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DQ3 そして現実へ…  (リュカ伝その2)

作者:あちゃ
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神聖なる英雄像

<サマンオサ>

アルル達はラーミアに乗り、サマンオサへと降り立った。
本当であればバラモス城へ乗り込んでいるのだが、リュカが至極常識的な事を言った為、決戦前に各国へ挨拶に訪れたのだ。

勇者アルルを筆頭に、ハツキ・ウルフ・カンダタ・モニカ・ラーミア・ミニモン・ティミー・マリー・ビアンカそしてリュカ…このパーティーで挑む事に…
因みにリュカのルーラで赴かなかったのは、
「ラーミアで乗り付けたら、みんな驚くんじゃね?」
と言う、先程とは打って変わって非常識なリュカの意見を、
「それ、いいわね!」
と、ティミー以外の全員が賛同したからである。


数ヶ月前は荒んだ町並みだったが、今では見違える程変わり、復興が進んでいる。
商店街も全てではないが、多くの店が営業し、皆が明るい笑顔で商いを行っている。
「やっぱ城下はこうでなきゃね!」
城への道を歩きながら、嬉しそうに呟くリュカ。
すると1人の少年が、リュカを見るや大声で叫ぶ!
「あ!リュカ様だ!!」

その声を切っ掛けに、リュカの周りには忽ちの内に人集りが出来、皆口々に感謝の言葉を述べている。
「な、何でこんなに有名なの?」
リュカは人集りに辟易しながら、無碍にも出来ずに困り顔でビアンカを見つめる…
無論ビアンカに応えられる訳もなく、ただ困惑するのみ…

TVもなく、写真もないこのDQの世界で、名前だけならともかく、顔までもが有名になるのは難しい。
だが今此処に集まってきている人々は、間違いなくリュカの容姿を知っている。
その事にも困惑していると、愛娘が1枚の絵を指差し、笑いを堪えて語りかけてきた。
「お父さん…こんな絵が…」
小さな美術店の店先に、醜いバケモノを相手取り、凛々しく剣を構えて戦っているリュカの絵が売られている。
「な、何じゃこりゃ!?」
人集りを掻き分け、マリーが指し示した絵の前へと移動する…

店の中には、この絵以外にもリュカが描かれた作品が多数あり、その全てに『フィービー』とサインが記されている。
「こんなシーン知らないぞ…」
飢えた貧しい人々に、安らかな笑顔で食料を配布するリュカ…
幼い少女を庇い、多数の悪逆な兵士と対峙しているリュカ…
全ての絵に共通しているのは、リュカには神々しく後光が差し、神聖視されて描かれているのだ。
奥から現れた店主の態度を見れば明らかで、リュカを見るなり神を前にしているかの様に恭しく頭を垂れる。

リュカはこの美術店から絵を2枚借り…店主は『そんな借りるなんて…どうぞ、お好きな物をお持ち下さいませ。リュカ様にでしたら、店ごとお譲り致しますから』と、インチキ宗教のエセ教祖に、盲目的にのめり込むバカ信者の様な態度をとられ『うるせー!返すってんだろ!』と、キレてから城へと向かった。


「コラ、テメー!何だこの仕打ちは!?」
リュカはサマンオサ王が居る会議室へ乗り込むと大声で怒り出す。
城門で…
入口で…
城内で…
会議室前で…
全てで取り敢えず待つ様に言われながらも、番する兵士を押し退けて無理矢理乗り込むリュカ。

そして国王を見つけるなり大不敬罪!
「リュ、リュカ殿…!?ど、どうしたのですかな?」
いきなりの事に呆気にとられる王様…
「どうしたじゃねー!何だこの絵は!?僕の事をバカにしてんのか?」
リュカは美術店から借りてきた2枚の絵を見せ怒鳴りつける。

「おぉ…良く描かれた絵だろ!ワシも何枚か持ってるが、どれも気に入っているぞ!」
周囲には大臣等のお偉いさんが多数居るが、そんな事を無視してリュカと国王は会話を続ける。
「何が『お気に入り』だ!このモチーフは僕だろ!バカにしているとしか思えないぞ!作者を呼べコノヤロー!説教してやる!!」

リュカの気迫に押されるまま、一連の絵の作者『フィービー』を呼び寄せるサマンオサ王。
フィービーを待つ間、会議室にはリュカの怒気が充満する。
「…リュ、リュカ殿…何をそんなに怒っているのだ?」
重要な会議中であったのだが、救国の英雄が怒りを露わに乗り込んできた為『話は後で聞く』等とはとても言えず、ただ黙って待つしかない大臣達…
そして、それに気付いた国王が、恐る恐る尋ねたのだが『作者が来てから話す!』と言われ、やはり黙って待つ事しか出来なくなる。


そして待つ事15分…
「あ、リュカ!私の事を呼んだって本当!?私もリュカに逢いたかったから、すごく嬉しいわ!」
そこに現れたのは、リュカ等がサマンオサに初めて訪れ、リュカの財布をスろうとし、逆に捕らえられた浮浪児の少女フィービーだった。

「お、お前がこの絵を描いたのか?」
彼女が現れるとは思わなかったリュカは、驚きながら2枚の絵を見せ問いかける。
「そうよ!私のリュカに対する思いを、絵に表現してみたの。結構良く描けてるでしょ。サマンオサでは人気があるのよ」
今では小綺麗な恰好をしている彼女は、世間一般から見ても可愛く、世の中の男性が放っておかない容姿であり、そんな彼女が可愛くウィンクをすれば、会議室に居る若めの文官達には鼻の下を伸ばして見とれてしまうのだが…

「ふざけんな、バカにしてるとしか思えないぞ!」
しかしリュカには効果が無く、しかも怒られてしまい戸惑うフィービー。
「な、何で怒ってるの…?わ、私は…リュカの事を尊敬して描いたのよ!?バカになんてしてないわ!」
訳も解らず怒られ、涙目になる少女…

「………分かった…説明するから座りなさい」
流石のリュカも、フィービーに泣かれたじろいだ。
何処ぞのバカ男が、商魂フルスロットルで描き上げた物だったら、リュカもたじろぐことなく怒鳴り散らしたのだが、相手が見知った可愛い少女で泣き出してしまったとなると、頭ごなしに怒鳴る事も出来ず、ちょっとだけ竜頭蛇尾な感じである。



 
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