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仮面ライダーBLACK RX〜ネオゴルゴムの陰謀〜

作者:紡ぐ風
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第十話『若返った光太郎』

 「ソフィル様、世紀王はキングストーンの移植が無事に済み、現在はカプセルの中で安静にしています。」
 ネオゴルゴム神殿の広間に集まる三神官に麻木は言う。
 「そうか、ならば儀式のために時間が必要だ。フンコロガシ怪人!」
 ソフィルの言葉を聞き、フンコロガシ怪人が現れる。
 「お前の放つ若返り光線を使い、世の中に混乱を招くのだ。」
 「シュグッ!」
 ソフィルの指示を受け、フンコロガシ怪人は作戦に取り掛かる。
 「麻木、いやヤブカ怪人よ。フンコロガシ怪人が敗れたときにはお前にも出てもらうからな。」
 「重々承知しております。それでは、失礼いたします。」
 麻木は一礼してその場を去る。
 「リシュナル、エピメル。すぐさま儀式を始めよう。」
 「この時をどれだけ待ちわびたことでしょうか。」
 「今日がネオゴルゴムにとって、真の始まりの日になるのか!」
 ソフィル達はカプセルのある儀式の間へと向かった。

 2日後、ある事件がニュースで取り上げられていた。
 『本日のニュースです。50代以上の方が何者かによって次々に若返らせられている今回の事件について、被害者から新たな情報が寄せられました。被害者の話によりますと、虫みたいな怪物が目の前に現れ、気づいたら若返っていたとのことで、警視庁は集団洗脳を行う組織的な犯行と見て捜査を続行する方針を固めました。』
 「光太郎さん、これってネオゴルゴムの仕業じゃないかしら?」
 「克美さんの言うように、そう判断して間違いないだろう。」
 ニュースの内容を聞き、克美と光太郎はネオゴルゴムの気配を感じる。
 「兄貴も気をつけろよ。兄貴だって襲われてもおかしくない年齢なんだから。」
 「大丈夫だって。現場は近いからちょっと見てくるよ。」
 光太郎はキャピトラを出て事件現場へ急行した。 
 「特に変わった様子はないか…」
 光太郎が辺りを見渡していると、背後に気配を感じ振り返ると、そこにはフンコロガシ怪人がいた。
 「やはりネオゴルゴム怪人の仕業だったか!変身!」
 光太郎はRXに変身し、フンコロガシ怪人との戦闘を始めるが、フンコロガシ怪人はただひたすら後退するのみで戦闘の意思を見せようとしない。RXはそのままフンコロガシ怪人を追いかける。すると、
 「シュグー!」
 フンコロガシ怪人は突然両目から怪光線を放ち、RXに浴びせる。すると、RXの変身は解除され、光太郎の肉体も他の被害者と同様若返り、19歳だった頃に戻ってしまう。
 「若返りの秘密は、この光線にあったのか!」
 光太郎は必死にフンコロガシ怪人を追いかけるが、既にフンコロガシ怪人を見失っており、キャピトラへ戻ることにした。
 「まさか、俺まで若返ってしまうとは。あの光線は危険だ。」
 キャピトラへ戻った光太郎はフンコロガシ怪人と交戦したときのことを話す。
 「でも、ネオゴルゴムはどうして若返らせようとしているのかしら?現役時代にまで若返らせたら、かえって働き手が増えて経済成長に繋がりそうなのに。」
 克美は今回の作戦に疑問を持つ。
 「俺もそれは気になっていた。それに、もし人類への攻撃目的なら、現在働いている若い人達を幼児にまで若返らせれば社会の機能が麻痺する。ネオゴルゴムにとっては、そっちのほうが都合がいいはず。他に、何か理由が…」
 光太郎は必死に考える。しかし、どれだけ考えても答えに辿り着くことはなかった。

 その頃、儀式の間では世紀王誕生の儀が行われようとしていた。
 「私の持つ水の石、リシュナルが持つ風の石、そしてエピメルが持つ火の石。かつて大神官より譲渡されたこの石の力を我らが世紀王に注ぎ込むぞ。」
 ソフィルはバッタ怪人の眠るカプセルを見ながらリシュナルとエピメルに話す。
 「大神官達はこの石にそこまでの力はないと言っていたが、私達の生体エネルギーを合わせれば、大神官の持つ石と変わらぬ力を持つことを、大神官達は知らなかったようね。」
 「今こそ、我らの力の見せ所だ!」
 リシュナルとエピメルの宣言を聞き、ソフィルも水の石を持ち3人の神官は石のエネルギーをカプセルに送り始めた。

 「それにしても、若かった頃の兄貴にもう一度会えるなんて夢みたいだぜ!」
 「そうね。昔はファッションに拘っていたのに、それからアップデートされていないみたいだったし。むしろ若返ってよかったんじゃない?」
 キャピトラで光太郎は霞のジョーと克美にイジられていた。
 「よしてくれよ。19歳の頃に戻されたからBLACKには変身できるけど、RXには変身できなくなっているんだから。」
 光太郎は不服そうな顔を見せる。
 「そうは言っても、なんだか懐かしい気分になったんだよ。」
 「懐かしい?」
 霞のジョーの言葉を光太郎は不思議に思う。
 「そうね。今の光太郎さんは歳相応に落ち着きがあって頼もしいけれど、昔みたいな情熱はすっかり影を潜めていたからね。」
 「情熱的っていうか、怖いもの知らずの無鉄砲みたいな感じだったからな。」
 克美と霞のジョーは互いの話を聞きながら頷きあう。
 「それは若さからくるものだよ。若いうちは何事にもぶつかりに行く気持ちで立ち向かうのもいい。でも、それはまだ大人になりきれていない証でもあるんだ。2人だって、経験してきたからわかるだろう?」
 「確かに、はあ〜、クライシス帝国と戦っていた頃が懐かしいぜ…」
 「そうね、今信彦さんがゴルゴムのシャドームーンとして現れても、説得なんて考えないで逃げてしまうかもしれないわ。」
 光太郎の問いかけに二人は思うところがあり、深くため息をつく。
 「兎に角、まずはフンコロガシ怪人を探さないと。フンコロガシ怪人は事件現場に何度も現れて、手当たり次第に若返り光線を放っている。すぐに出食わせるかもしれないから、また行ってくるよ。」
 光太郎はキャピトラを飛び出す。
 「なんか兄貴、活き活きとしていないか?」
 「言われてみれば、心なしかフレッシュさが蘇っている気がするわ。」
 「フレッシュさって、いまどき誰も使わないぞ。」
 「あらそう?だとしても、別にいいじゃない。私達の生きた時代では普通に使われていたんですもの。」
 「それもそうだ。ほんと、時代が変わって、言葉遣いも変わったよな。」
 閉まる扉を見て、霞のジョーと克美は時の流れをしみじみと感じていた。
 (フンコロガシ怪人はどこだ?)
 光太郎が必死になって探していると、複数人の男女が言い合いをしていた。
 「親父達若返ったんなら働いて家計の足しにしてくれよ!親父たちが働けない年齢になっても昔の贅沢気分が抜けないせいで俺達の生活が圧迫されていることに気づいてくれよ!」
 「そんなの、不景気な状況を作った政府のせいよ!」
 「お義母さんの世代はいつだってそう。ニュースの意見が世界のすべてみたいに言って。贅沢なんてしなければ蓄えがもっとあったのに。」
 「昔は贅沢をしても蓄えはあったんだ。お前たちこそ、誰が書いたかわからないネットの意見を鵜呑みにして!」
 話し声からどうやら2世帯の親子のようであり、片方はフンコロガシ怪人の力で若返っていることがわかった。
 「皆さん、喧嘩はやめてくださいよ。」
 光太郎は仲裁に入ろうとする。
 「うるさい。今の若い奴らは甘っちょろいんだ。俺達が若かった頃の事をガツンと言ってやらないとわからないんだ!」
 「それはこっちのセリフだ!時代が変わって価値観も変わったんだ。いつまでも過去に縛られてんじゃねえよ、この老害!」
 「あんたねえ、親に向かって何なのよ!」
 「こっちはあんたらの世代がやってきたいい加減なことのつけを払わされているんだ。いつまでも昔のやり方が通用すると思うな。」
 しかし、光太郎の仲裁で親子の口論が止まることはなかった。更に、
 「ちょっとお母さん、勝手にエステの予約なんてしないでよ。今そんな余裕ないんだから。」
 「何言ってるのよ。若さは強さよ!」
 「オヤジ、ナンパなんて恥ずかしいことしないでくれよ!それに母さんにバレたらどうするんだよ。」
 「お前だって俺に似てイケメンなんだから、若い娘にモテたほうが嬉しいだろ?」
 親子の言い合いはあちらこちらで広がっていた。
 (まさか、これがネオゴルゴムの狙いか?世代間の溝を広げて、人と人との心の繋がりを断とうとしているのか?おのれ、ネオゴルゴム!)
 光太郎は拳を強く握りしめる。
 「みんな、こんな喧嘩はやめるんだ!これはネオゴルゴムの策略なんだ!奴らは世代の壁を利用して不信感を煽ろうとしているんだ!だから…」
 光太郎は力強く話す。しかし、
 「うるせぇ!お前はどっちの味方をしているんだ!」
 「まさかあんたも、若返った老害とか言わないよな!」
 「私達は折角若い頃の遊びをまたしようと思っていたのに!」
 「そんなに仲良しこよしがしたいなら、1人で惨めにやってろよ!」
 様々な精神年齢の若者達から口撃を受けてしまう。そこにフンコロガシ怪人は再び現れる。
 「うわっ、でた!」
 フンコロガシ怪人を見た若者達は一斉に逃げ出す。
 「ネオゴルゴム、人の心の脆さを利用する卑劣な行為、絶対に許さん!」
 光太郎は拳を構え、力を込める。そして、
 「変…身!」
 光太郎は変身の掛け声を上げる。光太郎の声に反応し、キングストーンを内包した変身ベルトが出現し、そのエネルギーによって光太郎の肉体はバッタ怪人へと変わりその皮膚はキングストーンの力で一瞬のうちに強化皮膚、リプラスフォームへと変化し、南光太郎は仮面ライダーBLACKへと変身するのだ!
 「仮面ライダー…BLACK!」
 BLACKは高らかに名乗る。
 「シュグッ!」
 フンコロガシ怪人は泥玉爆弾をBLACKに投げつけるが、BLACKはそれらを華麗に避け、着弾地点から火花が散る。そして、BLACKは臆することなくパンチの連打をフンコロガシ怪人に浴びせる。
 「シュググ!」
 フンコロガシ怪人はBLACKに若返り光線を放とうとする。しかし、
 「キングストーンフラッシュ!」
 BLACKはベルトから放つ光によってフンコロガシ怪人に対して目潰しをし、光線を妨害する。更に、放たれたキングストーンのエネルギーを集約し、身体強化を行い、ジャンプしてフンコロガシ怪人に向かっていき、
 「ライダー…パンチ!」
 強化された拳でフンコロガシ怪人の頬を殴り、その反動で後退し、次の攻撃に繋げる。そして、
 「ライダー…キック!」
 BLACKの必殺キックがフンコロガシ怪人に炸裂し、フンコロガシ怪人はなんとか立ち上がるも、命の限界を迎え爆発しながら蒸発する。
 「身体が、もとに戻ってゆく。」
 フンコロガシ怪人が撃破されると、若返り光線を受けた人々は光太郎も含めて本来の年齢に戻る。
 「せっかく昔に戻れたのに…」
 「人生これからだったってのによ…」
 しかし、民衆からの声は、歓喜のものではなかった。光太郎は背を向けて帰路へ着こうとするが、
 「大丈夫ですか?」
 1人の男子が腰を抜かして動けなくなっている老夫婦に手を差し伸べていた。
 「ありがとう。あんな怪物始めてみたから俺も婆さんも腰が抜けちまっていたよ。本当、助かったよ。」
 老夫婦は男子の助力もありすぐに立ち上がることができ、感謝の言葉を述べていた。
 (よかった。早い段階で解決できたから、完全に心の繋がりが途切れなくて済んだんだ。)
 光太郎は、そんな温かい1幕を見てキャピトラへ戻った。

 その頃、儀式の間では儀式が終わろうとしていた。
 「石が、砕け散る!?」
 三神官の持つ石が砕け散ると、その石がカプセルに吸収され、カプセルが爆発すると、一体の悪の戦士が立ち上がっていた。
 「ついに生まれた!太陽の血を通わせ、月の石を宿す日蝕の世紀王、クリムゾンエクリプス!」
 神官達は世紀王の誕生を祝福していた。
 続く

 次回予告
 三神官達によって生み出されたクリムゾンエクリプス。三神官達は新たな力を与えられ、侵略は加速していく。『恐怖の大怪人』ぶっちぎるぜ! 
 

 
後書き
 怪人図鑑
 フンコロガシ怪人
 身長:195cm
 体重:97kg
 能力:若返り光線、泥玉爆弾の生成
 フンコロガシの性質を持つネオゴルゴム怪人。両目から放つ若返り光線は対象の生物の年齢を好きなだけ戻すことができ、光太郎をBLACKとして活動していた年齢まで若返らせた。 
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