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仮面ライダーAP

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北欧編 仮面ライダーRC&レジスタンスガールズ 第12話


 エメラダをはじめとする解放戦線の陽動部隊は、十字砲火による一斉射撃で4人の黒死兵を足止めしていた。
 銃弾や榴弾そのものが効かなくとも、あまりにも弾幕が多いと身動きが取れなくなるのだろう。黒死兵達はナイフや瓦礫の投擲で反撃しながらも、その場からほとんど動き出せずにいる。

(いい調子だよ皆……! このまま行けば、あの黒死兵4人を素通りして公邸に突入出来る!)
(一般戦闘員は旧シェードの「失敗作」ばかり。改造人間ではあるが、私達の銃弾でも十分に通用する……!)
(市長、待っててください……! 今、私達が助けに行きますからっ……!)
(もう、少し……もう少っ……!)

 その銃撃音や爆音を背に、匍匐前進で公邸を目指す4人の主力メンバーは、作戦の進捗に確かな「手応え」を感じていた。
 豊満な乳房をズリズリと地面に擦り付け、安産型の桃尻をぷりぷりと左右に振りながら、彼女達は一心不乱に公邸に近付こうとしている。

 このまま行けば、最大の障壁だった黒死兵達の監視を潜り抜けて、公邸に突入出来る。そこまで辿り着いて仕舞えば、残っているのはノバシェードの一般戦闘員のみ。
 通常兵器でも通用する一般戦闘員達が相手ならば、自分達にも十分に勝機がある。市長さえ救出出来れば、もはや自分達は勝ったも同然。

 行ける。絶対に行ける。
 彼女達がそう確信した――その時だった。

「……!?」

 公邸に接近しようとしている4人の侵入者。その存在を察知した黒死兵達が、一斉にニッテ達の方へと振り向いたのである。
 榴弾による爆煙が晴れた瞬間、ニッテ達に狙いを定めて走り出す4人の黒死兵。その挙動を目撃した解放戦線のメンバー達に、激震が走る。

「あいつら、ニッテ達に気付っ……!」
「……行かせるかぁあぁああーっ!」

 このままでは、リーダー達が狙われてしまう。作戦が失敗してしまう。皆で思い描いた未来が、打ち砕かれてしまう。
 その焦燥に駆り立てられたサガや阿須子達は、近付き過ぎるなというエヴァの忠告も忘れ、一気に走り出していた。黒死兵達の注意を引き付ける、という目的に囚われた彼女達は、彼らの真正面に立ってしまう。

「ま、待って! 皆、前に出過ぎちゃダメぇっ! そいつらに近付き過ぎたら、逃げられないっ!」
「こ、このっ、来るな、来るな来るなぁあーっ!」

 ニッテの悲痛な叫びすら掻き消すような銃声が鳴り響き、銃弾の豪雨が4人の黒死兵に降り注ぐ。
 だが、正規軍の特殊部隊さえ退けてしまう彼らに、そんな攻撃が通用するはずもない。行手を阻む彼女達から始末しようと、黒死兵達がナイフを振り上げる。

「や、やめろぉおおーっ!」

 助けに入るには、あまりにも遠すぎる距離だった。それ故にニッテ達は、ただ悲痛な声を上げて手を伸ばすことしか出来ない。

 やはり自分達のような非正規兵が戦場に出ては行けなかったのか。全て無謀だったのか。自分達は、無力な子供でしかなかったのか。

 ――なぜあの時、素直に「彼ら」に助けを求められなかったのか。あの時に一言、言えていれば良かったのに。ただ、一言。

助けて(・・・)っ……仮面ライダー!)

 その一言が、言えてさえいれば。そんな声にならない慟哭が、4人の美少女の胸中に渦巻いた――次の瞬間。

「……おおおおぉおッ!」

 男達の絶叫が、響き渡る。堅牢な外骨格に覆われた仮面の戦士達が、高速の飛び蹴りを黒死兵達の横っ面に叩き込んだのはその直後だった。
 不意打ちの蹴りを頭部に浴びた黒死兵達が、真横に吹っ飛ばされて行く。その光景を目の当たりにした解放戦線のメンバー達は、思いがけない展開に瞠目するばかりだった。

「えっ……!?」
「あ、あれって……!」
「仮面……ライダー!?」

 美少女兵士達が、口々にその名を呼ぶ。
 あれほど強く拒んでいたのに、来てくれるはずなどないと思っていたのに――彼らは、それでも来た(・・)のだ。

 鳥海穹哉が変身する蒼き戦士、仮面ライダーケージ。
 忠義・ウェルフリットが変身する真紅の戦士、仮面ライダーオルバス。
 本田正信が変身する赤と白の戦士、仮面ライダーターボ。
 そしてジャック・ハルパニアが装着する赤と金色の戦士、仮面ライダーUSA。

 4人の仮面ライダーはさも当然であるかのように、この戦場に馳せ参じている。さらに彼らは、装甲服の上にそれぞれが愛用していたロングコートを羽織っていた。
 すでに自分達のことを知っているニッテ達に対して言外に正体を知らせ、「味方である」と伝えるための「目印」として利用しているのだ。コートの下から覗いている彼等の「ベルト」が、新世代ライダーの到着という事実を雄弁に物語っている。

 予め装甲服を装着してから現地に向かう仕様となっている、第1世代型。その一つであるUSAの腰部に巻かれたベルト「最大出力稼働(オーバーロード)常時展開式初期型」は、スーツにエネルギーを供給する「タンク」の役割を担っている。

 現地で変身出来るシステムの導入によって、高い携帯性を獲得している第2世代型のベルト「装着変身機構付次世代改良型」も、ケージ、オルバス、ターボの3人に超人的な身体能力を齎していた。特に、ジャスティアドライバーと呼ばれているオルバスのベルトからは、悪魔(オロバス)の如き力の奔流が滲み出ている。

 そんな男達の勇姿に、ニッテをはじめとする解放戦線の美少女兵士達は皆、信じられないという表情を浮かべている。

「なんで……!? 私達、助けてなんて頼んでないっ!」
「そうだろうな、俺達も頼まれた覚えはない」
「はぁ……!? じゃあなんで、なんでここまで来たのよ……!」
「ノバシェードの敵、そして人類の味方。それが俺達、『仮面ライダー』だからだ」
「……!」
「他に理由が必要だと言うのなら、君達で好きに決めてくれ。とにかくここは俺達に任せて、先を急ぐんだ!」

 そんな彼女達に対し、ケージを筆頭とする4人の新世代ライダーは――黒死兵達に振るう拳を通して、自分達の「答え」を示していた。例え認められることなどなくても、自分達は自分達の使命を完遂するだけなのだと。

「……っ! ああもう、分かったわよっ! あんた達こそ、ヤバくなったらさっさと逃げなさいよねっ!」
「皆……ここは仮面ライダー達に任せよう。作戦通りに行かなくなった以上、彼らが黒死兵を引き付けている今しかチャンスは無いッ! 全員で市長公邸に急ぐんだッ!」
「りょっ……了解っ!」

 散々自分達を拒絶したはずの解放戦線のために、敢然と黒死兵達に向かって行く4人の新世代ライダー。彼らは勢いよくロングコートを脱ぎ捨てると、一気に地を蹴って走り出していた。

 そんな男達の決意を、その戦い振りから汲み取ったニッテ達は互いの顔を見合わせ――迷いを振り切るように、陽動に当たっていた他のメンバーも合わせた「全員」で、公邸に突入して行く。

 ライダー達が陽動を引き受けている今ならば、解放戦線のメンバー全員で市長の救出に専念出来る。この好機を逃す手はない。ニッテは確実に目的を達成するべく、ライダー達の参戦を「利用」する判断を下したのだった。

「……本当に……気を付けてよねっ……!」

 だが。彼女をはじめとする美少女兵士達は皆、公邸に突入する直前――激しい殴り合いを繰り広げているライダー達の方へと振り返り、物憂げな表情を浮かべていた。

 全員での生還。その中には、ライダー達のことも含まれているのだと言わんばかりに――。
 
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