| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

仮面ライダーAP

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

北欧編 仮面ライダーRC&レジスタンスガールズ 第1話

 
前書き
◆今話の登場怪人

戦馬聖(せんばひじり)/レッドホースマン
 旧シェードに所属していた黎明期の改造人間「始祖怪人(オリジン)」の1人であり、1970年代から改造人間の傭兵(サイボーグ・マーセナリー)として活動していた男。現在はノバシェードの幹部として、量産型怪人「黒死兵」を指揮している。外見の年齢は28歳だが、実年齢は75歳。
 ※原案はX2愛好家先生。

LEP(ロード・エグザム・プログラム)/仮面ライダーRC
 旧シェードに所属していた黎明期の改造人間「始祖怪人(オリジン)」の1人として、1970年代から改造人間の傭兵(サイボーグ・マーセナリー)達によって運用されていたスーパーコンピューター。普段は専用の兵員輸送車に搭載されており、その車内から有線操作式のロボット怪人「仮面ライダーRC」を制御している。
 ※原案は秋赤音の空先生。
 

 

 ――2021年9月10日。北欧某国の小都市「オーファンズヘブン」中央区、市長公邸。

 街の中枢に位置するその門前から、破壊し尽くされた街の様子を見渡している1人の男が居た。彼は瓦礫が散乱している眼前の惨状に、満足げな笑みを浮かべている。

 本来なら整然とした街並みが広がっているはずの場所は今、無残な瓦礫と廃墟ばかりのゴーストタウンと化していた。その「景色」を作り出した張本人であるが故に、彼は自分の「仕事振り」に喜んでいるのだ。

「随分と見晴らしの良い景観になったもんだ。そうは思わんか? 市長さんよ」

 野戦服の上にレッドブラウンのトレンチコートを羽織り、艶やかな銀髪を靡かせているその美男子の名は――戦馬聖(せんばひじり)
 「レッドホースマン」のコードネームを持つ旧シェードの生き残りにして、現在のノバシェードを統率している「始祖怪人(オリジン)」の一員である。彼が率いる強力な自律式怪人「黒死兵」の侵略により、この街は壊滅の危機に瀕しているのだ。

「き、貴様らぁ……! な、何ということをッ……!」

 彼の背後で両膝を着き、縛り上げられているこの街の市長――ドナルド・ベイカーは、恐怖と憤怒が混じり合った表情で戦馬の背を睨み付けている。この某国を代表する有名な慈善活動家にして、世界最優の名医としても広く知られている男だ。
 恰幅の良い体格と優しい顔立ちの持ち主である彼は、故郷である愛する街を破壊された悲しみと怒りに苛まれ、沈痛な唸り声を上げている。

 そんな彼の両脇に立っている4人の黒死兵は、感情というものが全く感じられない冷たい視線で、市長の背中を射抜いていた。この街に破滅を齎した漆黒の怪人達は、戦馬のものと同じ野戦服に袖を通している。

「ふん、あんな格好で何を粋がっていやがる? 笑わせるぜ」
「俺達がちょっと捻ってやれば、容易く死んじまう脆弱な人間風情がよ」

 公邸の内部を占拠している無数の一般戦闘員達も、膝を着いた市長をバルコニーから嘲笑うように見下ろしている。
 「生身の人間に毛が生えた程度」の膂力しかない粗悪な改造人間である彼らだが、徒党を組めばかなりの脅威となるのだ。小銃で武装した彼らの存在も、この街が壊滅した原因の一つなのである。

(それにしても、この男……以前に見たことがあるノバシェードの連中とは、明らかに違う(・・)! 覇気、風格、眼力……全てにおいて別格(・・)だ! この男は一体……!?)

 そんな悪鬼達に注目される中で。彼は独り、戦馬の背中から迸る凄まじい威風(オーラ)に圧倒されていた。
 実はこの市長が、ノバシェードのテロに遭遇したのは今回が初めてではなかったのだ。

 数ヶ月前、出張のため遠方の首都「エンデバーランド」に足を運んでいた際も、彼はノバシェードのテロに居合わせたことがあった。そこへ新世代ライダー達が駆け付けて来たことにより、九死に一生を得たのである。
 その時も彼は、ノバシェードという存在を直に目撃していたのだが。そこで見たノバシェードの戦闘員達は、今にして思えば戦馬が纏う覇気には遠く及ばない程度の「格」であった。
 
 当時は凄まじく恐ろしい存在に見えていたノバシェードの戦闘員達でさえ霞むほどの、圧倒的な迫力。
 その威風を己が物としている自分に戦慄している、市長の視線。それに勘付いた戦馬は、感心したような面持ちで振り返っていた。片膝を着いた戦馬と、市長の視線が交わる。

「……ほぉ。俺達と他の雑魚共の違いが分かるとは、なかなか見所のある男だ。俺達の仲間だったなら、使える奴になっていたのかも知れんなぁ?」
「ふざけるな! この街は……『オーファンズヘブン』は決して、貴様らノバシェードなどには渡さん! 例え私の命が尽きようともだッ!」
「威勢の良いことだな。街の警察組織は崩壊し、正規軍の突入作戦も悉く失敗したというのに……まだ他にアテでもあるのか?」
「確かに街は壊滅状態だが……我々はすでに国際刑事警察機構(インターポール)を通じて、『仮面ライダー』に出動を要請している! 2年前に貴様達の首魁を打倒した、日本の精鋭特殊部隊だ! もはや勝ち目はないと思えっ!」
「はっはっは……そうかそうか、実に素晴らしい手際の良さだ。やはりあんたは筋が良い。ちょうどそろそろ……その名前が聞きたかったところだ」
「な、なんだと……!?」

 ノバシェードの恐ろしさと、新世代ライダーの頼もしさを知る市長はこの窮地においても気丈な声を張り上げていた。実際に助けられたことがあるからこそ、彼は新世代ライダー達に全幅の信頼を寄せているのだ。

 だが、そんな彼が口にした「仮面ライダー」の名に、戦馬は怯むどころか口角を吊り上げる。まるで、それこそが目的であったかのように。

「聞いての通りだ、LEP。奴らはじきにこの街に来る。『決戦』の日は近いんだ、これを機に連中の戦術を学習(ラーニング)しておけ。何せ今回の占拠(テロ)は、それが最大の目的(メインディッシュ)なんだからな」
「……!?」

 すると。市長公邸の傍からゆっくりと進み出て来た1台の兵員輸送車が、市長の目に留まる。その車両は歪な機械音を奏でながら、戦馬の近くで停車していた。

(な、なんだこの輸送車は……! 兵員輸送用の車両のようだが……奴はこれの運転手に呼び掛けたのか……!?)

 鈍色のボディを持つ物々しい兵員輸送車に、市長はただならぬ気配を感じて息を呑む。M59装甲兵員輸送車のシルエットを想起させる、その無骨な車両からは、得体の知れない不気味な気配が漂っていた。
 一見すれば旧式の装甲車両のようだが、戦馬が「期待」を帯びた眼差しで一瞥しているそれが、見た目通りの代物であるはずがない。そんな市長の考えを裏付けるように、戦馬は輸送車の車体を裏拳で小突き、気さくな声色で呼び掛けていた。

「俺はこれからこの街を脱出し、軍の包囲網をブチ抜いて別の国に向かう。俺達が遊んで(・・・)やらなければならないライダー共は他にも大勢居るからな。それから、この黒死兵達はここに置いて行く。どうせ他の連中では持て余す代物だ、指揮権はお前に譲る」
「な、なんだと……!? 貴様、この期に及んで逃げ出そうというのか!? 仲間達を置き去りにして!」
「敵の頭数が減るというのに怒り出すとは、随分と騎士道精神に溢れた市長様だな。……心配するな、コイツの方が俺よりもずっと良い『仕事』をしてくれる。退屈などさせんよ」

 戦馬の口振りから、彼がこのまま街を去るつもりだと知った市長は恐怖も忘れて声を荒げる。踵を返して公邸を去ろうとする戦馬を追うように、市長が立ち上がろうとした、その時だった。

「待っ……!?」

 市長の声を遮るように、輸送車のハッチが開かれ――その奥から、幾つものコードに繋がれたもう1人の怪人が現れたのである。

「ゴオォ、オォオオ……」

 だが、その外観は紛れもなく「仮面ライダー」のそれであった。戦馬と同じ始祖怪人の一角とされている、その怪人の名は「仮面ライダーRC」。
 輸送車に搭載されたスーパーコンピューター「LEP」による遠隔操作を介して制御されている、外部端末(ロボット)怪人なのだ。

 そのボディは、過去の仮面ライダーGとの戦いで破損した部分を、緑色の追加装甲で補修している現地改修仕様であり。後から足された緑色と、元々の鈍色が織り成す歪なまだら模様は、さながら迷彩色のようであった。

「じゃあな、しっかり学んで(・・・)来い。……だが、勢い余って殺すなよ。後の楽しみが減ってしまうからな」
「……任務、了解。これより、『仮面ライダー』迎撃体制に、移行する」

 肩越しに戦馬が言い捨てた言葉を「命令」と認識した鋼鉄の怪人が、濁った機械音声で「了解」の意思を示す。その異様な姿に、市長はただ慄くばかりだった。

(な、なんなのだ、この鉄の怪人は……!? ただの改造人間ではない……! この輸送車とコードで繋がれているとは、一体こいつは……!? しかも奴は今、「俺よりも良い『仕事』をする」と……! この怪人は街を破壊した黒死兵達(こいつら)や、それを使役していた奴よりも、さらに「上」の強さだと言うのか……!?)

 自身が敬愛した新世代ライダー達にも通じる、「仮面ライダー」らしいヒロイックな外観。それに反した不気味なまでの無機質さが、市長の背筋に悪寒を走らせる。

(ダ、ダメだ……! あの仮面ライダー達でも、こいつばかりはダメかも知れん……! 私でも分かることだ、この男はハッタリでそんなことを言うほど甘い奴ではない……!)

 自分よりも良い「仕事」をする、という戦馬の言葉も、彼を震え上がらせていた。この世の地獄としか思えないような威力を誇っていた黒死兵達でさえ、眼前に立つ鉄の怪人には遠く及ばないというのだから。

(……そういえば)

 その間に、悠然とその場を立ち去っていた戦馬はふと、未だにこの街で「悪足掻き」を続けている民間の武装集団が居たことを思い出していた。
 だが、街の警察が壊滅し、市長の救出を目指した軍部の特殊部隊も敗走した今。街に残留している黒死兵達やRCの脅威となり得るのは、もはや新世代ライダーしかない。

(この街にはまだ抵抗組織(レジスタンス)の類が残っているようだが、所詮は生身の人間……それも、未熟な女子供だ。国民皆兵制度が導入されている以上、そういう連中でも銃器の扱いには心得があると聞くが……まぁ、何の脅威にもなるまい)

 正規軍の兵士でもない民兵の集まりが、この状況を動かすことなど万に一つもあり得ないだろう。

 それが戦馬聖という男の結論であり――誤算(・・)であった。

 ◆

 古くから導入されている国民皆兵制度により、この国の人々は老若男女を問わず、銃を取って戦う術を教え込まれて来た。
 だが、強大な敵にも恐れることなく挑める勇気というものは、教育や訓練だけで身に付くものではない。警察組織や正規軍が撃退された今、この街――オーファンズヘブンの人々の心は、折られかけていた。

 そんな時に立ち上がったのが、兵役経験者の美少女達によって結成された「オーファンズヘブン解放戦線」だったのである。

 国民の義務として、約2年間の兵役を経験して来た彼女達も、兵士として銃器の扱いを学んだ身ではあるが。今は現役の警察官でもなければ、正規軍の所属でもない。その多くは、街で評判の美人……という点を除けば、ごく平凡な民間人ばかりだった。

 それでも彼女達は、挫けてしまった街の人々に代わり、このオーファンズヘブンをノバシェードの支配から解放するべく。敗走した正規軍の装備や、破壊された銃砲店の商品を拾い上げ、ゲリラ戦を開始したのである。

 ――孤児だった自分達を援助し、学校にも通わせてくれていた「あしながおじさん」である、この街の市長を救い出すために。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧