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イベリス

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第九十話 合宿最後の日にその七

「人殺しても権力、国家のだね」
「国家権力ですね」
「これに反抗しているからね」
 だからといってというのだ。
「いいって言う様な」
「ああ、そうした人のお話は」 
 咲は嫌そうな顔で応えた。
「私もです」
「小山さんも聞いたことあるんだ」
「何か大阪にいたそうですね」
「上本町だったかな」 
 部長も応えた。
「あそこのゲーム関係のお店にね」
「いてですね」
「それでカルト教団が暴れて」
「テロで沢山の人を殺して」
「そうしたけれど」
 それでもというのだ。
「権力に反対するならいいってね」
「そう言ってですね」
「それでね」 
 そのうえでというのだ。
「テロを肯定していたんだ」
「人を殺してもですね」
「人間こうなったらね」
「駄目ですね」
「もう生きてる価値すらね」
 それこそというのだ。
「ないんじゃないかな」
「テロ、それで殺人がいいのなら」
「国家権力に反抗していてもね」
「世の中滅茶苦茶になりますよね」
「あれだよ、どんな風でもちゃんとした秩序がないと」
 さもないと、というのだ。
「無政府状態になってね」
「酷いことになりますね」
「アナーキズムの人達はいいって言うけれど」
 政府も権力もないしゃかいこそが真に自由な社会と言ってだ、日本語では無政府主義という思想である。
「ちゃんとしたものがないとモヒカンがね」
「暴れ回るですね」
「そうした風になるよ」
「核戦争後の世界ですね」
「そうなるから」 
 若しそんな社会になればというのだ。
「正直今の日本政府がある状況よりも」
「遥かに酷いですね」
「そうなるし」 
 部長は話を続けた。
「大体革命とか言ってテロやるんだよ」
「自分達が権力を握るんですね」
「そのことを目指しているから」 
 だからだというのだ。
「そんな人達が権力を握ったら」
「ナチスやソ連みたいになりますね」
「そうだよ、しかも人が殺されているのに」
「そんなこと言うって」
「人の痛みや苦しみがね」
 そういったものがというのだ。
「もうね」
「わかっていないってことですね」
「遺族の人達の悲しみとかもね」
「そう思うと」
「もうね」 
 部長は苦い顔で話した。
「生きていてもね」
「仕方ないですね」
「人の痛みや苦しみや悲しみがわからない、わかろうともしないなら」
「それなら」
「もうね」
 それこそというのだ。
「人間でいても」
「仕方ないですか」
「若しこんな風になったら」
 自分達がというのだ。 
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