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大阪幽霊談議

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第五章

「言われてみるとな」
「幽霊と人間の違いて」
「それだけや」
「身体があるかないか」
「身体から魂が出たらな」
「それが幽霊やな」
「そや、それはイギリスでもそうで」
 自分が生まれた国でもというのだ。
「他の国でもな」
「同じやね」
「そうやわ」
「そのことがわかったことも」
「ええ勉強になったわ」
 こう言うのだった。
「ほんまに」
「そやね、それで今度席で」
「幽霊の話するわ」
「そうするんやね」
「勉強の成果出すで」
「頑張るんやで」
「是非な、あとな」
 ジェーンは箸を自在に使いつつ友人に話した。
「私よお日本で生まれたんかって言われるけど」
「関西弁流暢やしな」
「お箸も使うし」
「日本のお料理も使える」
「落語の着物も自分で着られるで」
「そやな」
「それでな」
 そうした風だからだというのだ。
「私はな」
「そう言われてるんやな」
「そやけど頭の中の言葉は」 
 それはというと。
「まだ英語の時あるで」
「そうなん」
「実は頭の中で使う言語はな」
 思考にというのだ。
「中々難しいねん」
「複数の言葉知ってるとかいな」
「そや、今は関西弁使ってるけど」
 頭の中でというのだ。
「大阪の言葉な」
「そうなってても」
「日本に来たての頃は」
 その頃はというのだ。
「ほんまな」
「英語で」
「そればかりでな」
「それが徐々にやね」
「日本におるうちにな」
「日本語に親しんでいって」
「それでやねん」
「頭の中で使う言葉もやね」
「日本語、関西弁になっていって」
 そしてというのだ。
「そのうえで今に至るけど」
「まだ英語使う時あるんやね」
「不意に。特にお酒飲み過ぎた時は」
 そうした時はというのだ。
「ほんまな」
「英語になるんやね」
「そうなるわ。それで私が幽霊になったら」
 生霊でも死霊でもというのだ。
「やっぱり使う言葉は」
「英語になるんやね」
「そうかも知れんわ。着物着て」  
 落語のというのだ。
「それで英語で落語する幽霊とかな」
「それおもろいな」
「これちょっと席でやってみよか」
「ええんちゃうか?チャレンジせんとな」
「あかんしな」
「そやで、みっくちゅじゅーちゅもな」
 関西名物のこのジュースもというのだ。
「チャレンジして飲んでみるとな」
「めっちゃ美味しいな」
「そやから寛美さんも好きやってん」
 藤山寛美もというのだ。
「あのジュースをな」
「そやってんな」
「一回飲んでみて」
 試しにというのだ。
「それがな」
「美味しかったさかい」
「好物になったんや」
「そやからやな」
「何でもな」
 こうジェーンに言った。
「やってみることや」
「そやな、ほな今度な」
「怪談やって
「英語で落語やるわ」
 ジェーンは笑って応えた。
「そうするわ」
「ああ、何でもチャレンジや」
「勉強してな」
「そうせなあかんわ」
「ほんまな」
 二人でこうした話をした、そしてだった。
 ジェーンは英語の落語もやってみた、するとそれが随分好評で彼女の名を上げた。大阪在住のイギリス生まれの落語家は陽気に勉強してチャレンジをしながら活動していくのだった。


大阪幽霊談議   完


                2023・3・30 
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