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ハッピークローバー

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第六十六話 泳ぎながらその十一

「若松勉さんね」
「ああ、ミスタースワローズの」
「あの人がいたから」
「監督になれなかったの」
「確かその頃ヤクルトの監督野村さんでしょ」
「その人も出てたわ」
 野村克也、彼もというのだ。
「ヤクルトの監督でね」
「敵ね」
「その立場でね」
「その野村さんがいて」
 大矢の在籍していたチームにというのだ。
「もう後任もね」
「若松さんでなの」
「ほぼ決まってたから」 
 そうした事情があってというのだ。
「大矢さんはね」
「ヤクルトの監督になれなかったの」
「そうじゃないの?」
 こう薊に話した。
「流石に野村さんがいたら」
「監督無理なのね」
「実績が違うから」
「現役時代も凄かったしね」
「監督としてもね」
 この立場でもというのだ。
「南海でも監督してて」
「ヤクルトでもで」
「それも何回も優勝してるし」
「その野村さんが監督で」
「次が若松さんなら」
「無理だったんだな」
「若松さんもね」 
 この人もというのだ。
「ヤクルトの顔だったしね」
「ミスタースワローズね」
「それじゃあ流石にね」
「大矢さんもか」
「無理だったのよ、それでね」
「横浜の監督になったんだね」
「そうじゃないの?」
「そういうことだね」
「そこは仕方ないわよ」
 どうしてもというのだ。
「相手が野村さんだと」
「無理だね」
「監督さんはね」
 ヤクルトのそれになることはというのだ。
「流石に」
「それで横浜の監督になって」
「活躍されたのよね」
「あと少しで優勝出来たんだよ」
 一九九七年のことである。
「けれどね」
「負けたのね」
「やっぱりヤクルトが強くてね」
 その野村が率いていた、だ。
「それでね」
「負けて」
「大矢さんは辞めて」
 監督をというのだ。
「権藤さんになって」
「優勝したのよね」
「三十八年振りにね」 
 薊はこのことは会心の笑みで話した。
「遂にね」
「それはよかったわね」
「まあその後暫くして暗黒時代になったけれどね」
「それはそれね」
「やっぱり日本一になってね」
「よかったのね」
「そう思うわ、それに暗黒時代になったけれど」
 このことは事実だがというのだ。 
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