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英雄伝説~西風の絶剣~

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第78話 灼熱の洞窟

 
前書き
 今回別のゲームのモンスターが出ます。 

 
side:フィー


 地震を人為的に起こしていたことが分かりそれの発生場所を突き止めたわたし達はエルモ村に向かっていた。


 エマも同行を認められたらしく合流してキリカに状況を説明してトラット平原道を急ぐ。


「着いたわ、エルモ村に来るのも久しぶりね」


 以前エルモ村に来たことのあるエステルがそう呟いた。こんな状況じゃなければまた温泉に入りたいところだね。


「ああ、よく来てくれたね」
「あっ、マオおばあちゃん!」


 そこに以前出会った紅葉亭の女将であるマオが現れてわたし達を出迎えてくれた。


「久しいね、あんた達。元気にしていたかい?」
「うん、元気だけが取り柄だからね」
「本当ならゆっくり話をしたいんだけどそうも言ってられないみたいだね。中央工房から連絡は受けているよ、なんでも最近ツァイスで起こっている地震の原因がエルモ村の近くにあるそうじゃないかい。本当なのかい?」
「うん、可能性は高いと思うわ。ねえマオさん、ここ最近で怪しい男を見かけなかった?黒いスーツを着てサングラスっていう眼鏡をかけてるらしいんだけど……」


 エステルはマオに怪しい男を見ていないか確認した。目撃情報にあった男だね。


「怪しい男は見ていないねぇ、少なくとも宿には来ていないと思うよ」
「そっか……」
「ただそれと関係があるかは分からないけど異常事態が起こってしまったんだ」
「異常事態?」
「百聞は一見に如かずさ、直接見ておくれ」


 わたし達はマオに案内されて村の中央にある湯に来たけど……


「な、なにこれ!?」
「煮えたぎっちゃってる……」


 そう、湯は目で見てわかるくらいに煮えたぎっていた。ブクブクと気泡を浮かべてまるでマグマみたいだ。


「一体どうしたんだ?」
「私にも分からないんだよ、ポンプ装置も正常に動いていたから機械の誤作動ではないね」
「じゃあこれは機械ではなく源泉の温度が上がったんじゃないかな?」


 アガットがなぜこうなったのかをマオに確認するが分からないらしい。機械も壊れている訳じゃないので原因は原潜の温度が上がったのではないかとオリビエは話した。


「多分ですけど地震が関係しているのではないでしょうか」
「なるほど、地震を発生させる為に七耀脈の流れをイジった事で活性化して源泉の温度を上げたのかもしれないな」


 クローゼの指摘にリィンも同意した。七耀脈が活性化したから源泉の温度も上がったってこと?難しいことはよく分かんないや。


「地震が起こるたびにこうなったのか?」
「いや今日が初めてさ、今まではこんなことはなかった」
「じゃあどうして今日はこんな風になっちゃったんだろう?」


 アガットは地震が起こるたびにこうなったのかと聞くがマオは首を横に振った。ティータの言う通りなんでいきなりこうなったんだろう?


「……なるほど」
「エマ、何か分かったのか?」
「はい、私はある程度七耀脈の強さが分かるのですが今までにないくらい活性化しています。多分皆さんが話していた局地的な地震を起こすための力が集まっているんだと思います」


 エマは七耀脈の力が活性化していると話した。


「あくまで憶測ですけどもしこれ程高まった力が地震を起こしたら大災害になる可能性があります」
「そんな……じゃあ早く止めないと!」


 エマの言葉にエステルだけでなく全員が顔を青くしてしまった。そんな災害は起こさせちゃ駄目だ、絶対に阻止しないと。


「源泉の温度が上がったって事は地震を起こしている奴はそこにいるんじゃないの?」
「あり得ると思います。ねえおばあちゃん、源泉ってどこにあるの?」


 アネラスの言葉にティータも同意してマオに源泉の場所を訪ねた。


「源泉は村の側にある洞窟の奥だよ、危険な場所だから普段は入り口を閉めているんだけど……」
「とにかく行ってみましょう!」


 わたし達はエルモ温泉の源泉が湧く洞窟に向かった。


―――――――――

――――――

―――


「な、なによこれ!?」


 洞窟に着いたわたし達が見たのはまるで火事のように湯気を入り口から出している異常な光景だった。


「入り口でこんなにも湯気が発生してるなんて……中は一体どんな温度になってるんだ?」
「少なくともこのまま入るのは危険ですね……」


 リィンの言う通り入り口でこんなに湯気が出てるって事は中は熱湯と高温で埋め尽くされている可能性がある。


 クローゼの言う通りこのまま入ったら大火傷をしてしまうかもしれない。


「ちっ、思ってた以上に危険かもしれねえな。一度村に戻ってギルドに連絡を……」


 その時だった、なにか鈴のようなものが鳴る音がしてそれを聞いたティータとクローゼが倒れそうになった。


「クローゼさん!?」
「ティータ!どうした!?」


 二人の近くにいたリィンとアガットが二人を支える。でもその二人も膝をついてしまった。


「まずい、これは……」
「罠……」


 ラウラやオリビエも膝をついてしまう。わたしは急いで状態異常を回復するアイテムを出そうとしたが急に強烈な睡魔に襲われて同じように膝をついた。


(だ、駄目だ……)


 そしてわたしの意識は暗い闇の中へと消えていった……



―――――――――

――――――

―――


「……ん、ここは?」


 目を覚ましたわたしはゆっくりを身を起こした。


 さっきまで外にいたはずなのに辺りは暗い、わたしは瞳孔を自分の意志で大きくして夜目を人為的に作った。


 これは西風の旅団で行う特訓でいつでも夜目に切り替えれるように訓練してるんだ。


「……武器はあるね」


 双剣銃も導力器も無事だった。敵の狙いが分からない。


「とにかく誰かと合流しないと……」


 辺りにはわたししか気配を感じない、誰かいないか探す為に先を進むことにした。


 とりあえず行けそうな場所を進んでいると地中から爬虫類の子供みたいな魔獣が出てきた。バトルスコープで確認するとベビードドンゴと出てきた。


「あんまり強くなさそう……無視しちゃお」


 相手にするのが面倒だったのでジャンプで回避した。すると必死によちよちと追いかけてきた。


「……」


 見た目は可愛いけど相手は魔獣、相手をしないでさっさと先を進むと行き止まりだった。


「あれ、ここ以外に行ける場所ないよね?」


 ここまでは一本道だったから見逃したはずはない、よく見ると壁にはヒビが入っていて壊せそうだ。


「壊せそうだし手榴弾の出番だね」


 わたしは手榴弾を取り出して安全ピンを抜いて壁に投げつけた。そして大きな爆発音と共に壁が壊れた。


「ん、オッケーだね」


 そのまま先に進もうとすると後ろから何かが襲い掛かってきたので回避する。それはさっきの魔獣だった。


「数増えてる……」


 さっきよりも数体数が増えていた。仲間を集めたのかな?


「ん、邪魔だしやっつけちゃうか」


 さっきは無視したけどまた襲われても厄介だしわたしは双剣銃を抜いて構えた。するとベビードドンゴは一斉に泣き出した。


「うるさ……」


 威嚇してるのかな?見た目は可愛くても声は可愛くなかった。さっさとやっつけてやろうと思ったその時だった。地面が割れてそこから何かが噛みついてきた。


 わたしは咄嗟にジャンプしてそれを回避する。現れたのはベビードドンゴが大きくなったような魔獣だった。


「ドドンゴ……そのまんまだね」


 バトルスコープで魔獣の情報を解析する。どうやら水属性のアーツに弱いみたいだね、後口の中や尻尾は柔らかくて狙うならそこが良いみたい。


 わたしは火球を吐いてきたドドンゴの口に目掛けて銃弾をお見舞いした。情報通りそこが弱かったドドンゴは痛みで悲鳴を上げた。


「これでも食べてて」


 わたしは襲い掛かってきたベビードドンゴを双剣銃で切り裂いてドドンゴの口に目掛けて蹴り飛ばした。口をふさがれたドドンゴは炎を吐けずに苦しんでいる。


「これでとどめ!」


 わたしはアーツを発動して『ブルーインパクト』を放った。高圧の水がドドンゴの体内を貫いて尻尾から噴き出した。


「ん、いっちょ上がりだね」


 セピスに変わった魔獣を見て一息つくわたし、すると奥の方から何か戦闘音が聞こえた。


「誰かいるのかな、行ってみよう」


 わたしは音がした方に直ぐ向かってみる。するとそこにはさっきよりも大きなドドンゴがティータとエステルとクローゼに襲い掛かってるのが見えた。


「ふっ!」


 わたしは閃光手榴弾を投げつけて大きなドドンゴの目を眩ませた。


「フィー!」
「皆、こっちに来て!」


 わたしはエステル達にこっちに逃げるように指示をする。エステルはティータを抱っこするとクローゼと一緒に走ってきた。


「フィー!無事だったのね!」
「再会を喜ぶのは後。あれは何?」
「バトルスコープで見たけど『キングドドンゴ』っていうらしいわ!硬くて攻撃もアーツも通用しないのよ!」
「なら逃げるが勝ちだね、急ぐよ!」


 後ろからキングドドンゴが身体を丸めてまるで大きな岩石のように転がって襲い掛かってきた。あんなのに潰されたら一巻の終わりだ。


「はぁはぁ……しつこいわね!」
「わ、わたし……もう限界です……!」


 私達と違ってあくまでただの学生でしかないクローゼはもう体力に限界が来たようだった。


「ん、あそこまで頑張って!」


 すると先に広い空間が広がっていた。大きな橋のような岩の下は真っ暗な暗闇でなにも見えない。


 わたしは殿を務めると双銃剣を抜いてスカッドリッパーを放った。硬い外殻に弾かれてしまったがキングドドンゴの動きを止める事には成功した。


 キングドドンゴは口を開き炎を吐こうとする。


「弱点は知ってる」


 わたしは手榴弾を三個奴の口の中に放り投げた。口内で大きな爆発を起こされたキングドドンゴは怯んでダウンする。


「エステル!」
「任せて!『ダークマター』!!」


 わたしの合図と共にエステルの放ったアーツが超重力を生み出した。キングドドンゴの乗っていた足場にヒビが入る。


「『ストーンインパクト』!!」


 さらに追い打ちとしてティータが放ったストーンインパクトがキングドドンゴの頭上から落ちてきて奴の脳天に直撃した。


 その衝撃もあってか岩が崩れてキングドドンゴと一緒に下に落ちていった。わたしも落ちそうになるがワイヤーを伸ばして難を逃れる。


「よし」


 奴が落ちていったのを確認するとワイヤーを登ってエステル達と合流する。


「フィーさん、ご無事で何よりです……!」
「ん、クローゼも無事で良かった。ここにいるのは三人だけ?」
「うん、そうだよ。私はエステルお姉ちゃんとクローゼさんと一緒に目を覚ましたの。アガットさん達は一緒じゃないの?」
「わたしは一人だった。皆分断されてるみたいだね」


 クローゼと再会できたことを喜び合い情報を交換した。ティータの話ではこの三人は最初から一緒にいたみたいだね。


「あたし達を眠らせたのって結社の奴よね?なんで武器を奪ったりしなかったんだろう?」
「それは分からない、何か目的があるのかもしれない」
「とにかくまずは皆と合流しないとね。先を進みましょう」


 三人と合流で来たわたしは一緒に他のメンバーを探すことにした。みんな無事だと良いんだけど……


 そこからまた先を進んでいくとマグマが煮えたぎる広い場所に出た。


「ええっ!?なによこれ!」
「マグマ?どうしてこんなものが……」


 エステルとティータは凄く驚いていた。わたしもマグマを実際に見たのは初めてだ。


「ここは本当にリベール王国なのでしょうか?マグマが湧きだす場所なんて聞いたことがありません」
「とにかく進まないことには始まらない、危険だけど行くしかないよ」
「そうね、ここにいたって仕方ないし先を進みましょう」


 クローゼはここがリベール王国なのかと疑問に思っているみたいだ。確かにいきなりこんな危険地帯に連れてこられたら場所がどこなのか気になるよね。


 でも先を進まないことには事態は進展しない、わたしがそう言うとエステルも同意した。注意して先を進もう。


「あうう……落ちたらひとたまりもないよ」
「足を踏み外さないように気を付けて行きましょう」


 洞窟の下には真っ赤な溶岩が広がっていて堕ちたら骨も残らないね、ティータやクローゼが落ちないように気を付けておかないと。


 不安定な道を進んでいくとまた魔獣が出てきた。タコみたいな見た目をした溶岩を吐き出す魔獣だ。


「フィー、片づけるわよ!」
「ヤー!」


 クローゼ達を後ろに下げて魔獣と戦闘を開始した。タコの魔獣は『オクタコン』といって宙を高速で動きながら炎を吐いてきた。


 わたしはシルフィードダンスで範囲攻撃をするが直ぐに別の奴が湧いて出てくる。


「こいつら、数が多い!」
「やっかいね!」


 こうも数が多いと二人を守りながらだとジリ貧になっちゃうね。魔獣たちは一斉にわたし達に炎を吐きかけてきた。


「ファイナルブレイク!」


 するとそこに巨大な衝撃波が飛んできて魔獣達を吹っ飛ばした。このクラフトは……


「アガットさん!」
「待たせたな、暴れるぜ!」


 見慣れた赤髪が目の前に跳んできてティータの前にいた魔獣を大剣で吹っ飛ばした。


「奥義、『獅子洸翔斬』!!」


 さらに獅子の闘気を纏い強力な斬撃が放たれて魔獣たちを消し去った。


「ラウラ、ありがとう」
「ふふっ、礼には及ばんさ」


 ラウラも駆けつけてくれた、これでもう怖いものなしだね。


「一気に肩を付けるぞ!」
「ああ、いくぞ!」


 アガットとラウラが来てくれたおかげで魔獣の群れをやっつけることが出来た。ティータ達にも怪我はないし完璧だね。


「ラウラ、無事で良かった」
「うん、そなたも無事で何よりだ」


 ラウラと再会のハグをかわした。まあラウラなら心配ないって思ってたけどね。


「アガットさーん!」
「うおっ!?」


 ティータもアガットに会えて嬉しかったのか抱き着いた。


「アガット、アンタたちは二人だけなの?」
「ああ、俺が合流できたのはアルゼイドだけだった」
「そなた達は4人だけか?」
「うん、他のメンバーはまだ見つかっていない」


 エステルがそう確認するとアガットはラウラとしか合流していないと答えた。逆にラウラはわたし達だけかと聞いてきたので頷いた。


「心配だな、ここが何処なのかも分からないし魔獣も多い。リィン達も一緒にいてくれればいいが……」
「とにかく先を進もう、リィンやオリビエ達は強いからだいじょーぶだよ、どっちかっていうとエマが心配……」
「確かにエマの実力は知らぬからな、彼女を先に探し出せればよいが……」


 リィン達は心配ないけどエマが心配、魔術を使える事は知っていても実際の強さは見ていないからね。


 キリカが認めた以上問題は無いと思うけどこんな事態まで予想してはいなかっただろうし合流は早めにしたい。


 そこからはアガットやラウラをパーティに入れて先を目指した。


「しっかしなんだってんだここは?源泉が湧く洞窟に入ろうとしたらマグマが湧きだす危険地帯にいた……どう考えても結社の仕業だろうがこんな短期間に俺達を別の場所に移動させたっていうのかよ?」
「ん、わたしとリィンもエレボニア帝国からいきなりリベール王国に連れてこられた。結社がそういう力を持っていてもおかしくない」


 アガットの言葉にわたしはエレボニアにいたのにリベールにいつの間にかいたという自分の経験を語った。


「でも仮に結社の仕業だとしたらどうして彼らは私達をこんな場所に連れてきたのでしょうか?」
「確実に地震を起こす為に私達が邪魔できないようにしたかったのではないか?」
「もしそうだとしたら早くここから出ないと!ツァイスが滅茶苦茶になってしまうわ!」


 クローゼはなぜ自分達をここに連れてきたのかと言うとラウラが結社はわたし達が邪魔をしないようにそうしたんじゃないかと答える。


 それを聞いたエステルは早く脱出しないとと慌てて言った。


(……本当にそうかな?)


 確かにその可能性もあるけどでもそれならクーデターとか幽霊事件は何のために行ったんだろう?


 結社の動きには一貫性がない、もしリベールの壊滅を目論んでいるならあんな派手な事をしていないでさっさと地震を起こせばいいだけじゃ……


(……情報が少なすぎる。今は憶測で考えるよりも仲間と合流して脱出するのが先だね)


 わたしは今ここで色々考えても意味は無いと結論して兎に角ここから脱出することを優先することにした。


 そこから先に進むと小さな足場がいくつも並んだ地帯に着いた。ここからはこれを飛び移っていかないと先に行けないね。


「うう……ここを進むの?」
「わたし達では進めないですね……」


 ティータとクローゼではこの幅を飛び越えるのは無理だろう。


「しかたねぇ、ティータは俺が担いでいく」
「なら私はクローゼ殿をお連れしよう」


 アガットとラウラの力自慢に二人を運んでもらうしかないね。ラウラはクローゼをお姫様抱っこしてアガットはティータを担いだ。


「あ、あのアガットさん……」
「なんだ?」
「私もあんな風に抱っこしてほしいかな~って……」
「はぁ?別にあんな抱き方しなくてもいいだろうが」
「うぅ、でもぉ……」



 どうやらティータはお姫様抱っこをしてほしいみたいだけど鈍感なアガットはそれが分からないらしい。


「してあげなさいよ、アガット。別に減るもんじゃないんだから」
「ふざけんな、両手がふさがっちまうだろうが」
「でも片腕だと安定しなくない?万が一ティータを落としたらどうするの?もし魔獣が出てもわたしとエステルで戦えばいいじゃん」
「確かに一理あるな……」


 エステルは助け船を出したけどアガットは納得しなかった。わたしも助け船を出してそう言うとティ―タの安全性を優先したのか渋々納得した。


「ほら、これでいいか?」
「あっ、えへへ……」


 お姫様抱っこをしてもらったティータは嬉しそうに笑みを浮かべた。初々しくて可愛いね。


「よし、いくぞ!」


 先頭をエステル、続いてアガット、ラウラ、そして最後尾にわたしの順で足場を渡っていく。これなら前や後ろから襲われても対処できる。


「ふっ、よっと!なんか楽しいわね、これ」
「おい、下は溶岩なんだぞ?もう少し緊張感を持てや」
「ごめんごめん」


 呑気な事を言うエステルにアガットが怒った。まあ気を緩ませて溶岩にドボンなんて絶対嫌だからね。


「……フィー、後ろから何か迫ってきていないか?」
「えっ、後ろには特に何の気配も感じないけど……」
「そうか。何か鳴き声のような物が聞こえたのだが気のせいか……」
「……ッ!上から何か来る!」


 ラウラの指摘に私は集中して気配を探る、すると上から何かが迫っているのを感じて咄嗟に叫んだ。


 するとわたし達の周辺に炎の雨が降り注いだ。足場のいくつかに命中して粉々に打ち砕いてしまう。


「なに!?何が起きたの!?」
「上だよ!」


 エステルの疑問にわたしはそう叫んだ。上を見ると体が炎に包まれた大きな鳥が炎を穿いているのが見えた。


「ちょ、ちょっと!あんな高い所から狙い打ってくるなんて反則よ!」
「んなこと魔獣に言ってもしょうがねえだろうが!さっさと走れ!」


 エステルは魔獣にそう言うがアガットの言う通り魔獣に言っても意味はない、魔獣はエステルをあざ笑うかのように甲高く鳴くと再び炎の雨を降らせてきた。


 こんな狭い足場じゃ真面に戦えない、足場を崩されたらおしまいだ。


「お前ら、走れ!」


 アガットの叫びと共にわたし達は必至で逃げ出した。


「リィン、無事でいて……!」


 ここが想像以上の危険地帯と分かると途端に不安になってきた。わたしはリィンの無事を願いながら魔獣から逃げるのだった。


 
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