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星河の覇皇

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第八十三部第四章 戦線崩壊その三十九

「一兵でも多く逃がしたい」
「だからですね」
「この度はですね」
「撤退を急がせて」
「そのうえで」
「撤退の用意に入る」
 こう言ってそうしてでだった。
 アブーは撤退を急がせた、フラームもそれは同じだった。二人だけでなくティムール軍全体の必死の指揮があり。
 ティムール軍の撤退は彼等の焦りによる認識とは別に迅速なものであり戦場を次々と離脱していった。そのうえで。
 戦場に立っているのは徐々にオムダーマン軍のみになっていっていた、アッディーンはその状況を見て言った。
「これでだ」
「我等の勝利ですね」
「それが固まりましたね」
「左様ですね」
「そうだ、しかしだ」
 それでもというのだ。
「ここで大事なのはだ」
「閣下が言われる通りにですね」
「深追いはしない」
「そのことが重要ですね」
「現にだ」
 アッディーンはモニターを見つつ述べた。
「ティムール軍は撤退しつついつもの手を使っている」
「撤退している友軍の援護とですね」
「撤退しつつ後方への攻撃を行っていますね」
「機雷を散布したりして」
「そうもしていますね」
「だからだ」
 それが為にというのだ。
「今はだ」
「迂闊にはですね」
「攻めず」
「撤退させますか」
「功を貪らないことですか」
「そうだ、それでだ」
 このことを念頭に置いてというのだ。
「今は撤退するに任せる、こちらの戦略目的は達成している」
「それならばですね」
「今はそれ以上を求める時ではない」
「だからこそ」
「今は積極的な追撃は仕掛けないですね」
「追撃は仕掛けるべき時と仕掛けるべきでない時があるな」
 その両方がというのだ。
「その敵国を徹底的に殲滅してだ」
「跡形もなくす」
「そうした戦争をする時はですね」
「仕掛けますね」
「そうした時等はな、圧倒的多数の相手を退かせた時等もだ」
 その場合もというのだ。
「やはりだ」
「積極的にですね」
「追撃を仕掛ける」
「そうしますね」
「そうだ、だが後に自国の戦力にもなる場合もそうであるし」
 今回はこの要素も入っているのは先にアッディーンが言った通りだ。
「そしてそれが返り討ちに遭う場合はな」
「仕掛けるべきでないですね」
「その場合は」
「どうしても」
「そうだ」
 まさにというのだ。
「やはりな」
「今の様にですね」
「普通の攻勢を仕掛け」
「そしてですね」
「退くに任せる」
「そうさせますね」
「逃げ道を完全に塞ぐとな」
 そうした場合はというと。
「どうしてもだ」
「その敵は、ですね」
「どうせ死ぬのならと自暴自棄になるか」
「必死に囲みを突破し脱出しようとし」
「そう考え」
「必死に戦いますね」
「死兵となりな、今は死兵と戦うこともない」
 アッディーンはこうも言った。 
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