FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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合体魔法
前書き
WBCマジで激熱でしたね。
準決勝決勝は職場で見てましたがお客さんたちもみんな盛り上がっててずっと一緒に見てましたw
何なら真面目に仕事してたら怒られるぐらいみんな興奮しててちょっと笑ってしまった。
第三者side
ドラゴンフォースを解放した二頭の小さき竜。それを見た天使はいまだに違和感のある腕をグーパーと動かしながら戦況を整理していた。
(かつてこの世界の支配者となっていたドラゴン。この世界においては絶大な力を持っていたと聞くが、それは我々に通用するとは思えない)
舐めているわけではない、彼らからすればそれは紛れもない事実。しかし、そうであっても油断が許される状況ではないことも確か。
(向こうも負傷しているがこちらもかなりダメージを受けている。次に一撃を食らえば、ただではすまないかもしれない)
一瞬不安が心を支配したタイミングで動き出すシリルとウェンディ。二手に別れた彼らを見て天使はすぐに視線を動かす。
(注意すべきはシリル!!普通の人間では私にダメージを与えることはできないのだから)
ウェンディの攻撃は受けても無効化される。そのため何よりもシリルの対処が重要視されると判断した天使は彼に視線を向けるが、彼は距離を詰めてこようとしない。
(動かない?何を狙って・・・)
彼の動きに注視していたところ、背後からの気配に気が付きすぐさま振り向こうとする。しかし、それよりも早くウェンディの蹴りが彼の頭部を捉えた。
「ぐっ!!バカな・・・」
本来なら攻撃が当てられてもダメージを受けることはないはずなのに、少女の蹴りは自身へと多大な影響を与えていることに気が付き、その姿を捉えようと顔を動かす。
「竜魔の鉄拳!!」
「!?」
その隙を突いて今度はシリルの拳が突き刺さる。死角からの攻撃に対応することなどできるはずもなく、天使はバランスを崩す。
「天竜の・・・」
「竜魔の・・・」
「「咆哮!!」」
次の動き出しができるような体勢ではない天使に追い討ちをかけるように放たれるブレス。その攻撃は決定打とまではいかなかったが、確実に天使は追い込まれていた。
「なぜ・・・君の攻撃が・・・いや・・・」
天使の血が入っているシリルの魔法にダメージを受けていることは理解できる。しかし、そうではないはずのウェンディの攻撃がなぜ自身に影響を与えているのか、彼には理解できていなかった。
しかし、二人の足元にある魔法陣を見て、その謎はすぐに解明された。
「付加魔法か」
自分たちの能力の底上げのみならず他者の魔法の性質も付加することができるようになったウェンディ。彼女はシリルの天使へ影響を及ぼすことができる力を自身へと付加していたのだ。
「まずい・・・このままでは・・・」
視界がぐらつく。もうすでに手加減など彼はしていない。最悪の事態を起こしてもいいから、とにかくシリルを連れて帰ることにのみ意識を向けていたはずなのに、目の前の二人はそれをやすやすと超えようとしてきている。
(どうする?考えろ、いかにして目的を果たすかを!!)
これまでものとは比べ物にならないほどに大きくなっている二人の魔力。ただ、ウィバリーはそれを見ても冷静さを崩すことはなかった。
(二人になってもやることは同じ。こいつらを捉えてシリル確保への交渉の材料にする。むしろ二人もいればあいつは確実にこちらの要求を飲むだろう、この状況を悲観する必要はない)
ここまでの戦いぶりから力の差が明確にあることは彼がもっとも理解していた。それゆえに警戒するには至らないと腹を括っていたウィバリーだったが、この判断が間違っていたことにすぐに気付かされる。
ダッ
彼の両サイドに別れるレオンとシェリア。そんな二人を見てもウィバリーは動きを見せない。
(どちらかを狙うともう片方が疎かになる。しかし彼らは必ず私に向かって攻撃をせざるを得ない。ならここは待つ方が得策)
如何なる攻撃であろうとも絶対に自身に目掛けたものが来ることは間違いない。そのため彼は様子見も兼ねて二人の攻撃を待つ。
「氷神・・・」
「天神の・・・」
その予想通り二人は同時に彼目掛けて突撃してくる。それさえわかれば対応は可能。
(彼は蹴り、彼女は風の魔法、しかし二人同時では範囲の予想はやりやすい)
シェリアが手から黒い風を打ち出しウィバリーを捉えようとする。彼は先に動いた彼女をまずは視界に捉える。
「北風!!」
向かってくるそれを横に避けるのではなくあいて後方へと距離を取るように下がるウィバリー。これには彼なりの狙いと読みがあった。
(二人で戦うことは優位性を保つ上でも重要だが、当然メリットだけではない。味方に攻撃をぶつけてしまっては元も子もない。つまり、味方がいる範囲内には絶対に攻撃を仕掛けることはない)
遠距離型の魔法を使ってきたシェリアに対しレオンは比較的近距離型の魔法が多い。そのことも踏まえてウィバリーは一度相手の攻撃範囲内に止まり、レオンが離れたところで回避しようと考えた。しかしその読みは空振りに終わる。
「氷結!!」
「!?」
自身の真後ろに現れたレオン。声で彼の存在には気が付いたが、予想していなかったその行動に理解が追い付かず、振り向くタイミングが遅れた。
ガンッ
「何!?」
後頭部に蹴りを受けたウィバリー。そのせいで向かってくる魔法から逃れる術を失った彼はシェリアの魔法へと飲み込まれる。そしてそれはレオンも一緒に飲み込み、魔法が晴れた中から現れた二人はボロボロの姿になっていた。
「バカな・・・何を考えてーーー」
二人の狙いが分からず困惑している彼は完全に思考力が落ちていた。そのせいで警戒すべき対象が脳裏から抜けてしまっていた。
「あれ?もう一人はーーー」
彼の視界にいるのはレオンのみ。それもそのはず、シェリアがいるのはレオンの反対側。つまり・・・
「天神の舞!!」
彼の真後ろになる。
「ぐっ!!」
これまでの彼なら反応するのも造作ではない攻撃だったがなす統べなく喰らうしかない。さらにこの一撃はダメージを与えるだけには止まらなかった。
「くっ・・・次はどっちから・・・」
双方ともに視界に捉えることはできないと判断したウィバリーは神経を研ぎ澄ませ視覚と聴覚に意識を集中させる。動きがあれば必ず音がする、そう考えた彼は二人を横目に見ながら次の行動に意識を注ぐ。
彼の予想通り地面を蹴る音が聞こえた。もう片方にはその音がないことから、まずは動いたと思われる方へと顔を向ける。
「なっ・・・」
しかし音がした方にいた青年は動いていなかった。いや、正確には先程よりも彼に近づいてはいたが、攻撃のために動いたのではなく、あくまでフェイクとしての行動だったらしい。
「ならこっちか」
それならとシェリアの方へと向き直るウィバリー。案の定死角を突いての攻撃に出ていたシェリアが迫ってきている姿を捉える。
「永久凍土!!」
「がっ!!」
シェリアの攻撃を受け止めようとした彼だったが衝撃が走ったのは左の脇腹だった。シェリアに意識が向いたところでわずかながらにでも距離を詰めていたレオンが鋭い拳を突き刺したのだ。
「天神の舞!!」
レオンの一撃により体勢が崩れたところでシェリアの追い討ち。これにはたまらずウィバリーは倒れるが、受け身をうまく取りすぐさま立ち上がる。
(彼の能力の高さを少女がうまく生かしている。このままではやられるのは時間の問題だ)
彼らを殺すことは禁じられているためできる手段は限られている。そんな中でも目的を果たすために、彼もべつのところで戦う彼の仲間もこの状況の打開策を模索していた。
(考えろ、この二人を止める方法を)
(我々は叡智の神・メーテス様の使い)
((我々の知略を駆使すれば必ず突破口は見えるはず!!))
今対している二人の能力、これまでの行動、現在の体力、あらゆるものを考慮し思考する。その時間はわずか1秒にも満たないほどのわずかな時間だったが、彼らに取っては十分な時間だった。
「竜魔の咆哮!!」
シリルのブレス。それを見て天使は微動だにしない。ギリギリまで彼の魔法を引き付けると、転がるようにしてそれを回避する。
「天竜の翼撃!!」
体勢が悪いように見えた天使。そんな彼に向かってウェンディが向かっていくと、それを見た彼は笑みを浮かべていた。
「見切ったよ、もう」
転がりながら彼は脚を伸ばすと迫ってきていたウェンディの胴体を挟むようにして捕まえる。そのまま彼は転がる勢いを使って彼女をすぐ隣に迫ってきていた壁へと打ち付けた。
「天神の怒号!!」
シェリアが動き出そうとするウィバリー目掛けてブレスを放つ。彼はその際レオンの位置を確認しつつ、その場で仁王立ちで待ち構える。
(彼の現在地はあそこ、ならーーー)
魔法を払おうと右手を上げたウィバリー。それを見て動き出したレオンを彼は見逃さなかった。
タンッ
動かした右手を下ろして飛び上がった天使。彼はまるでシェリアの魔法を飛び越えるかのように前方向へと高々とジャンプした。しかし彼女が放ったのはブレス、長い息により奥行きのあるそれを飛び越えることは困難。
(いや、あいつには翼がある。それで上空で待機する気か?)
天使たちには翼がある。それを生かせばシェリアの攻撃も交わすことができるかと考えたレオンは脚を緩め宙に浮いている状態の彼へと飛び付こうとする。しかし・・・
「君ならそうすると思っていた」
「!!」
レオンがジャンプしたタイミングでウィバリーは彼に正面を向けると、シェリアのブレスに片足を入れる。
「ぐっ」
神殺しの魔法である彼女の攻撃を受けてノーダメージでいられるわけはない。痛みに顔を歪ませるウィバリーだったが、彼はそれに耐え抜くと、魔法を踏み台にしてレオンへと突進する。それも高速での回転を起こしながら。
「なっ・・・」
シェリアのブレスは風を起点としているため渦巻き状の魔力の動きをしている。それを受けることにより自身の身体に回転力を付加し、勢いを増して体当たりを試みたのだ。
その速度域に向かっていたレオンが反応できるはずもなく、彼の突き出した拳を腹部へと受け、彼の身体も回転しながら壁へと叩き付けられる。
「レオン!!」
「ウェンディ!!」
壁に叩き付けられた少女の姿に青ざめるシリル。そんな彼女に追撃をしようとした天使だったが、ウェンディもすぐさま行動を起こし難を逃れる。
「大丈夫だよ、シリル」
「よかった。でも・・・」
放った拳が空振りに終わった天使はすぐさま二人の方へと向き直る。その表情を見てもわかるように、鬼気迫るものがあることを感じた二人は額の汗を拭う。
「もう私たちは出し切ってるのに・・・」
「向こうはまだ戦えるっていうのか・・・」
決して無傷とは言えない状態のはずなのに、天使は一切怯むことなく戦いを挑み、そして彼らを上回る攻撃を仕掛けてきている。
(このまま長期戦になればこっちが不利。どうする?)
「大丈夫、シェリア」
壁が破壊されるほどの威力で叩き付けられたレオンだったが、思ったほどのダメージではないようで何とか立ち上がることができている。
(いや、そう見えてるだけで結構ヤバそうかも)
しかしシェリアはそれが彼なりの強がりであることにすぐに気が付いた。元々の蓄積分もあるだろうが、それを差し引いても今の一撃は彼に多大なダメージを与えていたことは言うまでもない。
(これ以上の戦いはいくらレオンでもキツそう。そうなると次の一撃で決めるべきなんだろうけど・・・)
目の前の敵も限界に近いことはわかる。しかし自分の力では最後のトドメを刺すには至らないことも彼女はわかっていた。
(レオンももう相手を倒すほどの力はないと思う。どうすれば・・・)
このまま消耗戦をするしかないのかと思っていたところ、彼女の脳裏に一つの光景が思い出される。手を握り合わせ双方の魔力を融合させていく水色の髪をした女性と黒い髪をした青年。戦っている最中だったにも関わらず、二人の混ざり合う魔力の美しさに見とれてしまっていたことを思い出した。
「レオン!!こっち!!」
ウィバリーも痛みに耐えながら追撃を試みるがシェリアの声に反応したレオンがそちらへと動いたことで何とかそれを逃れる。合流した青年に向かって、少女は手を伸ばした。
「あたしと息を合わせて!!二人の力であいつを倒そう!!」
大魔闘演武でジュビアとグレイが最後に少女を倒した光景。なぜそれに見とれてしまったのかその当時は分からなかったが、今の彼女にはそれが理解できた。
「あたしたちの"愛"であいつを倒すよ!!レオン!!」
何物にも囚われることのない"愛"の力、それを間近で感じ取ったからこそ彼女はその美しさに惹かれ、本来やるべきことができなかった。しかし今、彼女にはそれをするにふさわしい最高のパートナーがいる。そしてそれを受け、青年も彼女の手を取り、握り締めた。
シリルside
(どうする?どうすればいい?)
双方共に限界なのはわかっている。しかしそれゆえに決定打を出すこともままならない。だが、ウェンディがあいつにダメージを与えられるのは付加魔法の効果であることを考えると、これ以上の戦いで不利になるのはこちら。
(滅竜奥義で仕留めたいけど、それで倒せるか予想がつかない。でもそれしか突破口がないのも事実だ)
一か八かの賭けに出るしかないかと考えていたところ、隣に立つ少女が俺の手を取り、握り締める。
「シリル、いつでも私は一緒にいるからね」
迷いのないその目を見て、俺はキョトンとしてしまった。敗北に近付いていることを悟っての言葉だったのか、はたまた何かを思い付いての言葉だったのかは何もわからない。しかし、少女のその言葉は俺の胸にしっかりと届き、一つの考えに至った。
「ウェンディ!!ありがと!!」
「え?」
その発想に至るきっかけをくれた彼女の両手を握り返すと、ウェンディは何事か分からず呆けている。俺は彼女のそれを握り締める手により力を込めていく。
「俺はいつだって誰かに助けられてきたから勝ってきた。でも、今回はそうじゃない」
ティオスとの戦いの時、全員から魔力を預けられ、カミューニさんとラクサスさんが時間を作ってくれたおかげで勝利を納めることができた。それ以外にもいつでも皆さんの手助けがあったから勝つことができたけど、今回に関してはそれでは勝てない。
「俺と意志を合わせて!!ウェンディ!!」
「意志を?」
「そう!!俺とウェンディの力を合わせて、あいつを倒す!!」
ウェンディに助けてもらいながらトドメを刺すのではなく、ウェンディと力を合わせて勝ちに行く。この限られた条件の中でこいつを倒すには、もうそれしかない。
「うん!!わかった!!」
俺の考えを読み取ってくれたらしく、ウェンディも手を握り返してくれる。俺たちは手を握り合わせたまま天使に向き合うと、二人の魔力と意志を合わせるように高めていく。
第三者side
次第に高まっている二人の魔力。しかもそれはバラバラにではなく、一つのもののように合わさっていくのを目の前の天使たちも気が付いていた。
「な・・・これは・・・」
レオンとシェリアと対するウィバリーは自身の脳内にあった二人の魔力の限界値を上回っていくそれに戦慄していた。
「まさか・・・こんなとっておきを隠していたのか?」
シリルとウェンディと対する天使もそれが何を起こそうとしているのかを察知し、額から汗が流れ落ちる。
「合体魔法・・・これが使えるなんてデータはなかったはず・・・」
二人の意志と同じように魔力が次第に合わさっていき、彼らから見てもとてつもなく大きなものになっていることがわかる。それは自分たちではどうしようもないほどに。
(私が見落としていた?いや、そんなことはありえない。つまり・・・)
まだまだ上がり続けるレオンとシェリアの魔力。それを見てウィバリーは突進を試みた。
(この魔法は初の試み。まだ練り上がるまでに時間がかかるはず!!)
発動までに時間を有すると読んだウィバリーは賭けに出た。距離もタイミングも微妙、しかし二人がこれを発動すれば自身の敗北は免れない。それならばと彼は二人の魔力が融合し切る前に倒すべき動いた。
「この魔力・・・これをただの住民が放てるというのか?」
その頃もう一人の天使はシリルとウェンディの融合していく魔力が自身がこれまで経験したことのないほどに高まっていることに恐怖を感じ、動けずにいた。
(今の私ではこれに対抗する手立てがない。これほどの力を彼らは残していたというのか?)
自身も目の前の二人も満身創痍。双方共に余力などないと考えていただけに今の二人の魔力に理解ができず、自慢の思考力が一切機能していなかった。
「「ハァァァァァァァァァ!!」」
気合いを入れるように叫ぶ二人の小さき竜。その声さえもピッタリと合わせられたかのように響き渡り、彼らは握り合わせた手を天使目掛けて打ち出した。
「こんな・・・ことが・・・」
混ざり合った水と風、それは瞬く間に目の前の敵を飲み込んだ。
「行くよ!!レオン!!」
「あぁ!!シェリア!!」
最後の攻防へと動いていたウィバリー。彼は二人の魔法の発動前に自身の攻撃が届くことを信じ、翼を広げて加速する。
「間に合う!!間に合わせてみせる!!」
脳裏に蘇るのは自身が仕える神の姿。彼から出された使命を全うすることこそが彼にとっての至高だった。
「「行っけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」」
二人に到達したかに思えたウィバリー。しかし、彼が目の前に来たと同時に、二人の拳は前へと突き出された。
「くっ」
まるでこの事態を読んでいたかのように打ち出された二人の手。ウィバリーもそれに対抗しようと自身の拳を突き出したが、二人の合わさった魔力の前には無力だった。
「なっ・・・」
砕け散る自身の腕。彼らの拳を塞ぐ術を失った彼の身体に容赦なく二人の握り合わされた手が叩き込まれる。
「そんな・・・バカな・・・」
対策も対応も完璧にこなしてきたはずだった二人の天使。しかし最後の最後に二人の神と二人の竜による合体魔法は彼らの予想も読みも全てを上回り、敗北した天使たちは抗うこともできず、地面へと叩き付けられた。
後書き
いかがだったでしょうか。
原作では合体魔法と明言されたところが一ヶ所しかなかったために合体魔法がどこまで許容されるのかわからず勝手な解釈の元に書いております。そこはご了承していただければ幸いです(*・ω・)スマヌ
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