【魔法少女リリカルなのは】魔導師を辞めた高町家の男
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第四話 やべぇ、俺危険!
前書き
何が危険なのよ?by隼人
君の人生だよ……by作者
危険な人生、始まります。
どこも危険じゃないね!by隼人
朝早くに店で出すケーキを作り終えると、なのはを起こし、顔を洗って髪を整えてやるとリボンでツインテールにして幼稚園の制服に着替えさせると朝食を食べさせる。
今日のメニューはサンドウィッチと紅茶だ。
少々、身体がいつもより重く感じながらもなのはに幼稚園の準備をさせる。
「ティッシュとハンカチもちゃんとカバンに入れたか?」
「ばっちりなの!」
「良い子だ」
褒めながら頭を撫でてやると「にゃふふぅ」と言いながら気持ち良さそうに身体をクネクネさせるなのは。
それを見て身体が一瞬だけ元に戻ったがすぐに身体がダルくなった。
もしかして風邪か?
そう思いながらも、店の事やなのはの幼稚園への送り迎えの事もあるから身体を休ませる訳にはいかない。
近所の誰かに頼もうとも思ったが迷惑だろう。
「パパぁ?大丈夫?」
おっと、なのはに心配をかけてしまったな。
すぐに笑顔を作り、なのはの頭を撫でる。
「大丈夫大丈夫♪なのはの可愛い顔を見てたら平気になったさ」
今も頭を撫でてはいるが、嬉しそうではなく、本当なの?って顔でこちらを見つめるなのは。
「ん、もうそろそろ時間だな。ほれ、送ってやるから先に車の前で待っといてくれ」
「……はーい」
とてとてと可愛らしい効果音を発しながら走っていくなのはを見送ると、急いで車のキーを取り、家の鍵と財布を持って自分も車へと向かう。
幼稚園に到着すると、なのはを前で降ろし、手を振って別れる。
「先生の言う事は守って、友達と仲良くなぁ」
「うん、わかってるの♪」
「オーケー、じゃまた迎えに来るからな」
「はぁい、バイバーイ♪」
なのはがちゃんと幼稚園の中に入って行くのを見かけると、すぐに車を発進させて家まで戻る。
家に戻ると、玄関……まぁ、喫茶店の入口だな。
この家は、三階建てで一階が喫茶店『翠屋』で二階から三階が我が高町家の家だ。
つまり、この家の玄関は一階にある店の入り口だ。後は、裏にある車を止めておくスペースに繋がる出入り口くらいだ。
兎に角、店に入ると『本日のおすすめメニュー』と書いたミニ黒板の看板を店の入り口の前に出し、軽く店の中を掃除し、テーブルやカウンターを雑巾で拭いて、レジや注文を受ける『注文カウンター』を綺麗にし、メニュー表や小銭をレジに補給する。
次に、厨房へと入り、冷蔵庫の中にあるケーキを一つ一つ確認し、次に他のメニューの食材やドリンクを確認する。
全部、問題なし。
開店は9時からだ。まだ、20分もあるので厨房の奥にある休憩室に入り、椅子に座る。
朝早くから起きて、昨日の晩に準備しておいた物を使い、ケーキを大量生産してからここまで休憩無しでやるのは流石に疲れる。
だが、今回は何時もと違う。
今日は身体がダルく、頭ではなく胸が痛いというか苦しい。
もしかすると、リンカーコアの損傷による心臓への悪影響がまた出始めてるのかもしれない。
今のうちに薬を飲んで気分を落ち着かせよう。
ミッドで貰った薬と栄養剤を飲み、休憩室を出て、店の入り口の前に置いてある準備中の看板をひっくり反して「準備中」から「営業中♪」へ変更する。
ふぅ、今日も忙しくなりそうだ。
カランカラン
と、扉を開けられると鐘がなり、店に人が入ったり出たりした事を教えてくれる。
「いらっしゃいませ。二名様でよろしいでしょうか?」
「あ、はい」
「お席はカウンターかテーブルどちらにいたしますか?」
「テーブルで」
「では、あちらにどうぞ」
女性二人をテーブル席へと誘導し、後からすぐに水を持って来る。
本当にこの店はよく人が来るよな。
俺しか店員いないのに、飽きもしないで良くこれるな。
まぁ、とっても嬉しいから口には出さないし、言っちゃダメだろう。
「あ、あの?」
店の中を徘徊していると先程の女性二人組に声をかけられたのでそちらを振り向く。
「何でしょう?」
「し、写真……一緒に撮ってくれませんか?」
「はいぃ?」
意味がわかない。
カメラを俺が持って、女性二人で写真を撮るのなら判るが、俺と一緒に撮りたいって、何だよ?
こう言う時ってどうすれば良いのか?
「ダメ、ですか?」
「いえ、構いませんよ」
「あ、ありがとうごじゃいます………はぅぅ」
喜びながら喋るから噛んでしまったようだ。恥ずかしそうに顔を真っ赤にさせている。
俺はと言うと、何をどうすれば良いのかわからない状況。
「よかったね、真帆!」
一緒に来ていたもう一人の女性が先程の女性、真帆さんに声をかけて復活させた。
それから、一緒に写真を撮り、握手までしたら満足そうにケーキを何個も食べて、イチゴタルトを4個もお持ち帰りなされた。
1時くらいになると、珍しく人が少ない。
この時間でも10人はいつも居たのだが、今日は二人組みが二組いるだけだった。
他の客が座っていた座席の食器を片づけて、厨房へと持っていき、皿やホーク等を洗っていると扉を開けた時になる鐘が鳴った。
手を水で洗ってタオルで拭き、急いで注文カウンターまで向かう。
「いらっしゃいませー」
朝からずっと重たい身体を引っ張りながらも笑顔を作って客を御もてなしする。
「あら、礼儀正しいわね」
「え?」
聞き覚えのある声だと思って相手の顔を良く見てみると。
「リンディ……おひさぁ」
「ふふ、久しぶり。会いに来たわ」
俺が引退するまで同じ仕事をしていた仲間であり、親友であり、命の恩人の女性、リンディ・ハラオウンが立っていた。
ミッドで別れてから何年も経つのにちっとも変ってないな。
この人って歳とらないのぉ?
「あぁ、久しぶりだな。どうだ?管理局の方は」
リンディの今の恰好は私服だから恐らく休暇の真っ最中なんだろう。
「ミッドと管理局の英雄がいなくなって最初は大変だったけど、今はもう全部元に戻って今までどおりの事をしているわ」
「そっか、そいつはよかった」
リンディはカウンター席に座り、イチゴケーキと砂糖がたっぷり入ったお茶を注文した。
約束通りに、工夫しておいてやった。
「あら、何コレ?美味しい」
「お茶に入ってる砂糖はイギリスの名家から取り寄せてる物だからな、そりゃうまいぞ」
見ているこっちも美味しそうに味わいながら飲むリンディ。
俺も喉が渇いたので、ミネラルウォーターをコップに淹れて飲む。
一気飲みして、すぐにコップを洗う。
「で、クライドとはどんな調子なんだ?」
「………………」
あ、地雷踏んだのか?俺。
もしかして、今ケンカ中?何でさ?何があったのさ!!
何処からどう見ても、暗い!暗すぎる表情になったリンディさん。
「悪い、気に障ったみたいだな……」
ここは違う話にしよう。
何か、良い話しがあったらいいのだがな……。
ていうか、今の俺ってさリンディとクライドの仲を取り戻す鍵になれるんじゃないのか?
いや、しかしな暗いよ、リンディが暗いんだよ。
「ねぇ、隼人?」
俺が考え込んでいると、急に話しかけてきた。
一度、思考を停止させて話を聞く。
「何だよ?」
「大事な宝物を失った時ってどうすればいい?」
「大事な……宝物?」
「えぇ」
俺にとっての大事な宝物は、家族かな。
それと、この家だな。
なのはとこの今住んでいる家が俺の大事な宝物だ。
で、リンディの話は、その大事な宝物を失ったらそうすればいいのかって話。
「どうして失ったのか。何が原因だったかを知りたいな。それから、また大事な宝物を求めれば良いんじゃないかな?失ったら俺だって嫌だ。立ち直るのは無理かもしれない。でもさ、何か残ってるだろう?失った物が残していった物」
俺の場合は、なのはが俺の為に作ってくれた花の髪飾りや、俺を絵にした紙とか、なのは本人の何度見ても飽きないあの笑顔とか。
「お前にもあるんじゃないのか?何を失ったかは知らないが、あるだろう」
「ぁっ!……」
何かを思い出したように目を見開く。
「なら、失った物の分、残していったものを大事な宝物にすれば良い」
失えば、悲しいままだが、残された物があるかぎりは失ったものを忘れずにずっと思い出せる。
「失った物の分、残していったものを大事にしてやればいいんじゃないのか?」
あくまで俺の考えだがな。
「えぇ、それもそうよね。何時までも悲しいままじゃ、どちらも報われない」
「あぁ、そうだ」
「ありがとう、隼人。少しは元気が出たわ」
「どう致しまして、お前の力になれて光栄だよ」
そう言って、リンディの頭に手を伸ばし、いつもの癖で頭を撫でる。
なのはにいつもやってきた事だから、癖になってしまったのかもしれないな。
「わ、悪い」
慌てて手を退けようとしたが、阻止された。リンディに。
リンディは俺の手を掴み、ずっと頭の上に乗せたままにしている。
「お願い、このままでいて。少しは楽だから……」
「あぁ、わかったよ」
リンディの弱い弱い、悲しそうな暗い声が聞こえた。
俺は、ただ撫でるだけでいた。
一体、リンディに何があったのか……。
「本当の事を言うわね」
「無理はしなくてもいいんだぞ?」
「言わせて、今、言わないときっと後悔しそうだから」
「今から、7年前にクライドは……亡くなったわ」
後書き
よっしゃ、無事生還!by隼人on作者
お読みくださり、ありがとうございました!
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