おっちょこちょいのかよちゃん
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282 失われていく物
前書き
《前回》
かよ子やありは紂王の遊女および近衛兵の対処に苦心しながらも藤木を探し続ける。大野達は藤木とりえをあと一歩の所で取り戻せると思ったところで妲己に妨害されてしまった。りえと共に逃げようとする藤木は濃藤、北勢田、奏子に追いつかれてしまう。そしてりえに「私を守りたいなら今ここで降ろせ」と言われて藤木はりえを守る為ならここで彼女を鳳凰から降ろし、奏子達に渡す事を決める。そして自分はそのまま逃げようとするが、その場にはレーニンが!!
警官である椎名と関根、大阪の高校生・鎌山と立家、そして項羽に虞美人の軍がかよ子達とは別行動でりえや藤木を捜索していた。
「どうやら大野君達が藤木君を見たようだが、取り逃がしてしまったようだな」
「よし、ワイらも探すで!」
全員捜索に動く。ところがその時、屋敷の兵士達とばったり会った。
「侵入者か!排除させて貰う!」
「何!?」
関根は速攻で薙ぎ払うべく、忠治の刀を振るう。多くの兵士が金縛りにあったように動かなくなった。
「今だよ、皆!」
「はい!」
立家が駒爪で電撃を放つ。兵士が次々と倒された。但し、今まで光と化して消えるのではなく、煙のように溶けて消えていった。
「こいつら!」
残った兵士が槍で衝撃波を放つ。
「おっと、させんぞ!」
項羽が地面を爆破させて防御した。その余波が兵士達にも及ぶ。だが、援軍がまた椎名達を包囲した。
「キリがねえな!」
椎名は水の玉で大波を出して兵達を溺れさせた。兵を追い払った所で皆は移動した。
「他の所へ移動するぞ!」
「おう!」
かよ子は藤木の捜索を続ける。
「藤木君とりえちゃん、多分一緒にいるはずだよね・・・?」
「そこまで分からないけど、もしかしたら私達を撒く為に別々に行動させてるかもしれないわ」
ありは推察した。と、その時、皆の所に悠一のテクンカネで召喚した景勝と兼続が戻って来た。
「申し上げる!只今杯の所有者、藤木茂と共に妲己の手引で逃走中!新たな情報は!?」
「い、いま、まるちゃん達が見たけど逃げられたって!」
「解った!こちらもまた周囲を・・・」
と、その時、また別の兵士や女性が包囲した。そして一人の男が現れた。
「ほう、小娘、貴様が杖の所有者だな」
「だ、誰!?」
「我が名は紂王。この屋敷の主で殷の帝王として生きた者だ」
「山田かよ子!この者は危険だ!用心せよ!!」
「う、うん!!」
紂王が剣を出した。かよ子やあり、悠一の武装の能力で防御したが、恐らく自分達の胴を切断するつもりだと思った。
「その能力、厄介な物だな!」
「山田かよ子、奴は能力を無効化する気だ!」
「解った!なら!!」
かよ子は杖を構えた。白魔術の能力を作動させる。
「私の白魔術で何もできなくさせるよ!」
かよ子は白魔術が紂王に通用する事を願った。
濃藤、北勢田、奏子が威圧の能力で気絶しかける。それは戦争を正義とする世界の長・レーニンだった。
「あ、貴方はっ・・・!!杉山君っ!!」
「同体化している小僧の名で呼んでいるのか」
「アンタっ、私やこのお兄さんやお姉さんを殺す気っ!?」
「その通りだ。何しろ私にとってこの者達は邪魔者だからな」
そしてレーニンの姿が変わる。
「さあ、藤木、お前はどうすんだ!?このままこいつを連れて山田かよ子達のとこに戻って元の世界に帰るか、それともそのまま逃げるのか?」
「う・・・、僕は・・・」
藤木はまた迷う。
(本当に僕がりえちゃんを守りたいなら、りえちゃんの為に何ができるのか・・・)
藤木はりえが嫌がる様を思い出した。スケートをしに行った時まではあんなに自分を好いていたのに急に愛想を尽かされたのは理解できなかったが、そんなにりえが嫌がっているのなら・・・。
(僕はどれだけ人を好きになっても嫌われるんだ、卑怯者だって・・・。りえちゃんも、笹山さんも、僕から・・・)
ふと藤木は笹山の事を思い出した。一度自分の事を許して迎えに来たそうだが、自分は拒絶した。今からでもやり直せる事はできるのか。
「おい、さっさと決めろよ。どっちの側に付くんだよ?」
「僕は・・・」
(もういいんだ、笹山さんも、りえちゃんも、皆僕から離れていくんだ・・・)
藤木は失恋の連続なら仕方ないと思う。
「・・・りえちゃんはこの人達に渡すよ」
「えっ!?」
りえは藤木が潔く自分の頼みを聞いた事に少し驚いた。
(もしかして藤木君、解ってくれたのっ!?)
りえはそう思った。それなら自分や彼を捜している山田かよ子達にも都合がよいと思っていた。
「その代わり、僕はこのまま逃げさせて貰うよ!」
「・・・えっ!?」
「僕は誰が連れ返しに来たって帰らないぞ!」
「・・・そうか」
杉山は藤木の決意の固さを知った。その時、妲己が近づいた。
「ん?これは、レーニン様!」
レーニンの姿に戻る。
「妲己か。この小僧を連れて逃げよ。そしてこの小娘は私が引き取ろう」
「はい。坊や、おいで」
「はい」
藤木は妲己と共に行く。
「それでは、消えよ!」
レーニンは高校生三人の抹殺および彼等の道具の能力の吸い取りを行おうとした。
「よし、この者らの能力を取ったぞ・・・」
そして殺害しようとしたその時・・・。
「やめてえ!!」
何処からか火炎放射が放たれた。武装の能力と奏子の羽衣から吸い取った防御能力で跳ね返した。
「力を蓄えたな、レーニン」
「貴様ら、追いついたのか!!」
そこには三河口、湘木、冬田が現れた。
「あ、りえちゃあん!!」
「冬田さんっ!」
「その子を離してもらおうか」
「できるものならやってみるがいい!」
三河口は鎖鉄球を振り回して飛行した。
「もうその術は見破り済だぞ!」
レーニンは放電した。
(北勢田の矛の能力だな!!)
「湘木!」
三河口は先の行動を読んだ。恐らく自分達を電撃で戦闘不能にすると。
「おう!」
呼ばれた湘木は斧を振り回し、木の枝を出現させた。
「ふ、そんなもの!」
だが、電撃が効かない。
「これはゴムの木だ!電気は通さねえぞ」
湘木が説明した。
「くう!」
「仕方ねえ、りえを連れて撤退するぞ!」
「何!?」
レーニン及び杉山は杉山の声でそう告げるとりえを連れて逃げようとする。だが、三河口は鎖鉄球をレーニンに巻き付けた。そして威圧の能力と武装の能力を鎖鉄球に流し込んだ。
「小僧!」
レーニンは怒りに任せて武装の能力で鎖鉄球を外そうとする。
「冬田さん!」
「は、はあい!」
冬田は蔓を出して更にレーニンを拘束しようとた。
「させるか!」
レーニンは武装の能力で蔓を弾いた。更には瞬間移動して鎖鉄球の巻付きから自身を解放させた。
「な!」
「貴様らに構っている暇はない!」
「ちょっとっ!放しなさいよっ!」
りえは武装の能力でレーニンを落とそうとするが、意味はなく、そのまま連れて行かれた。
「追うぞ!」
「ああ!」
三人は戦争主義の世界の長であり、大将を目指す少年を追った。
「ちょっと待ってえ!」
冬田が止めた。
「このお兄さんとお姉さん達はどうするのお!?」
三河口はレーニンによって気絶させられた同級生達を見る。
「ああ、そうだったな」
三河口はレーニンとの戦いに夢中になっている己を反省した。
「濃藤、北勢田、奏子ちゃん!!」
三河口は三人を起こした。
「・・・、はっ、ミカワ!湘木!」
「三河口君!」
「お前も来てくれたのか!」
「ああ、今レーニンが来てお前らを気絶させた。だが、お前達の道具の能力を吸い取って強化されてしまったんだ。それからりえちゃんもその場から連れ去っちまったよ」
「ちっ、俺達とした事が・・・」
北勢田は悔しがった。
「いや、俺のしくじりでもある。少なくとも、かよちゃん達が探している藤木ってガキも一緒だった事は間違いない。北勢田の知り合いの長山治君だっけ?彼にレーニン、いや、杉山君の動向を探って行方を追った方がいいと思う」
「ああ、そうしてみるよ」
「三河口君はどうするの?」
「そうだな、藤木を連れて逃げた狐もレーニンも追いかけたいが、杯の行方を知っているのは狐の方だろう、そっちを狙うよ。りえちゃんの方は君達の役目だからありちゃん達と合流したらまた追ってくれるか?」
「ああ」
「それじゃ、俺達は失礼するよ」
三河口は湘木。冬田と共に去った。
かよ子の白魔術が紂王を攻撃する。
「これは、強力な・・・!!」
紂王は白魔術に苦しんだ。
「行くよ!」
かよ子は杖を剣に変化させ、紂王を斬り込みにかかった。
「某も行くぞ!」
次郎長もまた飛び掛かる。
「終わりだよ!」
「くう・・・!!」
だが、その時、何かがかよ子達の攻撃を阻んだ。
「え、何、これ!?」
見えない壁だった。
「紂王様、お怪我は!?」
「妲己か、私は無事だ。しかし、杖の所有者は手強い」
「ほう、お前が、また会ったな・・・」
「あ、この人は・・・!!」
かよ子はこの女を見た事があった。嘗てりえを連れ去った女である。そして一緒にいるのは・・・。
「藤木君!?」
「山田かよ子・・・?」
藤木は自分のクラスメイトとまた再開する事に不穏さを感じた。
「ここにいたんだね。一緒に帰ろうよ。笹山さんだって心配してるよ!」
(笹山さん・・・)
藤木は嘗て好きな女子には夕方会ったばかりだった。その為、次々とクラスメイトが現れては自分を元の世界に引きずり戻そうとする事の連続になるばかりとなっていた。
(なんで僕にそんな事ばっかりさせるんだ・・・!!)
藤木は歯を噛み締める。
「僕は、帰らないぞ!」
「・・・え?」
後書き
次回は・・・
「羨望心の芽生え」
藤木を追う大野達だったが、まる子と友蔵が疲れたと呆れて二人を置いて行く。藤木と相対したかよ子だったが、藤木の戻りたくないという意志は強く、妲己や紂王、更には遊女達の妨害で藤木はまた逃げる事に。だが、野良犬と遭遇した時を思い出して藤木は自分を逃がして犠牲になる遊女達を見て何かを思う・・・・!!
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