FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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二人ならきっと
前書き
突然文章の神が舞い降りたのかめっちゃ文面が頭に浮かんできて忘れないうちに書いていたら早めにできました。
次は土日のどちらかで出せれば最高かなって感じですね。
第三者side
船から降りた二人の人物。そのうちの一人、赤い髪をした青年は背伸びすると、口を大きく開きあくびをする。
「いいのか?」
「何が?」
「評議院に連絡をするんじゃなかったのか?」
「あぁ・・・おめぇめっちゃ急かすなぁ」
仕方ないといった様子で通信用魔水晶に手を伸ばすカミューニ。彼はそれを耳に当てると、すぐに相手の声が聞こえてきた。
『カミューニ殿!!戻られたのか?』
「ウルフヘイムの容態は?」
イシュガルの四天王の中で唯一天使との遭遇に成功したウルフヘイム。しかしその結果は無惨なもので、彼は完膚なきまでに叩きのめされてしまった。
『命には別状はないが・・・』
「いや・・・そこまで分かればいい」
これ以上聞くのは酷だろうと判断した彼は話を遮る。今重要なのはそれではないと彼は質問を変えた。
「一緒に連れていった連中から色々聞いてんだろ?天使の人数は?」
『三人・・・だが、戦ったのは一人とのことじゃ』
「どんな魔法を使ってたかは?」
『それもこれまでの報告通りになっておる』
「なるほどな」
唸り声を上げながらこれまでの情報を整理するカミューニ。ジュラはその間にも今回の情報を彼に伝えているが、ほとんど耳に届いていない。
「お前はどう思う?相手の魔法」
『あくまで推測の域は出ないが・・・奴らは恐らくどの属性の魔法も使えると考えて良いだろう』
「やっぱりそうか」
これまでの報告から多種多様な属性の魔法を使ってきているらしい。何か一つに特化しているのではなくあらゆる魔法を満遍なく使える。そうなると対策が難しいことは言うまでもない。
「しかもそれが毎回三人・・・どうしたもんかねぇ」
『こればかりはなんとも・・・』
ジュラも彼同様の反応を見せる。二人はどうするべきかの対策を考えてはいるものの、それが思い付くことはなかった。
「とりあえず、ゴッドセレナたちにも対策を考えるように伝えてくれ。俺も戻りながら考えておくから、後で意見を出し合おう」
『わかった。それと・・・』
「なんだよ」
『様を付けた方が良いと思うぞ』
改まって何を言うのかと身構えていたカミューニだったが、彼の厳しい性格からの指摘に適当に返事をして通信を切る。それを待っていた黒装束の男は彼のアイコンタクトを受け、横に並ぶ。
「こりゃあなかなかな事態になってるな」
「その割には余裕だな」
「まぁ・・・焦ったところでどうしようもねぇしな」
表面上は普段通りの彼に見えるが、心中は穏やかではない。自身が想定していたよりも事は深刻だ。
「もしシリルたちが当たってる連中も三人一組だとすると・・・ミネルバたちだけでは足りないか?」
シリルたちが天使と遭遇していることはわかっているがその後の状態は把握していない彼は不安な気持ちでいっぱいだった。もしここでシリルとレオンがナツたちのようになってしまえば、ただでさえ落ち込んでいる戦力が目も当てられない状況になる。
(何か・・・何か打開策はないのか?)
今から援軍を送っても間に合わないことは理解している。しかしそれではみすみす戦力の低下を引き起こしてしまう。懸命に思考を巡らせている彼の姿を見た男は何かを考えている。
「役に立つかはわからんが、面白い情報なら知ってるぞ」
「面白い情報?」
カミューニはこんな時にという感情となぜか興味を引かれている自身に驚いていた。なぜかわからないが、この話を遮ることをするのはいけない、そんな気持ちに彼はなっている。
「あの依頼書の山、覚えてるか?」
「うわっ!!忘れてたのにやめてくれよ」
今にも崩れ落ちそうな・・・なんなら何回も崩れてその度に押し潰されてきた依頼書の山。今回の天使騒動のせいでそちらにも手が回りきらず、ますます膨らみ続けるそれを思い出し、青年は吐き気すら感じていた。
「あの依頼書は国ごとに分けてあったよな?」
「そりゃあな、可能なら同じ国で何個も依頼してもらった方が効率いいかんな」
現実にはその考えは打ち砕かれ、ほとんどの依頼が手付かずの状態になっている。だが、今はそれは重要ではなかった。
「あの中でほとんど依頼がなかった国・・・正確には大陸があるのに気付いたか?」
「ん?そんなとこあったか?」
あまりの書類の量に思考を押し潰していたカミューニは彼の問いに記憶がなく、腕を組み首をかしげている。そんな彼の様子を気に止めることもせず、男は話を続ける。
「その大陸から依頼が来ない理由は簡単だ。俺たちが足を踏み入れなかったからな」
「はぁ!?なんで!?」
彼の言葉にビックリ仰天。思わず出た大きな声に周囲が視線を向けているが、青年はそれを気にすることなく問いかける。
「なんでそこには行ってねぇんだよ!!おかしいだろ!!」
「最初は行くつもりだった。ただ、途中であいつがその計画を中断したんだ」
「なんで?」
「それは俺も知らん。ただ、時間がかかりすぎて間に合わなくなるとだけは言ってたな」
「時間がかかる・・・」
その言葉を聞いていくつかの仮説が出てくる。しかしどれも推測の域を出ることはないが、一つだけ確実なことがある。
「その大陸になら戦える魔導士が残ってるってことか?」
その問いに男は答えない。相槌も何も返されなかったが、青年は一縷の希望に目を輝かせた。
「そうと決まればすぐに確認しよう。もしかしたら化け物みたいな奴がいるのかもしれねぇしな」
重かった足取りが軽くなったのか、大急ぎで駆けていく青年。その後ろ姿を見ていた男は額を指でかいた後、溜め息をついた。
「まぁ、あまり期待はできないだろうがな」
希望を見出だした青年に聞こえないように小さな声で呟く。彼はわかっていた、かつての友の性格を。
(もし強い奴がいるのなら、あいつは俺を煽ってそいつを真っ先に潰しに行く。恐らく時間がかかる理由は他に何かがあるのだろう)
その理由が何かはわからない。それが気になったが故に青年へ情報を流した彼だったが、予想以上の反応に頭をかかずにはいられない。
(あの二人がそう簡単に負けるとは思えんがな)
天使たちの実力を自身の目で見ていないためなんとも言えないが、戦っている二人の実力は把握している。
(一人なら厳しいかもしれんが、二人が協力し合えれば・・・)
そこまで考えて、思考するのをやめた。彼は大事な点を見落としていることに気が付いたのだ。
「そうか、相手は一人じゃなかったか」
基本的に三人で行動しているという情報がある以上、シリルとレオンが共闘にこぎ着けることは難しい。彼らの性格なら、例え問題が取り払われた後でも各個撃破に走るのは目に見えているからだ。
「おい、早く行こうぜ!!」
「あぁ、わかった」
大分距離が離れてしまった青年の後を追うように歩を進める。しかし決して走ろうとはしない。それを見てカミューニは貧乏ゆすりをしているが、それに気が付いても急ぐことはしない。
(あの二人じゃなくてもいい。せめて複数で戦える状況が作れれば、今のあいつらでもーーー)
シリルside
「竜魔の・・・」
「天竜の・・・」
「「咆哮!!」」
頬を大きく膨らませ一気にそれを解放する。合図をしなくても息があった攻撃ができるのは俺たちならではのコンビネーションだと思う。
「ウェンディ!!」
「うん!!わかってる」
相手の動きは相当速い。恐らくこのブレスは回避される。だけど、この狭い通路ならどこに逃げても追撃は可能。そう思い相手の次の行動を凝視していたところ、天使は想定外の動きに出た。
ダッ
「「!?」」
俺たちの放ったブレスに一直線に駆け出したのだ。この行動は予知できなかったため、動き出すことができない。
「邪魔」
ここからどうやって対応してくるのか見ていると、天使は俺たちのブレスを片手で横に流すように弾き飛ばす。その結果壁が奥の方まで破壊されていたが、彼はそれに見向きもせずに突っ込んでくる。
「竜魔の・・・」
「遅い」
飛び込んでくる相手にタイミングを合わせ拳を握るが、相手は加速が乗った状態。魔力が溜まるよりも早く懐に入られ、そのまま拳を入れられる。
「がっ!!」
「シリル!!」
「よそ見してる場合じゃないよ」
「!!」
魔力を纏っていた拳により飛ばされた俺を心配して視線を敵から切ってしまったウェンディ。それを相手は見逃すことなく、彼女の脇腹に回し蹴りを入れる。
「きゃあ!!」
反応することもできず壁に打ち付けられるウェンディ。そんな彼女の身体が地面に落下するよりも先に天使はその細い首を掴み持ち上げる。
「ウェンディ!!」
先程の一撃からようやく立ち上がることができた俺は最愛の少女の名前を叫ぶ。そんな俺の方へと天使は顔を向けると、冷めた表情で口を開いた。
「我々は他の世界の住民を殺すことは本来禁じられている。だが・・・」
冷めきった目のまま突然口角が上がる天使。それを見た時、全身から鳥肌が立つのがわかった。
「その罰を全て私が受け入れる覚悟さえ持てれば、大した問題にはならない」
罪を犯せば罰せられる。そのため誰もがそれに従わざるを得ないはずなのに、天使はそれを受け入れることで掟を破るという。そしてこれはハッタリではない、目を見ればわかる、こいつは本気でこんなことを言っている。
「正気か・・・」
「あぁ。だが安心してもらっていい」
ウェンディの首をなおも締め上げながらこちらへと視線を向ける。
「もし君が我々と付いてきてくれるなら、彼女の命を奪うことはしないよ」
「っ・・・」
ウェンディを人質に取られた俺は奥歯を噛みながら頭の中をフル回転させていた。
シェリアside
「がっ・・・」
レオンの腹部に突き刺さる相手の拳。その姿が一年前のあのシーンと重なり、あたしは思わず口元を押さえる。
「レオン・・・」
衝撃的な場面に声すら出ない。最悪の事態が脳裏を過るが、彼は空中で身体をうまく回転させると地面に着地し事なきを得る。
「ぺっ・・・クソッ」
口内にあった血液を吐き出し天使を見据えるレオン。その表情を見た時、あたしは背筋に冷たいものが流れるのを感じた。
「え・・・」
一年前にフィオーレを混沌へと誘ったティオス。顔が同じだからかと思っていたけど、殺意が浮かび上がっているそれはあの時の存在を彷彿とさせるものだった。
「レオン!!」
「俺なら大丈夫!!大丈夫だから」
あたしの方をチラリとも見ずに突進していくレオン。天使は彼の拳を簡単に払うと、血が滴り落ちる腹部に膝を蹴り込む。
「このっ・・・」
それに怯むことなくブレスを放ったレオンだったが、天使は爆転しながらそれを回避し、彼に指を向ける。
「君は捕虜にしたいからね、眠っててくれ」
そう言いながら放たれたレーザーは彼の肩を貫く。その勢いに負けた彼は後方へと倒れ込んだ。
「レオン!!」
これはもう見ていられなくて彼に駆け寄る。治癒の魔法をかけようとしたところで、レオンは立ち上がると、あたしの頭に手を乗せる。
「カッコ悪いとこ見せてごめん。でも、最後には俺が必ず勝つから」
いつもの彼ならそれを聞いただけでカッコいいと思える。でも、今は違う。押されてて頼りないとかではない、彼のその表情がティオスに似てきていることが恐ろしくて仕方がない。
「レオ・・・」
止めるべきだと声をかけようと思った。でも、彼のその形相に思わず伸びかけた手を下ろす。今声をかけるのは彼のプライドに響くのではないか、そうなると彼があのようになってしまうのではないか、色んなことが脳裏を過る中、あることを思い出した。
『どうして何も言わないの!?レオン!!』
『っ・・・』
初めてティオスと会った時、レオンと勘違いしたあたしは彼にしがみついて声をかけ続けた。彼はそれに答えることはしなかったけど、明らかに他の人たちへの反応と違うのはわかった。
「もしかして・・・」
ティオスの時代ではあたしはきっと死んでいる。そしてそのことによってレオンは感情が抑えきれなくなってあのようになってしまった。そう考えるとあたしがやるべき行動は自ずと見えてくる。
「レオン」
「大丈夫!!大丈ーーー」
一人で戦い続けようとする彼の背中を抱き締める。突然の出来事に彼は静まり、あたしに視線を向ける。
「あたしはいつでもレオンと一緒にいる。ううん、いつでもレオンを支えるし、レオンのことも助ける。だから・・・」
彼の背中から離れ、彼の頬を両手で押さえ、そのまま唇を重ね合わせる。突然のことに目を白黒させているレオンだったけど、あたしは気にせずそれを離すと、今の想いを告げる。
「あたしをあなたの横にずっと居させてください」
あの戦いの後、あたしたちは付き合い始めた。いつどうなるかわからないとお互いに感じたこともあるし、あたしがレオンのことを好きだったことはちゃんと伝えられてたから。
でも、そこからあたしたちはおかしくなっていたのかもしれない。レオンは誰よりも優れた力があるからそれを見せつけるように常に圧勝してくれて、そしてあたしはそれを見て興奮しながら優越感に浸っていた。でも、今日の彼の表情を見てわかったことはある。
彼はどれだけ強くても普通の男の子なんだってこと。背も伸びて、魔力も上がって頼れる存在になったと思っていたけど、そうじゃないんだって。彼の精神は子供の頃に一度打ち砕かれていて、不安定になりやすい。それを支えて上げられるのは、あたし以外にはあり得ない!!
「やろうレオン!!二人ならどんな相手だって倒せるよ!!」
あたしが手を差し出すと、彼はキョトンとした表情をしていたけど、すぐに正気を取り戻し笑顔を見せる。そして彼はあたしの手を掴むと、ギュッと握りしめてくれた。
「ありがと。シェリアがいてくれたら、俺に怖いものなんてないね」
「あたしも!!レオンとならなんだってできるよ!!」
二人の合わさった手から力が漲ってくるのがわかる。あたしたちはその手を離すと、目の前の脅威へと視線を向けた。
シリルside
「あ・・・う・・・」
天使の手にますます力が入っているのが遠目からでもわかる。それによりみるみるウェンディの顔から生気が抜けているのも。
「どうする・・・いや・・・」
何が正解かわからず動き出せずにいたが、そもそもそれが間違いではないかと思った。今俺が付いていけば全てが丸く収まるかと言えばそうではない。確実にウェンディに悲しい想いをさせてしまう上に、今戦っているレオンや敵を倒してくれたグラシアンさんの努力を無下にしてしまう。
「となれば俺がやるべきことは・・・」
地面を蹴り天使の間合いへと一気に詰める。彼はこちらへ大半の意識を向けていたこともありすぐに反応をしてきたが、俺はそれを上回る術をまだ残している。
「はあっ!!」
ドラゴンフォースを解放しさらなるスピードを手にいれた俺はウェンディを掴んでいる相手の腕を殴り付ける。
バキッ
パキッ
「ぐっ」
「くっ」
嫌な音が相手からも、俺からも聞こえてきた。天使は曲がった腕に力が入らなくなったのかウェンディを離すと、俺は痛む手を伸ばし彼女を受け止める。
「大丈夫?ウェンディ」
「うん、私は大丈夫だけど・・・」
赤く腫れ上がっている俺の手を見て心配そうな表情を見せるウェンディ。本当はかなり痛いし彼女に治癒魔法をかけてもらいたいところだけど・・・
「ふんっ」
至近距離にいる天使がそれを許すわけがない。彼は折れているはずの腕を振るってこちらへ裏拳を放ってくるが、ウェンディを抱え込むように小さくなり何とか回避すると、その隙を付いて距離を取る。
「ウェンディ、動けそうになったら手伝って」
痛いことは痛いけどなんとか力は入れれる。変な音や違和感があるがそうとは言っていられない状況なのも確か。ここは無理を場面だろう。
「竜魔の顎!!」
両手を握り合わせて攻撃を打ち出す。天使はそれを避けたため地面に俺の手が突き刺さる。
「っ・・・」
予想を超える痛みに表情が歪む。しかし相手からの反撃はない。恐らく向こうも相当痛みを耐えているからに違いない。
「竜魔のーーー」
相手から攻撃が来ないならこちらが攻めに回れるチャンス。この好機を逃がさないために俺は痛む身体にムチを打ち、追撃へと動いた。
ウェンディside
手の色が変色し明らかに骨に異常を来しているのがわかるシリルの手。でも、今まで彼自身が放った攻撃でそんなことになったところを見たことがなかった私は困惑していました。
「なんで・・・」
相手の腕が折れているのはわかる。それならなぜ彼の手が砕けたのか考えていると、私はあることに気が付いた。
「シリルって、滅悪魔法とドラゴンフォースを一緒にやったことなかったはずじゃ・・・」
悪魔を滅する魔法とドラゴンの力を扱えるとされるドラゴンフォース。これを二つとも彼は自分のものにしていましたが、それを同時に発動しているところなんか見たことがありません。
「もしかして・・・」
シリルは以前、滅悪魔法により思考が"悪"に支配されかけたことがあった。そしてドラゴンフォースは爆発的な力を手にする代わりに身体に大きな負担がかかるため、私もスティングさんたちもあまり使っていません。
「身体への負担が限界を超えているんじゃ・・・」
一年前、皆さんの魔力を与えられティオスへと挑み、勝利を納めたシリル。しかし彼はその直後、その反動で記憶を失ってしまいました。もしあの時と同じように彼の身体に負担がかかっていて、そのせいで自身の放つ攻撃に耐えきれていないのだとしたら?
「シリル・・・死んじゃうかも・・・」
そう考えただけで涙が溢れてきました。まだそう決まった訳じゃないのに、がむしゃらに攻めていく彼の姿を見ていると、嫌な予感が拭いきれません。
「シリル!!」
動きが悪い脚を一度叩きぶつかり合う二人の元へと駆けていく。その間もシリルはとにかく攻めていきますが、その身体からは次々に異変が出てきていました。
目から流れる赤い液体、折れていたのは手だけだったはずなのに、腕も少しずつ変形しており、明らかに異常を来しているのが目に見える。
そして極め付きは彼の左腕から伸びる滅悪魔法の模様。それがドラゴンフォースのオーラに合わさるように黒い魔力を放っており、彼の魔力の性質が変わっているように感じました。
「このっ!!」
「ぐっ!!」
あまりの猛攻に一度体勢を立て直そうと天使は折れている腕を反対の腕で抑えながら凪ぎ払う。その行動は彼自身にも多大なダメージを与えているようでしたが、限界を迎えつつあるシリルにはそれ以上のダメージを与えられているようでした。
「まだまだ!!」
着地の際に足首が通常よりも曲がっていたにも関わらず、それを気にすることなく彼は再度攻撃に転じようとしました。私はそんな彼の背中にしがみついてーーー
「待って!!シリル!!」
今まで出したことがないほど大きな声を張り上げました。
「ウェンディ?」
私の声に気が付いた彼は動きを止め、私を横目に見ています。そんな無防備なシリルの頬に私は自分の唇を押し付けました。
「っ!?////」
何が起きているのかわからず頬を抑えて顔を赤らめるシリル。そんな彼の顔を覗き込みながら、私は素直な気持ちを伝えました。
「無理しなくていいよ、シリル。シリルには私が付いてる。私がシリルの力になるから、だから・・・」
言いながらも涙が溢れてきて、言葉に詰まってしまいました。そんな私を見てシリルは冷静さを取り戻したのか、私のことを抱き締めてくれました。
「ありがとう、ウェンディ。俺、ちょっと焦ってたかも」
いつものような可愛らしい笑顔を見せてくれたシリル。そんな彼を見て私も笑顔になりました。
「こいつを倒すよ、俺たち二人で」
「うん!!力を合わせよう!!シリル!!」
彼の横に立ち相手を見据えます。天使は私たちが話をしている間に曲がっていた腕を無理矢理正常な方向へと戻していました。
「ギリギリ動く。動くなら、私は負けない」
自身の力に絶対の自信を持っているのでしょう、彼はこの状況でも冷静さを失っていません。でも、もうさっきまでのようには行かない。
「さぁ!!行こう!!ウェンディ!!」
「うん!!頑張ろう!!シリル!!」
拳を互いに合わせて意志を確認すると、さっきまでの不安や恐怖が嘘のように身体に力が漲ってきます。
そしてそれは私だけではないようで、シリルも余裕を見せるように笑みを浮かべており、そのおかげでますます私はやる気が出てきました。
「はぁっ!!」
ドラゴンフォースを解放し魔力を最大まで高めていきます。この戦いの最終局面、絶対に勝ってみせる!!二人ならきっとそれができるはずだから!!
後書き
いかがだったでしょうか。
レオンとシェリアのやり取りがうまく行きすぎてシリルとウェンディが二番煎じみたいになってしまったのが少し後悔。
次でこのバトルは終わります、絶対に終わらせます(*・ω・)ジシンアル
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