おっちょこちょいのかよちゃん
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267 偽物に惑わされるな
前書き
《前回》
かよ子達は急に杉山と再会する。戦争主義の世界の側に寝返った筈なのにもう用はないと言ってかよ子立の中に加わろうとする杉山にかよ子達は信用ができない。関根の刀で彼が本物の杉山なのかを確認した結果、それは偽物と判明。さっさと始末しようとするかよ子達だったが、杉山は自分を殺してはまずいと言って・・・!?
レーニンは本部で休息を取る事にした。
「はて、貴様の偽物について杖の所有者達はどのような反応をするのだろうな。また還ってきてくれたと受け入れるのか、それとと不審に思って平和を主義とする世界の本部へと送るか・・・」
「そもそも偽物だってすぐバレんじゃねえか?」
「まあそうかもしれんな。あの女とも一度はぶつかっている。だが、もしかしたらと思うがおっちょこちょいとやらをやらかしてくれるかもしれんな・・・」
「だが杖は一度取ったとしてもヴィクトリアとかいう女王に預けたら取り返されちまったじゃねえか。山田も同じ馬鹿は二回もしねえと思うな」
杉山はあまり得策とは思えなかった。その時、電話が鳴った。
「こちらレーニンだ」
『こちらベニート。本部に乗りコーンで剣を盗ったコゾーは鎖鉄球を使っていたゾー!』
「ほう、鎖鉄球とな」
(鎖鉄球?あいつ、新しい武器を手に入れたのか?)
杉山は杖の所有者の隣に住むという男子高校生を思い出した。異能の能力を三種類全てを備えているものの、異世界より与えられた道具を持っていなかったはずである。
(あいつもまた強くなったって事か・・・!だが、俺もまた強くなってやるんだ・・・。大将になる為にな・・・)
「杉山さとし」
「ん?」
「一休みしたらあの小僧の元へ向かってみるか?」
「ああ、それがいいな」
かよ子は杉山に言われて丸鋸を杖に収めた。
「俺を殺したら本物の俺まで死んじまうじゃねえか」
「え?それって・・・」
「怪しいぜ。ハッタリじゃねえのか?」
「ああ、ここで俺を倒してもなにもいい事はねえんだ。悪い事は言わねえ。その杖を俺に寄こせよ」
「え・・・?」
かよ子はふと思った。好きな男子とはいえ、この大事な杖を預けられるのか。
「かよちゃん、ダメだよ、渡しちゃ!」
「その杉山君は偽物だブー!」
「偽物なのだ。渡してはならぬ!」
皆がかよ子を引き留める声を送った。
(私は・・・)
「ごめん、渡せない・・・!!」
「え・・・?」
「私も何度か杖を盗られたけど、いくら杉山君でも渡せと言われて渡せないよ!いくら私もがおっちょこちょいだからってそんな事できないよ!」
かよ子はもう一度杖から丸鋸を発射させた。今度は高速で鎌鼬のように偽の杉山を切り刻もうとした。
「う、うおおお!!」
杉山は慌ててその場から遠ざかった。
「おい、本当にいいのか?俺を殺したらお前らも捕まっちまうぞ!」
「それはないわ!」
のり子が断言した。
「どうしてだよ!」
「今私のキャロラインに本当にそうなるか調べさせて貰ったのよ!」
「この杉山さとしって人は操り人形よ!木を媒体にしているわ!」
「木を媒体・・・?」
「それにこの術は前にも見た事があるわ・・・!確か黒魔術を使う女と一緒よ!」
「黒魔術・・・」
大五郎は思い出した。
「そうか、ラ・ヴォワザンだな!」
「そうよ、あの偽物がやられても本物の杉山さとし君は平気よ!」
「あの女ならこいつをやっても杉山本人には関係ねえな!」
大野は草の石、そして元々親友の得物である雷の石を出して攻撃した。放電され、木の枝が無数の矢となって杉山を攻撃した。偽杉山は何とか避けた。だが周囲に石が置かれ、閉じ込められた。
「・・・、もう終わりにさせて貰うよ・・・!!」
かよ子が杖から石を出現させて偽杉山の動きを封じたのだった。
「よし、終わりだブー!」
「俺も行かせて貰おう!」
ブー太郎と椎名が水攻めにする。
「ふ、何のこれしきここから・・・」
偽杉山はここから撤退しようと試みた。しかし、身体が動かない。
「な、なんだ・・・!?」
「あんな胸糞悪い魔術、俺の法力で消してやる!」
そして水圧で偽杉山は苦しみ、息絶えた。そしてかよ子の杖で出して作られた石垣に水が溢れ出して破壊された。
「・・・、終わったか」
皆は偽物を始末してホッとした。しかし、かよ子はなぜか落ち着けない。
「す、杉山君!!」
「あ、かよちゃん!」
「山田かよ子!」
かよ子はあの杉山は偽物だと解ってはいた。それでも杉山がやられる所を見るとどうしても心配で近寄ってしまう。大野の転校が決まった時も体育館裏で大野と喧嘩する杉山が放っておけず止めようとした。
「杉山、君・・・!!」
かよ子は水で散らばった石に躓いたり、踏んで滑ってしまいながらも偽杉山がいた所を探した。そして一つの木の人形を見た。水で濡れていた。
「これが杉山君の元となった人形・・・」
[杖の所有者よ]
「この声は・・・!!」
かよ子は幾度も聞いている声である。
「レーニンだね?!」
[その通りだ。貴様は我々の所に寝返った杉山さとしがそれでも心配で仕方あるまいって事か]
「確かに杉山君は裏切ったけど・・・。本当は私も心配だよ!大野君と仲直りできないままこのまま終わっちゃうなんて・・・」
「で、でものり子の人形でそれはないって解ったんじゃないかブー?」
「あ・・・」
かよ子はのり子の人形が言っていた偽の杉山が倒されると杉山本人も死ぬという事は嘘だという事をすっかり忘れていた。
(またおっちょこちょいしちゃったよ・・・)
[しかし、このようにいとも容易く欺かれる貴様らではないな。だが、ラ・ヴォワザンにももう少し惑わせるように制度を上げて貰いたかったものよ。まあ、本物の杉山さとしは全く平気だ。これは嘘ではない。次私が貴様らと当たる時はこの小僧も相当な強者となっているかもしれんな]
レーニンの声はそれ以降聞こえなくなった。
「ラ・ヴォワザン・・・!!」
かよ子はその名を聞いて思い出した。以前幾つもの傀儡を出してかいくぐったり、毒で戦闘不能とっせた厄介な黒魔術の使い手である。どちらの側に杉山がついていようが、杉山を偽物として作り、このような操り人形として利用したあの魔女への憎悪が込み上がるのだった。
「山田かよ子、行こうか。ラ・ヴォワザンともまた会ったら次こそ葬ればよい」
「うん、そうだね・・・」
藤木救出班は先へ進んだ。かよ子は偽杉山を作り出した人形をその場に捨てて羽根を飛ばしたのだった。
本部の管制室。まき子達の所に連絡が来た。
『こちら藤木君救出班の大野けんいち。今戦っていたのは杉山の偽物だった』
「偽物・・・?」
イマヌエル達は驚かされた。
「つまり、誰かの術って事か?」
『ああ、前に戦ったラ・ヴォワザンって女の黒魔術で作られたものだって鳥橋のり子の人形で解ったんだ』
「そうだったのか・・・。お疲れ様、大変な戦いだったね。今昼食の準備を送るので食事にしてくれたまえ」
イマヌエルは連絡を終了させた。
「それでは私達も食事としよう」
「ええ」
皆は管制室を一旦退室した。
「かよ子達が戦ってたのは杉山君じゃなかったのね」
「ああ、偽物との事だ」
「そうだったの。でも・・・」
「なんだい?」
「もし私達が勝つって事はその戦争主義の世界の長も倒すって事よね?杉山君はレーニンと身体が一つになったらしいけど、杉山君も一緒に殺すって事なの?」
イマヌエルはその質問に即答できなかった。
「・・・、そうだね、でもだからといって彼まで殺す事はできないよ。レーニンから切り離しさえすればいいのだが・・・」
イマヌエルでも最善の策が見出せていなかった。
後書き
次回は・・・
「人質解放の駆け引き」
フローレンスと房子の間で取引が行われる。フローレンスは赤軍の西川と東アジア反日武装戦線の佐々木を送り返し、房子は全ての領土を平和を正義とする世界に返還するという約束だったが、房子はすぐ様フローレンスの殺害を試みる。だが、フローレンスもまた房子がすぐに要求を呑むわけないと読んでおり・・・!?
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