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その小さな女の子のことが気になってしまったんだが、どう接していけばいいんだろう

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10-5

 ななの達の卒業式の前の日曜日、クラブの追い出し練習があった。僕は、ロビーの玄関を出たところで見ていたのだが、練習が終わったと思ったら、卒業生がゴールのところに並ばされて、在校生が代わる代わるにお礼と言ってフリーキックをしていたのだ。女子が終わると、男子で、その時は、在校生が一斉にキックするといった激しいものだった。

 そして、終わった後、ななのちゃんを連れて、リョウちゃんとナナコちゃんが僕のところに来て

「シュウさん ななののこと、ずーと見守ってやってくださいね ななのは何にでも一生懸命で頭も良いし、とってもいい子なんです これからも、よろしくお願いします」と、頭を下げて戻って行った。

 僕が、唖然としていると、中からつばきちゃんが出てきて

「ななののこと、ずーと見守ってやってくださいねだってー 私のことも見守ってくださいネ」と、冷やかしにきた。

「バカやろう つばき グラウンド10週だ」

「うっ それってパワハラぁー でも、ななのちゃんて走るの速いんだってネ 中学の先生が言ってましたよ 彼女が入ってくれてたら、上位に喰い込めてたんだがなぁーって  それに、成績も学年トップだってウワサだし 頭良くって、運動も出来て、可愛いし・・ この上無いんだけど・・ただ まだ 実が青い 食べようかどうしょうか って とこカナ それとも、まだ渋いのに食べてしまったのカナ? あの若くて美人なお母さんとのこともあるしなぁー」

「つばきぃー 変なウワサ立てるなよ! そういうのって ゲスの勘ぐりって言うんだよー バカ ななのは妹みたいなもんなんだよ と そのお母さんってだけだよ」

「みたいな? うふっ だって あんまりにも私には興味無いみたいなんだものー 私だったら 食べ頃なんだよ」

「あぁ 君だって 明るくていい子だよ だけど、君の場合は、お腹 壊すだろうけどな!」

 ななのちゃんの卒業式の日、家に呼ばれていた。僕は、仕事終わりにケーキだけ持って向かった。迎えてくれたのはななのちゃんで、めずらしく二人ともスカート姿だった。奥の部屋には、おそらく卒業式に着て行ったのであろうお母さんの黒いワンピースが下げてあった。

「シュウ 私ね 今日 代表して答辞 読んだんだよ」

「そうか 優秀なんだものな」

「そんなでも 無いんだけどなぁー 恥ずかしかったワー」

「そうなの あんなに閉じこもっていたななのがこんなことするようになるってー 私 涙出てきたわ 北番さんのお陰」

 その日は、手巻き寿司で、ななのちゃんが僕の分を、いろんな具を換えながら、しきりと巻いて渡してきてくれていた。

「この子ったら 高校はクラブ活動はやらないで、今のサッカークラブを続けるんだって 北番さん これからもよろしくネ」

「あっ そうなんですか いや 僕は なんにも・・」

「そうなのよ リョウは高校のサッカー部に入るんだって 女の子は少ないらしいけど 男の子と一緒にネ だけど、時間があれば こっちにも来るってー 受かったんだよ あの子も」

「そうだったんだ あの子も優秀らしいからな ななのの良い友達だよ」

「うん 親友 ナナコも 一緒の高校 推薦じゃぁないから、発表まだだけど 多分 受かると思うよ」

「そうか 受かると良いネ」

「そう ナナコは続けて今のクラブやるって言ってくれてるし」

「北番さん この子の入学式 お願い出来ないかしら 私 お休みできそうもないのよ 高校だからって ひとりなのも可哀そうで」と、どうも、この人にもすがるような目付きで見てこられると、僕はドキドキしてしまうのだ。

「お母さん だから 私 誰も居なくても 大丈夫だって!」と、さえぎるようにななのちゃんが・・

「うーん まぁ 別に良いですよ 僕も ななのちゃんの成長したの見たいですから」

「シュウ ほんと 本当に来てくれるの? わぁー うれしいぃー だけど、保護者なんかなぁー」

「そうなんかな でも、保護者父兄っていうから・・」

「父兄??? なの? 彼氏とか・・・」

 その後、僕は言葉が続かなかったので、お母さんも黙ったままだったのだ。  
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