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イベリス

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第八十九話 遊ぶことその八

「そうした人達を知ってるとね」
「吸えないですか」
「今じゃ親戚誰も吸わないわ」
「その人達のこと思い出すからでしょうか」
「そうかもね、兎に角親子で嫌われていたから」
「親戚中で」
「そう、だからね」
 そうした事情があってだというのだ。
「健康やお金のこともあるし」
「それがいいでしょうね」
 咲はここまで聞いて述べた。
「煙草については」
「そうでしょ」
「兎に角身体に悪いですから」
 このことは紛れもない事実だからだというのだ。
「本当に」
「そうよね」
「はい」
「しないことよ、まあ煙草吸ってる人に駄目人間多いのは偏見ね」
「だからといってですね」
「駄目とは限らないわね」
 先輩は自分で言った。
「私の偏見ね」
「親戚の人達がそうであるだけですか」
「絶対ね、一人が駄目でも」
 煙草を吸っている人間がというのだ。
「皆そうとは限らないわね」
「麻薬と違って犯罪じゃないですしね」
 身体に悪くともとだ、咲も応えた。
「ですから」
「そうよね、親戚で他にも煙草吸う人いるけれど」
「その親子さんだけ特別ですか」
「ええ、どうしようもない人達は」
 それこそというのだ。
「他にいないわ」
「それはいいことですね」
「何か嫌いな人がしていることで」
「そのこと全部に偏見持つのはよくないですか」
「やっぱりね」
 これまた自分で言った。
「それはね」
「そういえば芥川龍之介も煙草吸ってて」
 咲はこの作家の話をここで思い出した。
「一日百本位は」
「それは凄いわね」
「兎に角ヘビースモーカーで」
「いつも吸ってたの」
「そうだったみたいです」
「あの人は凄い頭よかったのよね」
 咲のボールを受けつつ応えた。
「作家さんとしても言われてるし」
「そうですよね」
「元々エリートで」
 そう言っていい立場だったというのだ。
「東大にも入ってるし」
「何か抜群に成績がよかったらしいですね」
「中学から高校に無試験で入ってるのよね」
 第一高等学校にである、今で言う東京大学教養学部である。
「そこからね」
「エリートになったんですね」
「海軍で英語教えてたのよね」
 海軍機関学校、機関科士官を育てる学校においてだ。こうした学校で教師を務める位の立場であったのだ。
「あの人は」
「それ凄いですよね」
「それで作家さんとしても成功して」
 まさに流星の様に表れ若くして文壇の寵児となった。
「もう文字通りの文豪にね」
「なれましたね」
「夏目漱石さんの弟子筋だったけれど」
 その為漱石を終生敬愛していたという。
「お師匠さんすらね」
「超えたかも知れないですね」
「長生きしていたらね」
「自殺してますからね」
 芥川はとだ、咲も述べた。 
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