加していたんだが、藤木やりえちゃんを攫ったとされる女から杯の在処について尋問した所、『ヨーダイ』様に預けたとか聞いた。ヨーダイについて何か情報知っているか?」
『こちらイマヌエル。煬帝か、勿論それは昔、中国にあった隋という王朝の皇帝だよ』
「そうか、その煬帝がどこに居座っているか解るか?」
『ああ、北の方角だ。丁度君達が進んでいるその直線状に彼の根城があるよ』
「そうか、ありがとう。偽情報かもしれないが、そちらを当たってみるよ」
 通信を終了した。
「冬田、北の方に進ませろ」
「は、はあい・・・」
 三人は北へと向かう。
(杉山君、果たしてお前は大将に一歩前進したのか・・・。だが、俺はまだ認めるつもりはないぞ・・・)
三河口は戦争主義の世界の長と合体した少年の事も考えていた。

 夜中に藤木救出班と杯の所有者を取り返す者、そして杯の在処を探す者らが激しい戦闘を繰り広げた紂王の屋敷は今は廃墟と化していた。建物の一部は壁や屋根が破壊されており、そこに住んでいた者は皆殺されたか別の場所へと逃走し、誰一人いなかった。そこに一機の飛行機が飛来する。
「ここね、例の戦闘場所は」
 その飛行機は護符の所有者・羽柴さりの護符の能力(ちから)で出された物だった。さりは飛行機を着陸させ、同行している者と共に降りた。
(ここで山田達は藤木君を取り返す戦いをしてたんだな・・・)
 長山はこの地に行方不明となっていたクラスメイトがいたと思うともう少し自分が支援してやればよかったと悔しく思った。
(ごめんな、皆・・・)
 と、その時、長山の通信機が鳴った。
「はい、こちら長山治」
『こちら北勢田竜汰だ』
「あ、お兄さん!」
 長山にとって北勢田は知り合いの高校生でもある。
『今、そっちはどの辺にいるんだ?』
「ああ、うちのクラスメイトの山田かよ子達が戦ってた所にいるよ」
『紂王の屋敷だな?それなら話は早いかもしれん。その場に杯の持ち主の女の子もいたんだ。逃げられちまったがその行方を探れるか、君の眼鏡を使ってみて欲しい』
「はい、やってみるよ!」
 長山は神通力の眼鏡の能力(ちから)を行使した。杯の持ち主の所有者の行方を探知する。そしてその少女の姿が眼鏡に現れた。
(りえちゃんは・・・)
 長山は確認した。杯の所有者は戦争主義の世界の長に連れて行かれていた。
(あれは杉山君じゃないか!!どこへ連れて行こうってんだ・・・!?)
 そして方角も確認する。北の方角だった。長山は通信機を取り出して北勢田に繋げた。
「こちら長山治!確認したらりえちゃんは北の方角へ杉山君に連れて行かれているよ!」
『北の方角!?その杉山君ってのは治君の友達だろ?あの戦争主義の世界の長に寝返ったって奴か!」
「うん、そうなんだ!」
『チッ、面倒な事になっちまったな。ありがとう、気を付けるよ!』
 通信は終了した。
「長山君、そのりえちゃんが杉山君と一緒にいるの?」
 さりは長山と北勢田の会話を聞いていたのだった。
「うん、そうなんだ!」
「はあ、ウチの弟が・・・、いい加減にしなさいよ!」
 杉山の姉・杉山もと子は弟の不可解な行動続きに怒った。
「そっか、その寝返ったの、君の弟か。どげん奴かい?」
 尾藤が聞いた。
「まあ、サッカーとか好きだし、クラスでは頼られてる男子よ」
「そげんこったか。強敵になりそうやな」
 テレーズは屋敷の周囲を徘徊した。何もない状態となってはいるが、なかなかの豪華な造りになっている事に驚かされた。藤木救出班の目的の少年がこの建物内にいたとなると少年にとってはこの屋敷はかなりの楽園であったに違いないだろうと。
「テレーズ、珍しいかね?」
 清正が話しかけた。
「ああ、はい。古代の中国の王朝の建物の造りが私がいた国とは全く異なるものですから、とても珍しゅうものでして・・・」
「まあ、西洋人からしたらそう思うのも無理はないであろうな」
「はい、そういえばお母様も東洋の木でできた家具を好んでいましたわ・・・」
 テレーズは敵対した母を思い出すのだった。長山は神通力の眼鏡でこの建物内の過去の出来事を映し出そうとしていた。
(ここに藤木君とりえちゃんがいたんだ・・・。山田達、悔しかっただろうな、もう少しで目的達成だったのに逃げられるなんて・・・)
 そして屋敷での戦いを映し出す。自身の知り合いの高校生と戦闘に関わり、更には戦争主義の世界の長と彼と同体化した杉山の姿も見えた。
(杉山君、君は何を考えているんだい・・・?)
 その時、長山は異変を感じた。
(何かが来ているのか・・・?)
 そして何かが飛来してくるのが見えた。
「あれは・・・!?」
 それは映画に出てくるようなプテラノドン型の怪獣だった。
「怪獣!?この世界にいたの!?」
 怪獣が攻撃して来る。さきこのエメラルドが光った。全員を防御させる結界を出した為、皆無傷で済ます事ができた。
「この女か、護符の所有者は」
 西部劇のガンマンのような人間が降りてきた。
(な、何だ、今迄の敵とは違う!)
 長山やさきこなど見聞の能力(ちから)の持ち主からしたら赤軍や戦争主義の世界の人間とは異なる感触だった。
「決闘だ!」
 ガンマン達は発砲してさり達を狙う。さりは護符で巨大な防弾ガラスを出して対処した。
(この人達は・・・)
 長山は眼鏡で確認した。この男と怪獣はどこから来たか。そして解った。別の男がカメラから出して彼等を出現させた所を。
「こいつらは、赤軍の人が出したものだ!」
(赤軍・・・!?)
 さり達はすぐに警戒した。だが、プテラノドンの怪獣が挟み撃ちにして来る。 
 

 
後書き
次回は・・・
「ガンマンと怪獣」
廃墟化された紂王の屋敷にてガンマンとプテラノドンの怪獣に襲われるさり達。徹底抗戦する一同だが、果たして戦いの行方は如何なるものか。そして藤木に拒絶され絶望していた笹山は・・・!? 
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