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おっちょこちょいのかよちゃん

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268 人質解放の駆け引き

 
前書き
《前回》
 杉山はレーニンを通してベニートから剣を奪還した高校生男子が新たな武器を手にしたと聞いてその高校生の元へ向かおうかと検討する。その一方、かよ子達の前に現れた偽の杉山は杖を渡すようにかよ子に求めるが、かよ子には流石にそれはできない。のり子の人形・キャロラインで正体を見破るが、それは木の操り人形だった。それが黒魔術の使い手によるものと解るとかよ子は黒魔術の使い手に対して怒りが込み上がるのだった!! 

 
 杉山はレーニンと共に次の目的の為に南東部へと進んでいく。
「んでよお」
「何だ?」
「結局俺の偽物を使うっていう作戦あんま意味なかったんじゃねえのか?」
「確かにそうかもしれぬ。あの杖の所有者もやはりそこまでおっちょこちょいはしないと言う事か。甘く見すぎていたかもな。だが、ラ・ヴォワザンもあの偽物が杖の所有者に当たった事は幸運に思うであろうな」
「どういう事だよ?」
「ラ・ヴォワザンが作った人形には奴等を索敵する術も掛かっているのだ。仮に倒されても人形は杖の所有者達に付き纏う事になるのだ」

 かよ子達は昼食の炒飯(チャーハン)を口にしていたが、先程の偽の杉山との戦いを引きずっていた。
「黒魔術か・・・。面倒だな・・・」
「オイラもアイツとは当たりたくないブー」
「確かにラ・ヴォワザンは面倒だな・・・。俺の法力でも攻略しきれねえし・・・」
「なんじゃ、その『らぼーさん』とは?」
 友蔵は質問したが、皆が「は?」と呆気に取られた。
「アンタもう忘れたんですか?黒魔術を使う女ですよ!アンタも毒で殺されそうになったじゃないですか!」
 関根は呆れた。
「ああ、そうじゃった、あの魔女か!」
 友蔵はラ・ヴォワザンとの交戦をすっかり忘れていたのだった。
「兎に角、またあいつとはぶつかりそうだぜ。できればアイツと会う前に藤木を連れ返さねえとな」
「うん・・・!!」
 一方、かよ子はあの黒魔術の事が気になった。
(この杖にも黒魔術を打ち破れる力があるといいんだけどな・・・)

 フローレンスは境界線にて赤軍の軍勢を待ち伏せしていた。そして飛行機が訪れた。
(来ましたわね・・・)
 次々と飛行機が着陸した。赤軍及び東アジア反日武装戦線の人間が次々と降りて来た。
「来ましたわね」
「貴女が平和主義の世界の長ね」
 赤軍の長・重信房子が睨みつけた。
「はい、フローレンスと申します」
「西川純と佐々木則夫はいるのかしら?」
「ええ、こちらに。それではそれぞれの要求に応じますとしましょう」
 フローレンスは西川と佐々木を房子の方に戻した。
「それでは・・・、こちらからの要求といたしましてそちらの戦争主義の世界の方々共々そちらの領土から引き上げまして我々平和を正義とします世界に返還を求めます」
「解ったわよ・・・。トロツキー!」
「はっ!」
(来ましたか!)
 フローレンスはすぐさま結界を張った。トロツキーの瞬殺の術が防御された
「皆!この女を殺害するのよ!」
「了解!」
 赤軍や東アジア反日武装戦線が総力戦に掛かる。しかし、平和を正義とする世界の長であるフローレンスでも纏めてかかられて倒れる者ではない。フローレンスは飛行した。
「逃げる気だな!」
 日高はどこからか大量の火炎瓶を投げた。そして丸岡が矛盾術を行使した。
(あいつの防御は全て意味がなくなる・・・!!)
 だが丸岡のその矛盾術は通用しなかった。火炎瓶が全てその場で爆発したが、フローレンスには効いていなかった。
「この女、まさかその対策を・・・!?」
「そうです。ですが、私の力ではありませんわ」
「・・・って事は他に誰か来てるのかしら?」
 房子は見回した。周囲に人が次々と現れていた。
「我々の世界を守護しています者達に集まって頂きましたのです!」
 一人の女性が何らかの動物を召喚した。麒麟だった。麒麟が威嚇した。
「そんな物が怖いと思うか。トロツキー、やっておしまい!」
「はいはい」
 トロツキーは麒麟を召喚した本部守備班の女性を抹殺しようとした。しかし、麒麟の能力なのか、全く効かなかった。
「何!?」
「我々がやってやる!」
 東アジア反日武装戦線の組織「さそり」が拳銃を乱射した。麒麟が喘ぎ声を出す。
「毒入りの銃だ。これで何もできん」
「よし、続けてここの者共纏めてやるのよ!」
 房子は命令した。しかし、誰も動かない。
「・・・な、何をグズグズしてるの?!」
「総長、なぜか体が動きません!」
「な、バカな!なら私が」
 房子は拳銃を取り出そうとした。だが、途中で身体が止まる。
「な、何なの、これは・・・!?」
「貴方達、麒麟という物を傷つけますとどうなりますかご存知ですか?」
 フローレンスは問うたが、返答を待たずに言葉を続けた。
「麒麟はですね、傷つけると不吉な事が起きますと言われていますのです。そしてさらに貴方達が獲物としています物を持ちます方もおいでですわね」
 その場には護符の所有者やあの秀才の少年もいた。その護符からは天使が現れた。
「これは天使ガブリエルよ」
「な、あの護符、天使などを使えるようになったのか!?」
「この地で取引があるって聞いたからここまで飛んでこれたのよ」
 そして長山は神通力の眼鏡で取引の内容を天耳通で確認した。
「どうやら赤軍は人質を返して貰ったらここから引き上げるって約束をしているらしい」
「それじゃあ、帰って貰おうかしら!」
 さりは別の天使を召喚した。天使ラファエルだった。ラファエルが傷ついた麒麟を癒やした。そして麒麟は赤軍を睨みつけた。
「な・・・」
 麒麟の能力なのか房子達は何もできずその場から消えていく。
「じょ、冗談じゃないわよ!折角ここまできて敵の長と相対したのに殺せないなんて・・・!!」
 赤軍達は完全に姿を消した。
「皆様。どうも力をお貸しくださいましてありがとうございました。赤軍は何とか撤退させます事ができました。皆様、持ち場へお戻りになられまして結構です」
 フローレンスは皆に感謝した。
「フローレンス、でもまた奴等は攻めて来るんじゃないかしら?」
 さりは尋ねた。
「そうですね。しかし、こちらも少しずつ領土を取り戻しつつあります。引き続き気を緩めません方がいいですわね」

 房子達は強制的に戦争主義の世界の本部に戻された。
「くう、あと少しで平和主義の正義の長を討ち取れると思ったのに・・・」
「しかし、総長、西川と佐々木は取り返せたのでそこはよしとしますか・・・」
「そうね、また皆で戦えるわ。次こそは捕虜にされないようにするのよ!」
「ところでレーニン様はどちらへ行かれたのか?」
 トロツキーは周囲を見回した。
「まあ、トランシーバーで聞いてみましょう」
 房子はレーニンと通信した。
「こちら重信房子。レーニン様、平和を正義とする世界の長は倒せませんでしたが佐々木規夫と西川純の奪還に成功しました」
『そうか、こちらは東部の方へと向かっている。ご苦労だったな』
「レーニン様、そちら援軍はいりませんか?」
『ああ、付近にも味方はいるからな』
「そうですか。失礼致します」
 連絡は終了した。
「兎に角、次の手に移ってやり直すのよ。杯を取り返そうとしている馬鹿達や杖の持ち主達も近くまでうようよしてきているから」

 レーニンと杉山は東側へと進む。
「そうか、西川純と佐々木規夫を取り返したか。もう人質を取られるような事はされてたまるか」
(人質解放したか・・・。フローレンス達も情けを見せたって事か・・・。さすが『あの世界』らしいやり方だぜ)
 杉山も心の中では平和主義の世界の人間を称賛していた。しかし、完全に寝返ったのか、まだかよ子達の味方である自覚は残っているのか、それは本人にしか分からない。 
 

 
後書き
次回は・・・
「魔女と公爵夫人」
 藤木はりえが体調を崩して眠っているのを待っていた。彼女が起きた時、藤木はまたりえにピアノが聴きたいと言って、りえはその要望に応える。そしてかよ子達はある古城の近くに辿り着く。その杖の所有者を狙いにあの黒魔術の使い手が迫っていた・・・!! 
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