ハッピークローバー
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第六十六話 泳ぎながらその十二
「最下位には一度もならなかったし」
「巨人がいるからね」
「巨人がずっと最下位だから」
「かれこれ二十年連続だからね」
「それもただ弱いだけじゃなくて」
巨人はというのだ。
「もうね」
「無茶苦茶弱いからね」
「二十年連続一〇〇敗とかね」
薊は笑って話した。
「凄過ぎるからね」
「横浜がどれだけ弱くても」
「巨人にはね」
流石にというのだ。
「勝てるからね」
「勝率一割台のチームには」
「もうね」
それこそというのだ。
「そうそうはね」
「負けないわね」
「逆阪神というか」
それか、というのだ。
「逆ソフトバンクかもね」
「ああ、育成も補強も一切しないから」
「それで人材いないから」
だからだというのだ。
「もうね」
「今の巨人は逆ソフトバンクね」
「だからチーム打率も本塁打数も盗塁数も得点も最下位で」
そうしてというのだ。
「チーム防御率、三振数、併殺打数、被安打数、被本塁打数、エラー数はね」
「最悪なのね」
「そんな最弱チームになってるのよ」
「それも二十年ね」
「そんな巨人がいるから」
その為にというのだ。
「幸いね」
「横浜もなのね」
「暗黒時代になったけれど」
三十八年振りの優勝の後でだ。
「最下位にはね」
「ならなかったわね」
「それだけでもいいさ」
薊は笑って話した。
「最下位にならなかったらね」
「それでなのね」
「優勝して欲しいけれど」
やはり第一の願はこちらである、どのチームも優勝を目指し必死になっているのがプロ野球というものだ。
「けれどね」
「最下位にならないとね」
「もうね」
それこそというのだ。
「それだけでもね」
「違うわよね、阪神なんてね」
「巨人がまだ強かった頃に暗黒時代だったね」
「だからその最下位にね」
それこそというのだ。
「何度もよ」
「なったね」
「今でこそ毎年日本一だけれど」
そうした圧倒的なチームになったがというのだ。
「けれどね」
「かつては暗黒時代で」
「それでね」
その為にというのだ。
「あんたが言うこともわかるわ」
「最下位じゃなかったらそれだけでもいいって」
「あの徳私達生まれてないけれど」
阪神の暗黒時代は二〇〇一年まで続いた、実に長いトンネルだった。
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