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星河の覇皇

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第八十三部第三章 今だ目覚めずその四十二

「しかしだ」
「それでもですね」
「我々もまだやりたいことがあります」
「この世界において」
 天国に行くにはまだ早い、そう考えているのだ。
「ですからまだです」
「まだ死にたくありません」
「家族のこともありますし」
「我々としては」
「私もだ、軍人は常に死と隣り合わせだ」
 そうした職業だとだ、艦長も話した。
「戦いに勝利しても死ぬ者もいれば」
「負けて死ぬ者もいる」
「そこはわからないですね」
「全てはアッラーの思し召しですね」
「そうだ、イスラムは勇敢さを尊び」
 そしてというのだ。
「そのうえで戦うことをよしとするが」
「それでもですね」
「自暴自棄は認めていません」
「そして自殺も」
「死に急ぐことも」
「コーランの登場人物には誰一人としていない」
 自暴自棄になったり死に急ぐ者はというのだ。
「常に逆境でもだ」
「逆に燃え上がる」
「困難を見て奮い立つ」
「そしてその困難に打ち勝っていますね」
「それがコーランですね」
「コーランは聖書とは違う」 
 これは旧約そして新約共にだ。
「絶望や苦難はない」
「困難はありますが」
「それでもですね」
「それはあくまで乗り越えるもの」
「誰も死に急ぎません」
「絶望もしません」
 勿論苦難を感じることもだ。
「苦難はあくまで困難です」
「苦難と困難はどう違うかは置いておいて」
「イスラムでは自暴自棄はないです」
「自殺もありません」
「戦争でも死に急ぐことはありません」
「決して」
「だからだ、我々もだ」
 これからの戦いにおいてとだ、艦長は話した。
「いいな」
「はい、勇敢にですね」
「勇敢に戦い」
「そのうえで勝ちますが」
「あの攻撃が何か」
「それが問題ですね」
「正直わからない」
 艦長は本音を述べた。
「あの攻撃が何か」
「我々もです」
「艦隊司令もその様ですね」
「そして軍団司令も」
「司令部においても」
「何もかもがわかっていない」
 全くとだ、艦長は言った。
「まさにな」
「左様ですね」
「あれは何でしょうか」
「いきなり後方や側面から魚雷が大量に来ます」
「姿は見えません」
「あの攻撃は何か」
「まことに謎です」
 艦橋の誰もがこう言うばかりだった。 
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