仮面ライダーAP
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特別編 仮面ライダー羽々斬&オリジンモンスターズ 第12話
前書き
◆今話の登場ライダー
◆ズ・ガルバ・ジ/仮面ライダーN/G-1
19年前に警察の手で殲滅されたとされる「グロンギ」の生き残りであり、芦屋隷の実験に協力することを条件に保護されている男。年齢は不詳。
※原案は八神優鬼先生。
◆天塚春幸/仮面ライダー炎
3年目の若手警察官であり、警察学校時代から装甲服のテストに協力していた几帳面な青年。年齢は22歳。
※原案はピノンMk-2先生。
◆薬師寺沙耶/仮面ライダーヴェノーラ
黒バイの幽霊隊員と呼ばれている一方で、潜入捜査官としての顔も持っていたグラマラスで妖艶な美女。年齢は27歳。
※原案は黒子猫先生。
◆日高栄治/パトライダー型式2010番type-000
助け合いの精神を重んじる朗らかな新人警察官であり、お人好しな性格ではあるが戦闘力は非常に高い。年齢は23歳。
※原案はNynpeko先生。
◆熱海竜胆/仮面ライダーイグザード
警視庁の警部であり、愛する妻と娘達を守るためにノバシェードと始祖怪人の打倒に立ち上がったタフガイ。年齢は31歳。
※原案はカイン大佐先生。
◆静間悠輔/仮面ライダーオルタ
若手ながら優秀な警察官であり、普段は竜胆の片腕として彼のサポートに徹しているが、個人としての実力も高い。年齢は23歳。
※原案はシズマ先生。
◆翆玲紗月/仮面ライダーパンツァー
元自衛官の戦車搭乗員であり、5年前にはシェードとも戦っていた剛毅な姉御肌。年齢は23歳。
※原案はゲオザーグ先生。
◆一二五六三四/ライダーシステムtype-α
ものぐさな印象を受ける言動が多い一方、冷静沈着に職務をこなす食えない人物。年齢は36歳。
※原案は板文 六鉢先生。
すでに「標的」を決めたライダーや怪人達が激しく睨み合う中。
始祖怪人達の背後からは、黒一色のマネキンのような怪人達が続々と現れていた。
野戦服を纏ったその怪人達はコンバットナイフを握り締め、他の新世代ライダー達の行手を阻んでいる。
彼らの存在と、その恐ろしさを知るライダー達は皆、仮面の下で剣呑な表情を浮かべていた。
「こいつら……『黒死兵』か!」
「やはりここにも出やがったか……! どうやらコイツらの出現も、始祖怪人が絡んでいたようだなッ!」
「黒死兵」。それは今年に入ってから世界各地で出現するようになった、ノバシェードに与する謎の怪人達を指す総称であった。
その物言わぬ漆黒の怪人達は各地域のノバシェード幹部の指示に従い、無言のまま破壊活動を行っていたのである。
しかもその一人一人が、武田禍継こと仮面ライダーニコラシカにも匹敵するほどの戦闘力を持った、かなりの強敵だったのだ。
神出鬼没であることに加え、個としての戦闘力も高く、世界各地に複数現れることもある。
時にはたった数人の黒死兵に警察組織が壊滅させられ、都市一つが丸ごと占拠されてしまう事件も起きていた。
その都度、現場となった国や地域に駆け付けて来た新世代ライダー達が、現地の警察組織や自警団らと共に黒死兵達を打ち破って来たのだが。いずれも紙一重の辛勝であり、どこで敗れていてもおかしくない状況だったのだ。
「しかも、この数かよ……!」
「ざっと数えても20人は居るぜ……! ハッキリ言って、過去最悪のシチュエーションだ……!」
そんな黒死兵達が、大勢この場に現れている。ただでさえ一人一人が手強いというのに、その怪人達が群れを成しているのだ。
新世代ライダー達も天峯達のデータを得てパワーアップしているとは言え、これでは苦戦は免れないだろう。
黒死兵に蹂躙された街の住民達が目にすれば、PTSDを発症しかねないほどの光景なのだ。彼らに打ち勝って来た新世代ライダー達にとっても、黒死兵という「個の強さ」に「数の暴力」まで加わったとあっては、プレッシャーを感じずにはいられない。
「……コイツら、よほど俺達と遊びたくてたまらないらしいな。ここは俺達で引き受ける、お前達は人質の救出に向かえッ!」
「し、しかし……!」
「始祖怪人達は局内にも潜んでいるはずだ! ここで悪戯に戦力を消耗するわけにはいかない……! 少しでも多く、余力のある奴を先に進ませる必要があるッ!」
「……分かった! 気を付けてくれよ、皆!」
この状況に最も対応出来るのは、黒死兵達とより多く交戦して来た一部の新世代ライダー達だろう。
それを自覚していた者達は自ら黒死兵達の前に飛び出し、漆黒の怪人達と対峙して行く。
彼らの「力」を肌で感じていた黒死兵達も、自分達の傍らを通り過ぎて行く他のライダー達には目もくれず、倒すべき「強敵」にのみ注目している。
「……世界各地の弱者を嬲って回るとは、随分とつまらん遊戯が趣味のようだな。俺の手で、もっと楽しい戦いにしてやろう。貴様らに、楽しむ暇があればの話だが」
ズ・ガルバ・ジこと、仮面ライダーN/G-1。
「世界中の街を襲って、多くの人を傷付けて……今度はこの放送局、か。もう……ここまでだ。これ以上は絶対に、貴様らの思い通りにはさせないッ!」
天塚春幸こと、仮面ライダー炎。
「こんなに大勢で寄って来るなんて……随分とマナーのなってない出待ちね。そんなに『お仕置き』がお望みなのかしら?」
薬師寺沙耶こと、仮面ライダーヴェノーラ。
「ライダーは助け合い、ですからね……! 俺達皆の力を合わせて、パパッと片付けちゃいましょうッ!」
日高栄治こと、パトライダー型式2010番type-000。
「……何度倒されても、学習しない奴らだな。俺達はただの人間だが……ただの人間だからこそ、強いのだということが分からんらしい」
熱海竜胆こと、仮面ライダーイグザード。
「分からないなら、それで結構。……そのまま無知で愚かな怪人に、相応しい末路をくれてやる……!」
静間悠輔こと、仮面ライダーオルタ。
「雁首揃えてゾロゾロと……そんなに『火傷』したいのかい? いいよ……もう一度、私のミサイルで吹っ飛ばしてやる。人間様を無礼た代償は、高くつくよ黒死兵ッ!」
そして翆玲紗月こと、仮面ライダーパンツァー。
彼ら7名の新世代ライダー達は黒死兵達と睨み合い、他の仲間達を「先」に進ませようとしている。彼らの覚悟を無駄にするわけには行かない以上、残されたライダー達は先に進むしかないのだ。
一方、N/G-1達が黒死兵達の相手を引き受けていた頃。
独り仲間達の元から離れていた一二五六三四ことライダーシステムtype-αは、放送局の裏手に駆け込んでいた。
「……来たか」
そこには、壁に背を預けて腕を組んでいる1人の怪人が佇んでいた。
その怪人は黒死兵達と全く同じ容姿を持った、漆黒のマネキン男だったのだが――他の黒死兵達とは、桁違いの覇気を纏っている。
表の入り口前でN/G-1達が引き受けている黒死兵達とは、武器も装備も同じ。
だが、全身から滲み出ているそのオーラは、明らかに「別格」なのだ。
野戦服を纏い、胸の鞘にコンバットナイフを納めているそのマネキン男は、ゆっくりと腕組みを解いてtype-αと向き合っている。
「やはり……あの黒死兵達にも、全員を指揮する『司令塔』が居たようだな」
専用の多目的自動拳銃「マルチシューター」を、両手持ちで構えているtype-α。彼に対し、マネキン男――プラナリアンは平静を保ったまま静かに口を開いた。
「……私を捕捉するとは見事な捜査だ、一二五六三四。いや……ライダーシステムtype-α。その域に辿り着くまでには、さぞかし並々ならぬ努力を積んできたのであろう。称賛に値するぞ」
「いや……生憎、俺は面倒なのが嫌いでな。努力なんて言葉からは、誰よりも遠い男さ。貴様を見付けたのは……単なる『刑事の勘』、という奴だ」
「面倒なことは嫌い」と公言して憚らず、気怠げでものぐさな窓際族の不良刑事。そんな人物像で通って来たtype-αは、口振りとは裏腹な鋭さでプラナリアンを見据えている。
その佇まいは、決して悪を見逃さない質実剛健な敏腕刑事そのものであった。爪を隠すことを止めた鷹を前に、漆黒の怪人は含み笑いをする。
「……そうか。ならば天賦の才を秘めていた、ということだな。我々の仲間になっていれば、今頃は柳司郎すらも超える逸材になっていたのかも知れん。面白い男だ」
「よく喋る奴だ。……俺も世界中のあらゆる都市で、黒死兵達と戦って来たが。貴様のようなお喋りな個体など、今まで一度も見たことがなかった。……貴様が『本体』、ということだな?」
世界各地に出没していた黒死兵。
type-αを含む新世代ライダー達が倒して来たそれらの個体は、いずれも言語能力を有していなかった。彼らは物言わぬ殺人鬼として、世界中から恐れられていた。
それに対して、黒死兵達と同じ容姿を持つプラナリアンは流暢に喋っている。それは、黒死兵達とプラナリアンの間にある「関係性」を悟らせるには、十分な光景であった。
そう。黒死兵と呼ばれていた漆黒の怪人達は全て、プラナリアンの分裂能力によって大量生産されていた「分身」だったのである。
彼は自分の分身である黒死兵達を、世界各地のノバシェード支部に配備し、天峯達が倒れた後も活動していた構成員達を援助していたのだ。
黒死兵によって都市一つが占拠された過去の大事件も、この男が黒幕だったのである。
「ふむ……すでにそこまで察したか、流石だな。実は各国の支部に黒死兵を配備した時も、現地の幹部達から散々文句を言われたのだよ。一言も喋らないし何を考えているか分からない、気味が悪い……とな。しかし私の分裂能力では、戦闘力の数割を継承させることだけで精一杯でな。言語能力の実装までは終ぞ叶わなかったのだ」
「……その黒死兵達がどれほどの被害を齎してきたか。どれほどの悲しみを振り撒いて来たか、どれほどの血を流させて来たか。俺達は……嫌というほど見て来た。彼らの無念を背負ってしまったからには……死ぬほど面倒だろうが、貴様を見逃すわけには行かない」
type-α――六三四は、黒死兵達による事件を最も多く解決して来たライダーだった。
そしてそれ故に、彼は最も多くの「悲しみ」を見て来たのである。
黒死兵に街を蹂躙され、帰る家を失った住民達。警察組織の壊滅後も、街を取り戻そうと銃を取っていた抵抗組織。組織が崩壊しようとも、職務を全うせんと命を張っていた現地の警察官達。
彼らが流して来た血と涙の記憶は、日本に帰った今もなお六三四の脳裏に深く刻み込まれている。その痛みを知るが故に、彼は殺意にも似た闘志を込めて、マルチシューターを構えていた。
そんな六三四ことtype-αの覇気と、その背景にあるものを察知したプラナリアンは、ゆっくりと胸元の鞘からコンバットナイフを引き抜いて行く。
「お前をここに誘ったのは、その怒りか。実に結構。怒りは闘志の原動力となり、その原動力が新たなる闘争を生む。戦争はそうして循環し、我々の生存圏を維持して来た」
「なら……貴様達の生存圏も、この因縁も、今日で全て終わりにする。決着を付けるぞ、始祖怪人!」
「良かろう。……言っておくが、お前達が倒して来た黒死兵達は所詮、私の戦闘力を数割程度しか引き継げていない劣化コピーに過ぎん。オリジナルの私は……少々、手強いぞ」
プラナリアンのその言葉がハッタリではないことは、type-αも肌で理解していた。
天峯達のデータを引き継ぎ、性能が底上げされている状態とは言っても、そもそもの力量差があまりにも桁違いなのだ。隷には悪いが、「焼石に水」である可能性の方が高い。
「あのライダー達もなかなかの手練れのようだが、20体以上の黒死兵が相手とあっては保って10分と言ったところか。私さえ倒せれば、全ての黒死兵も消滅するが……お仲間が死ぬ前に私を倒せるかな?」
「10分か……そんなに要らんさ。俺が貴様を倒すのも、あいつらが黒死兵達を殲滅するのもな!」
それでも、マルチシューターを握るtype-αの眼に、恐れの色はない。彼は躊躇うことなく引き金を引き、プラナリアンとの戦闘を開始して行く。
他のライダーや怪人達が決戦の火蓋を切ったのも、その瞬間であった。技と技、力と力の激突が天を衝く轟音を呼び、死闘の開幕を告げる。
最新鋭の技術で身を固めた新世代ライダーと、最古の力をその身に宿した始祖怪人。
時代が望んだ者達と、時代に拒まれた者達の果たし合いが始まって行く。
「皆、無事でいてくれよ……!」
「立ち止まるな! あいつらのためにも人質を救出し、全ての始祖怪人を倒すんだッ!」
「……あぁ、分かってる! 行こうッ!」
その激戦を横目に見遣りながら、他の新世代ライダー達はテレビ局内に突入し、始祖怪人の気配が漂う上階へと駆け上って行く。
仲間達に託されたチャンスを、無駄にしないために――。
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