FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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人間とドラゴン
前書き
予定では今年中に原作に追い付いたらいいなぁって感じだったのですが、予想外にやる気があり何なら今月中に追い付きそうな気がしてます。
これからどうするか決めてないのですが、どうしましょう?原作が出る度に少しずつ更新してゆっくりするか同時進行でオリジナルストーリーをやるか・・・迷いどころです。
一部では大地が変わるほどの大きな地震を起こしながら崩れていった迷宮。その迷宮の崩壊の意味はこの時の俺たちはわからなかった。ただ、今俺たちは重症患者を二人も抱えているため、彼女たちの治療のために魔導士ギルド・ディアボロスへとやってきていた。
「ほらほら!!シリルもウェンディも食べて食べて」
「あ・・・ありがと・・・」
「そ・・そんなには食べられないかな?」
双方のギルドの和解を兼ねた親睦会が開かれているんだけど、ハクが俺とウェンディへいまだにアプローチしてきているらしくなんだか落ち着かない。恐らく俺たちよりも一つか二つ年下なんだろうけど、こんなにグイグイ来るとは思わなかった。
「ほら、あなたも」
「気にしないでいいのに」
「あら?だって私より強い女の子に会ったのはセレーネとあなただけだったから」
「女の子・・・」
これまた戦ったことで芽生えた絆なのか、ミサキさんとエルザさんも友好的に会話をしている。珍しく女の子扱いされたことに、エルザさんは気恥ずかしさを感じているようだったが。
「じゃあミサキしんはギルティナ大陸一の女性魔導士ってことですか!?」
「さすがウェンディ!!頭いいね!!なでなでしてあげるよ!!」
「触んじゃねぇ!!」
「シリルもなでなでする?」
「しなくていい!!」
彼女が相当な実力者であることはわかったんだけど、ハクもそれに類する力があると言われるとどうもピンと来ない。それだけこの子は年相応なのだ。
「まぁ・・・魔導士ではな」
「オイコラ!!ミサキさゆにケチつけんのかスカリオン!!」
スカリオンさんの言葉にぶちギレのキリアさん。ただ、彼がそう言いたくなる気持ちがマッドモールさんにはわかるらしい。
「この大陸には魔導士ギルドと肩を並べる錬金術師ギルドがあるっちゃ」
「錬金術?」
「物質を他のものに変えられるって奴~?」
「えー!?焦げたお魚を生に出来るの!?」
「それは知らないよ~」
ハッピーのボケなのかマジなのかわからない発言に呆れた様子のセシリー。錬金術師ギルドの話が出ると、心当たりがあったのかグレイさんが大きな声を出していた。
「そういやそんな奴がウロウロしてたな」
ドグラコアを破壊している最中、その錬金術師ギルドの一人と戦ったと言うグレイさん。彼はドグラコアを持ち出そうとしていたらしいけど、一体何のために?
「話が逸れているぞ?今は我々のこれからについて語る場だ」
錬金術の話で盛り上がっていると、スザクさんがその場を沈める。それを聞くとハクが屈託のない笑顔を見せながら答えた。
「そりゃもうお友達になったんだし、仲良くすればいいじゃん!!」
「それとも再戦がのぞみなら全員まとめて相手してやるぞ!!」
「話がややこしくなるから黙ってて!!」
ハクらしい提案がなされたがはいそうですかとはならない。その理由はディアボロスの現マスターにある。
「まずはそなたたち妖精の尻尾は五神竜を倒すのが目的。つまりセレーネも殺すということ。対して我々の目的はセレーネを守ること。彼女の望む世界を作ることだ」
そこだけ聞くと俺たちの方が悪いことをしているようではあるけど、それはここからの話し合い次第だろう。俺たちだって闇雲に五神竜を殺しているわけではないし。
「セレーネの望む世界ってなんなの?」
「この世から全てのドラゴンを消し去ること。そして彼女は人間として静かに暮らしたいそうだ」
そのためには五神竜が邪魔だからそれを倒すための力を得るために今回の件を引き起こしたとのこと。それはそれで理屈はわかるんだけど・・・
「そうは言っても、奴は今まで様々な世界をめちゃくちゃにしてきた奴だ」
「簡単には信用できねぇ」
「迷宮ではあれだけお前たちを助けていたじゃろう」
これまでの彼女の行動を見ると本当にそれだけなのかと疑ってしまう俺たちと彼女の行動理念がわかっているからこそ信じようとするディアボロスの皆さん。話は平行線から動きそうにない。
「よぉくわかった!!」
「ナツ」
しばしの沈黙の後、何を思い付いたのかナツさんが勢いよく立ち上がる。
「みんな間違ってるってことだ。人間もドラゴンも関係ねぇんだよ、心を見て決めればいい。それが前に進むってことだろ」
彼らしい言葉に俺たちは顔を見合わせ、笑ってしまう。ただ、それもそれで大変であることはディアボロスの人たちもわかっているようで、しばし時間を空けようということになりその場は一度お開きになったのだった。
グレイside
「それで、なんで一緒に風呂に入ることになるんだよ」
思わず服を脱ぎながらそんな言葉が出た。ルーシィたちが汗を流したいといったことでミサキとキリアが大浴場へと案内したのだが、なぜか俺たちまで入ることになっている。
「なんか汗臭ぇから入れって」
「お前が暑苦しいからだろ?」
「なんだと!?」
「やんのかコラ!!」
普段からほとんど風呂に入らないナツは度々匂いのことを指摘されることが多い。一度それで助けられたこともあるが、基本的には害の方が多いだろう。
「うちのギルドは露天風呂があるからな」
「ゆっくり浸かるといいっちゃ」
同じく服を脱いでいるスカリオンとマッドモールがそんなことを言う。スカリオンは仮面だけは外さないみたいだが、裸にその格好は不審者極まりない気がするが・・・言わなくていいか。
「あ!!」
「そうだ!!」
「「??」」
早速風呂へと入ろうとしたその前に、あることを思い出し周囲を見回す。ただ、今回は珍しくその姿がない。
「どうした?」
「いや・・・」
「色々あるんだ、俺たちも」
自称男であるシリルは俺たちと一緒に風呂に入りたがるのだが、あいつは年の割に妙な色気がある時がある。それが風呂場で見せられたらこちらの理性が消し飛んだしまうリスクもあるため、共に入るのは忍びないのだが、今回は珍しくちゃんと女子側にでも行っているのだろう。姿がなくてホッと一安心。俺たちは気にすることなく風呂へと入る。
「わぁ!!待ってたよぉ」
「ハク!!泳ぐんじゃない!!」
「別にいいっちゃ」
俺たちよりも先に入っていたのはハク一人。それも風呂で泳ぐというマナーの無さがなんとも言えなかったが、子供らしい彼の行動はどこか懐かしさもあり、許容してしまう。
「向こうは騒がしいな」
「キリアとミサキが魔法で身体でも洗ってるんだろ」
隣の女子風呂から様々な声が聞こえてきて思わずそう言うと、スカリオンがそんな返しをする。すると、ナツがニヤリと笑みを浮かべてある提案をした。
「俺たちも洗い合うか?」
「いや・・・」
「やめておくっちゃ」
珍しく親睦を深めるいい提案をしたナツだったが、なぜかその手に炎を纏っていることから拒否されてしまう。それに不服そうな顔をしていたナツだったが、後ろから聞こえてきた声にそんな感情は消し去った。
「洗いっこいいじゃないですか」
「「「「「!?」」」」」
勢いよく振り向く俺たち。その視界に入るのは水色の髪をした少年。そいつは下こそタオルで隠しているが、上半身は隠す素振りも見せず堂々と仁王立ちしていた。
「「どわあああああ!!」」
「なんでこっちにこいつか!?」
「なんで隠さないっちゃあ!?」
あまりにも堂々としている上に胸元を隠す行為すらしないシリルにスカリオンもマッドモールも何が起きているのかわからず絶叫する。そんな俺たちにシリルは首をかしげながら答えた。
「俺?男だからこっちで合ってますよ?」
そう答える仕草が少女にしか見えないのだが、そんなことは今はどうでもいい。俺たちは彼に背を向け、司会にその姿を入れないようにする。
「え?シリル・・・」
「ん?」
懸命に平常心を装っている俺たちだったが、すでに浴槽に入っている少年は彼の方を見て顔を真っ赤にすると・・・
「だ・・・大胆すぎ////」
鼻血を吹き出しながら風呂へと沈んでいった。
「どわぁ!!ハク!!」
「しっかりするっちゃ!!」
このハクはシリルとウェンディに恋心を抱いていたようだったが、そのうちの一人が自ら裸体を見せてきたらこんなことになってもおかしくない。それを引き起こした少年は訳がわからないといった様子だったが、俺たちは近くにあった未使用のタオルを彼へと手渡す。背を向けたまま。
「頼むシリル!!これを胸に巻いてくれ!!」
「ええ!?絶対イヤです!!」
「頼む!!このままじゃ勃っちまう!!」
「今立ってるじゃないですか!!」
「その立つじゃねぇ!!」
なんとか少年を説得してせめてもの露出を最小限に控えてもらおうとする俺たち。その押し問答は数分に及んだが、最後には彼が折れたことで俺たちの理性はなんとか繋ぎ止めることが出来たのだった。
シリルside
頬を膨らませながら目の前にいる二人を睨み付ける俺。彼らはそんな俺と目を合わせないようにしているが、それがまた気に入らない。
「やっぱり納得できないです!!」
「頼む!!本当にダメなんだって!!」
通常湯船に入る時はタオルは外すのが常識だが、今俺はナツさんとグレイさんの頼みにより上と下もタオルを巻いている。それが納得できずに突っかかるが、彼らに手を合わせられたためそれ以上は何も言えない。
そもそもディアボロスの面々も全員引き上げてしまったし、なんだか俺が間違っているような錯覚に陥るから不思議だ。
『一度そなたたとはゆっくり話しておきたかったところだ』
「何か言いました?」
「いや・・・なんだ?今の」
俺とグレイさんが不思議な声に首をかしげていると、その声の主がまた話してくる。
『話ならこんな場所じゃなくてもいいだろう。皆がいる場所で』
『殿方たちなら話が聞こえてるはずよ。私のゲートで』
「なんだ!?風呂の中から声がするぞ!!」
「セレーネの声だ!!」
どうやらこの声はセレーネのものらしい。他にもエルザさんの声も聞こえたことから察するに、女湯から聞こえてきているのかもしれない。
『なんでお風呂で~?』
『裸の付き合いって大事でしょ?』
「言われてみれば・・・」
妙に納得しているグレイさんだけど、彼は一年中至るところで裸なのだからそんなに感心することではないと思う。
「話って何?」
『先に言っておく。私はこれまでの自分の行いを悔いておらぬし詫びるつもりもない』
『いきなりそう来たか』
声だけではあるけど、何やら一触即発の雰囲気になっているのはわかる。ただ、俺たちからでは何もできないためここは話を聞くしかない。
『これは当然。私が生きるために必要だったこと』
『エレンティアをめちゃくちゃにしたのも?』
『エレンティアだけではない。私は今まで実に多くの世界を歪ませてきた。歪めれば歪めるほど世界の裏の顔が見えてくる』
『世界の裏の顔?』
『その世界に隠された力よ』
「力ってなんだ?」
風呂の中から声がするからか、頭を湯船に突っ込んで問いかけるナツさん。そんなことしなくても聞こえているとは思うけど、彼はそのまま先程のハクのように泳ぎ出そうとしているようにも見えた。
『五神竜を倒すための兵器・・・私はそれをずっと探していた』
『ミミたちもそれに賛同していたの?』
『あやつらはエレンティアでの兵力に過ぎん。ちなみにゲートを使って脱獄させといてやったぞ』
脱獄させたってことは今頃エレンティアの警備隊は大騒ぎだろうな。彼女たちがどこに逃げたのかにもよるけど、下手したらずっと見つけられないわけだし。
「あれ?ナツどこ?」
その話の最中、先程から今にも泳ぎ出しそうになっていたナツさんの姿が見えなくなる。退屈な話になると思って上がってしまったのかな?彼らしいといえば、彼らしいけど。
『皮肉なことに、その力はこの世界にあった』
『それがあの大迷宮に?』
『正確には《大迷宮に封じられた法竜の心臓がその場所を知っていた》』
『でも心臓は土神竜に壊されてしまったんですよね?』
『結局・・・その力の場所はわからずじまいってことね』
フェイスやエーテリオンに並ぶような魔法があるのかと考えると正直怖い。でも、それがあれば他の五神竜を倒せるというのはなんとも皮肉な話だ。
『エレフセリアさんなら、その力の場所を知ってるってこと?』
「残念ながらワシは知らん」
いつの間にか俺たちと一緒に入浴していたエレフセリアさんが答える。俺とウェンディが治療したこともあり、彼の傷もすっかり塞がっているようだ。
「まさかこうして五神竜の一頭と話をする時が来ようとは・・・」
『同感ね。私もあなたと話をする時が来ようとは・・・』
双方共に仲間を殺されたことを根に持っているようで言葉しかわからないはずなのに、まるで二人がにらみ合っているような錯覚に陥る。ここは少しでも緩衝材になった方がいいかな?
「人間とドラゴンの戦いは400年前に終わったはずじゃなかったんですか?」
『お互い様ってことでしょ?エレフセリア』
「そんな言葉で納得できるか!!」
『だったら!!人間だけがドラゴンを殺していい理由はなんなの!?』
気を使ったつもりだったけど、逆に火に油を注いでしまい顔から血の気が引いていく。すると、なぜかこの状況でルーシィさんの笑い声が響いてくる。
『おい・・・笑うところかこのメスガキ・・・』
『ち・・・違うの!!ごめんなさい!!あははは!!誰かが足をくすぐってて・・・やめんかー!!』
その大声と共に水の音がしたかと思うと、なぜかナツさんの声がルーシィさんたちと同じような形で聞こえてくる。どこかにいったのかと思っていた彼は、お湯のなかを潜っていき、女湯へと入ってしまったらしい。
『きゃーっ!!』
『こ・・・この変態がーっ!!』
『ふ・・・ふとどき者!!』
『まぁ落ち着いてくれ。ナツは私の仲間だ』
『そーゆー問題じゃねぇ!!』
ナツさんの登場で大パニックの女湯。音から推測するに彼は今女性陣にボコボコにされているのだろうけど、それを見ているセレーネの笑い声が微かに聞こえた。
『男も女も人間もドラゴンも、違いがあれど会話が出来るではないか・・・私の話を聞いてくれ、エレフセリア。そなたの100年の想いのためにも・・・』
ボロボロになったナツさんが男湯に戻ってきたところで二人がなぜここまでいがみ合うのか、教えてもらった。
元々魔導士ギルドは迫害を受けてきた魔導士たちを守るために作られたこと・・・その力で救ってほしいと願う者もおり、それにより今のような依頼を受注するシステムができたこと・・・その依頼を遂行するために向かった魔導士たちがギルティナ大陸でいまだに生き残っていたドラゴンたちに遭遇し、戦いを挑んだところ返り討ちに合い命を落としたこと・・・そのドラゴンたちを倒すために滅竜魔法を独学で修得したこと・・・ドラゴンたちと戦えるようになった頃、今の五神竜・・・当時は六神竜と呼ばれた脅威的な力を持つドラゴンたちが現れたこと・・・そのドラゴンたちに滅竜魔法を修得した者たちも歯が立たなかったこと・・・エレフセリアさんが心臓を犠牲にしながらそのうちの一頭、土神竜ドグラマグを倒したこと・・・そして他の五神竜を倒すことを未来の魔導士に託すためにクエストにしたこと。
「そして今・・・妖精の尻尾の魔導士たちによって二頭の神竜が封じられた。そして三頭目が目の前にいる」
『確かにそうね。でも、勘違いがないようにこれだけは言っておくわ』
セレーネが何を伝えようとしているのか、全員が耳を傾ける。
『私は人間が好きなのよ』
「なんじゃと・・・」
思いもよらない発言に俺たちは顔を見合わせた。しばしの静寂が流れた後、セレーネは言葉を紡ぐ。
『それは大勢殺してきたけど、それは相手が"人間"だったからじゃない。私の命を狙ってきた"敵"だったからよ。それが猫でもドラゴンでもそうしていた・・・生きるために。人間は愚かな生き物だと思っているわ。常に争い常に人より上に立とうとする。憎しみ合い殺し合い短い命を使いこなせていない、だけどここまで繁栄してきた。
そのちっぽけな命の中には生命力が溢れている。愚かでありながら人を愛し喜び合い、未来を夢見る・・・
ドラゴンと同じではないか・・・』
セレーネが五神竜を倒して人間として生きたいと考えたのは、そういうあらゆる時代を見てきたからなのだと理解した。それこそが彼女の原動力であり、行動理念なのだと。
『だから私は決めたのよ。この・・・ドラゴンの時代が終わったこの世界で人間として生きてゆきたいと・・・ただ・・・そんな世界を創るには、イグニアとビエルネスは邪魔なの。あの二人は人間を理解する気がない。だからその兵器がほしかった』
その声は明らかに怒りの感情を宿していた。二頭のドラゴン・・・ビエルネスはいまだにどのようなドラゴンなのかもわからないが、イグニアはかなり好戦的で今回の迷宮にも絡んできたらしい。ただ、それを聞いてもエレフセリアさんは納得しかねていた。
「ならば月神竜セレーネはもう人を殺さぬというのか?」
『私に危害を加えてこない者にはな』
「危害を加える者は殺すのか?」
『当然だろう、私とて自分の身は守りたい。何か間違ったことを言っておるか?』
『いいえ、当然の権利かと・・・』
セレーネの言葉にミサキさんが返答する。ただ、まだエレフセリアさんは彼女のことを責めている。
「人は人をたやすく殺さん・・・」
『そうなのか?』
『ま・・・それも一理ありますね』
『ならば善処しよう』
人としての気持ちはわかっているとは言えないセレーネだけど、それでもその違いに付いていけるようにと変えるつもりはあるらしい。ただ、エレフセリアさんはまだ難しい顔をしていた。
『他には?』
「ビエルネスとイグニアの居場所を教えよ・・・」
『知らぬ。他には?』
二頭のドラゴンは誰も居場所がわからない。こう考えるとエレフセリアさんの心臓があればと感じてしまうが、もうそんなこと言っても意味がないし考えるだけ無駄だ。
「今まで殺してきた人間に謝罪せよ!!ワシの友もいた!!大切な仲間たちに!!」
鬼のような形相で叫ぶエレフセリアさん。それにセレーネは即答はしなかった。
「エレフセリア様・・・」
「わかっておる!!わかっておるんじゃ!!そんなものに意味がないことくらい!!セレーネだって生きるためにやってきたこと!!我々だって生きるために動物を殺す!!わかっておるんじゃ!!
ただ・・・100年もの間ドラゴンに敗れ倒れていった友の顔が忘れられぬ!!ワシの方が間違っていると理解しておるのに忘れられぬのじゃ!!」
涙ながらに自身の想いを叫ぶエレフセリアさん。そんな彼に心を動かされたのか、セレーネは口を開いた。
『謝罪しよう』
「よせ!!ワシが惨めになる!!謝罪などーーー」
『すまん』
「・・・は?」
彼女の軽すぎる謝罪に息を飲んでいた俺たちは絶句してしまった。とても命を奪ったものの謝罪とは思えぬ謝罪に、気を張っていたエレフセリアさんは笑いが止まらない。
『私の謝罪・・・何か間違っていたのか?』
問われたであろうミサキさんも何も言うことができずにただただ沈黙が流れる。すると、笑いが収まってきたエレフセリアさんも口を開いた。
「セレーネよ。ワシからも謝罪させてくれ・・・人間は不条理にドラゴンの命を奪ってきた・・・お互い様だったんじゃな。すまなかった」
双方の和解を得たことでこれは月神竜を封じたといっても良いだろう。
『これからは仲良く・・・は無理かもしれぬが、互いの存在を尊重してこその対話であろう』
「うむ。だがビエルネスとイグニアは脅威だ。ドラゴンだならではない、その力が人類を滅ぼすほどの力だからだ」
いまだに全貌が見えない二頭のドラゴン。彼らがいる限り、二人の戦いは終わったとは言えないのだろう。
『して、エレフセリアよ。神竜をも貫く人間界最強の兵器"アテナ"はどこにある』
セレーネからの問いかけ。彼女が探している人間たちの負の遺産とはそれのことだろうか?
『アテナ?』
「それがじーさんの心臓に記録されてるっていう兵器なのか?」
「かわいい名前だね」
『女の子の名前みたいですね』
フェイスやエーテリオンに比べると確かに人に近い名前。ただ、それがどういったものからセレーネも把握していないらしい。
「あれは今は亡きワシの弟子が作った兵器。ワシにもその場所はわからぬ」
『そうか・・・』
エレフセリアさんに弟子がいたというのは驚きだけど、そんな人がドラゴンをも倒せる兵器を作ったなんてスゴすぎる。一体それが何なのか、気になってしょうがない。
「そのアテナがあれば神竜を倒せるんですか?」
「セレーネ・・・お主はどこでその情報を手にした?」
どうやらアテナが確実にドラゴンに通用するかは未知数なようで華麗にスルーされてしまう。
『様々な世界を転々とした、そこにはここと似た世界もあった・・・』
「他の世界にアテナが!?」
『いや・・・どこでもアテナは失われていた。この世界以外ではな』
エドラスのような平行世界は他にもたくさんあることが驚きだけど、この中で唯一の希望とされるアテナがあるのはここだけというのも厄介な話。ただ、エレフセリアさんからすればそれは希望ではないようだけど・・・
「あれは人類の負の遺産じゃよ・・・」
「んなのどーでもいいよ。ぶん殴って倒す」
入浴中なのにすでに臨戦態勢のナツさん。だが、セレーネはある一つの情報だけは持っているようだ。
『いいや、金神竜ビエルネスはぶん殴れない。あれは概念。存在するが存在しないドラゴンだ』
「概念?」
思わず問いかけた俺だったが、セレーネもそれ以上はビエルネスのことを知らないらしい。五神竜の誰も居場所もどのようなドラゴンかもわからない金神竜・・・それがどんな奴なのかわからないまま、この話し合いは終了するのだった。
後書き
いかがだったでしょうか。
この作品ではアイリーンが生きているため彼女がセレーネの傷を背負って転生することができないため、このような形になりました。まぁウェンディとシリルっていう滅竜魔法を使える治癒魔法の使い手もいるので大丈夫だったんでしょう←雑か
次は絶賛連載中原作と同じストーリーに入っていきますけど、どこで追い付いてしまうか何とも言えません。もしかしたら次の話で追い付くかもしれないし、もう少しかかるかもしれないし・・・その時はまたお知らせしますm(__)m
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