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おっちょこちょいのかよちゃん

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280 屋敷の襲撃

 
前書き
《前回》
 あり達は紂王の屋敷に辿り着き、りえの奪還として侵攻を開始した。レーニンおよび杉山と交戦する現場に到着したかよ子は早速杖を使用する。白魔術の能力(ちから)を得た攻撃はレーニンや杉山でも驚かされる。そして大野は嘗て杉山の物だった雷の石を見せる。杉山は大野に対して喧嘩しながらも親友としての何かを感じる・・・!! 

 
 りえは藤木に本音をぶちまけて泣かせた事で妲己の怒りを買う事になっていた。しかし、何かが騒がしい音が聞こえて二人共錯乱した。窓から確認してみると、アイヌの神、カムイがいた。
(ありさんが来てるんだっ・・・!!)
 りえは思い切り手を振った。
「私、ここよっ!!」
「この女!」
 妲己は九尾の狐に変化する。
(はっ・・・)
 りえはやられると思った。だが、この状況なら異能の能力(ちから)を発揮できるチャンスだと思った。
「うぐっ!」
 妲己が跳ね飛ばされた。これはりえの武装の能力(ちから)だと察した。
「この小娘が!」
 妲己は怒り、炎を吹いた。りえを焼くつもりだった。

 かよ子の杖から白魔術の能力(ちから)で強化された電撃がレーニンを襲う。但し杉山を犠牲にする事からか致死レベルまでは与えずに手加減はしていた。
「頑張れ、かよちゃん!」
「おお、凄いぞ~」
 まる子と友蔵がかよ子を応援した。だがその時、遠くからざわめきが聞こえた。
「え、何!?」
 皆は慌てた。よく見たら遠くから煙が立ち上がっている。その方角は奇しくも緑色の光が示す方角だった。
「あれって・・・!?」
「藤木がいる所の屋敷だぞ」
「ええ!?」
 かよ子は驚いて光の方角を向いた。そのせいで集中力が途切れて電撃が消えてしまった。
「あ、私の攻撃が!」
 その時、レーニンが杉山の姿に変わった。
「ワリいな、生憎だが俺もそこへ行かせてくれよ」
 杉山は立ち去ろうとした。だが、足に何かが巻き付いた。
「行かすか。お前は俺が相手してやる。それにそのまま立ち去って大将になったつもりか?」
 三河口が鎖鉄球で足止めした。
「かよちゃん、皆でその藤木君ってとこに行け!」
「え?」
「こいつは俺が相手する。それとも獲物を逃がすなんておっちょこちょいする気か?」
「山田かよ子、三河口健の言う通りだ!急ぐぞ!」
 石松が促した。
「うん!」
 かよ子は藤木救出班に次郎長一派の皆と共に藤木がいる場所へと急いだ。
「大野くうん・・・。私もお!」
「君はこっちにいろ!」
 冬田も大野について行こうとしたが、三河口に制止された。
「おい、俺も行かせてくれよ」
「なら俺を倒してからにしろよ、臆病者」
「な・・・!!」
 杉山は胸糞悪く思う。臆病者。これは嘗て夏休みに杯の所有者の女子から言われた言葉であり、秘密基地の前の丘の上での決闘でも三河口から言われた言葉でもある。
「俺は、臆病者じゃねえええ!!!」
 杉山の武装の能力(ちから)が発動した。鎖が彼の足から外れた。三河口がもう一度鎖鉄球を投げ、湘木が斧で蔓を出して杉山を足止めしようとする。しかし、杉山の武装の能力(ちから)が発動される。
「あっちの方向だな!」
 杉山は高速でかよ子達と同じ方角へと向かった。
「行っちまったか・・・」
「いや、向こうで戦いが始まったってんならこっちにも都合がいいかもしれん。俺達も行こう」
 三河口は湘木、冬田と共にレーニンと杉山を追い始めた。
(向こうにも何かよく知る気配がするんだ・・・)
 三河口はそのような気配を見聞の能力(ちから)で感じ取っていた。
(藤木ってのが向こうにいるって事はおそらく・・・!!)

 藤木は屋敷の異変により遊女や中央と共に逃げる準備をする。
「茂様、早く、馬車にお乗りになって下さい!」
「あ、うん・・・」
 藤木はふと先ほどりえから色々と冷たい態度を取られて部屋を出て行ってしまった事を思い出す。
(りえちゃん・・・)
 藤木は気になった。これでいいのか。
(そうだ、それでも僕は、りえちゃんを守るんじゃなかったのか・・・。これで見捨てるなんて、僕は本当の卑怯者だ・・・)
 藤木は屋敷の内部へと引き返す。
「茂様、どちらへ行かれるのですか!?」
「僕、ちょっとトイレ!」
 藤木は猛ダッシュした。

 りえは九尾の狐に変化した妲己の炎撃で焼かれそうになった。りえの武装の能力(ちから)は攻撃寄りの為、防御する才覚はない。
(う、杯があればっ・・・!!)
 その時、窓や壁が鎌鼬で破壊された。
「な・・・!?」
 妲己はその破壊された壁から二人の男が現れた。いかにも戦国武将のような姿をしている。
「お主、杯の所有者か?」
「は、はいっ!」
「お前らは何だ!?」
「杯の所有者の奪還に協力する者」
(あの者達来てたのか・・・!!)
 その時、その武将の片方がりえを連れて行こうとした。
「さあ、この兼続があなたの仲間の所へ・・・」
「行かせるか!」
 妲己は妖術を掛ける。兼続からりえがみえなくなった。
「あれ、所有者!?どこだ!?」
 兼続は見回す。
「えっ、どうしてっ!?ここにいるじゃないっ!!」
 りえは大声で叫んだ。だが妲己が掛けた妖術はこの二人の武将からは全く見えず、声も聞こえないようにさせる術だった。
「貴様、一体何をした!?」
「さて、さっさと・・・」
 その時、乱暴に扉が開けられた。
「りえちゃん!!」
「ふ、藤木君っ!?」
「今のうちに逃げよう!変な奴等に襲われ・・・」
 藤木は言う途中で正面を見た。その場に見慣れぬ者が二名いた。
「だ、誰だ!?」
「和が名は景勝。貴様は行方不明の者か!」
「な、何の事ですか?」
「坊や、逃げるのだ!」
「あ、はい、行こう、りえちゃん!」
「や、やめてっ!」
 りえは嫌がった。
「僕は、君に嫌われたっていい・・・。でも、僕は君を守るって決めたんだ!!」
 りえはその言葉に動揺した。妲己は妖術で大量の岩を出した。
「な・・・!!兼続、この部屋から退却だ!他の方向から当たるぞ!」
「おう!」
 景勝、兼続は一先ず撤退した。

 かよ子達は藤木がいると思われる屋敷に突入した。
「ふ、藤木くーん!!」
 かよ子は兎に角叫んだ。しかし、爆音などで掻き消されてなかなか届かない。
「ん、あそこにいるのは俺達の仲間の気配がするぞ・・・」
 関根は見聞の能力(ちから)で読み取った。
「行ってみよう・・・!!」
 かよ子達は羽根を飛ばした。
「あ、お姉さん達・・・!!」
 彼女らは隣の家のおばさんの次女とその旦那、そして三河口の友人や大阪の高校生達だった。
「あれ、かよちゃん!」
 あり達も藤木救出班の姿に気付いた。
「君達と同じ方向だったか」
「うん・・・、りえちゃんもここにいるの!?」
「そう思うんだ。俺の剣が光っているんだ」
 濃藤が剣を見せた。
「兎に角、ここらの屋敷の奴らを倒さへんと話にならんで!」
 大阪の高校生、立家隆太が告げた。
「よし、共同でそれぞれの探し人を見つけるのだ」
 シャクシャインが案じた。
「うん!」
 かよ子達は本来の作業を開始した。

 妲己は藤木、りえと急いで撤退する。
(くう、この小娘をさっさと始末したかったのに・・・)
 妲己はまさか途中で侵入者および藤木が介入して来た事が気に食わなかった。その時、通信用のトランシーバーが鳴る。
「はい、こちら妲己」
『こちらレーニンだ。紂王の屋敷が襲われているそうだが、無事なのか!?』
「はい、しかし、今杯の所有者と藤木茂少年を連れています」
『そうか』
 レーニンの声が杉山に変わった。
「はい?」
『どっちも必ず生かしておけ。殺したら許さねえからな』
「え?あ、はい・・・!!」
『全く、まあよい。兎に角、何とか脱出して別の場所へ避難するのだ』
「はい、畏まりました」
 通信を終了させた。
「坊や、安藤りえ嬢に嫌われたのにいいのか?」
「はい、それでも僕はりえちゃんを守るって決めましたから・・・」
「そうか・・・」
 その時、巨大な大波が襲って来た。
「な!」
「り、りえちゃん!急ごう!」
「えっ!?」
「あ、あれは藤木かブー!?」
 聞き覚えのある声だった。
(この声は、富田君!?)
「りえちゃんも一緒だよ!」
「よし、仕留めるぞ!」
 りえは徹底的に藤木を振り切ろうとした。
「りえちゃん・・・」
「私、ここよっ!!藤木君もいるわっ!!」
 りえは逃げた。
(りえちゃん、そんな・・・)
 藤木はやはり自分の約束を守り抜こうとしてもりえから愛想を尽かされたままである事は解っていた。だがここまで拒絶するのか。
「茂様!!」
「早く逃げてください!」
 遊女が走り寄って来た。
「あ、う、うん!!」
「妲己様、私達も加勢します!」
「ありがとう、この者を連れて行け!」
「はい!」
 遊女の一人がりえを捕まえようとする。しかし、りえの武装の能力(ちから)で遊女が弾き飛ばされた。べつの遊女がどこからか鞭を出してりえを拘束した。
「させねえよ!」
 大きな蔓が鞭に巻き付いた。
「おい、大丈夫か!?」
「大野君っ!まるちゃんにブー太郎君もっ!!」
「今助けてやる!」
「そうはいかないよ!」
 妲己が九尾の狐の姿で迎撃する。火炎放射だった。
「うわあ!」
「オイラがやるブー!」
 ブー太郎の水の石で炎を消火する。
「某もいるぞ!」
 大政が槍を投げた。槍が巨大化し、妲己の腹部を貫通しようとした。
「妲己様!」
 遊女が楯になって妲己の守備に付いた。しかし、反撃の余地を与えらえず、遊女に槍が刺さって消えた。しかし、今までの人間が光と化したのと異なり、煙が上がって消えた。
「ふ、ここの遊女は我が妖術で出したものさ」
 りえがまる子達の元へ向かおうとする。しかし、妲己が火炎放射を仕掛けた。
「りえちゃん!!」
「まずいぞ、燃えてしまうぞ!!」
 友蔵は大慌てした。 
 

 
後書き
次回は・・・
「妖術を打ち破れ」
 藤木を探すかよ子とりえを探すありと悠一は紂王の屋敷を回り続ける。藤木とりえの姿を見たまる子や大野、ブー太郎達は妲己の妖術によって妨害され、上手く奪還できない。藤木は嫌われてでも守ると決心した為、りえを連れて逃げようとするのだが、りえにある事を言われて悩み・・・!? 
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