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ハッピークローバー

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第六十五話 日本の夏の料理その八

「もうね」
「お姫様だったんですね」
「そうなんだよ」
 これがというのだ。
「世が世ならね」
「何か想像出来ないですね」
「いや、江戸時代ならだよ」
 麻友はかな恵に笑って返した。
「もう維新から一世紀半は経ってるね」
「それだけ経てばですね」
「もう昔も昔でね」 
 それでというのだ。
「大昔でね」
「今は松尾先輩もですか」
「御姫様でなくてね」
 そうでなくというのだ。
「剣を持ってるね」
「お侍さんですか」
「女侍だね」 
 笑ったままこうも言った。
「あの人は」
「そうですか」
「言うならね」
「何かお侍も」
 そうだとしてもとだ、かな恵は笑って応えた。
「江戸時代ですね」
「それはね」
 麻友も否定しなかった。
「そうだね」
「そうですよね」
「けれどあの人はそんな感じだろ」
「言われてみますと」
 それならとだ、かな恵も頷いた。
「松尾先輩は」
「剣道三段でしかもきりっとしててね」
「まっすぐな感じで」
「文武両道でね」
 成績もいいというのだ。
「それでね」
「そうした人ですから」
「武士、つまりね」
「お侍さんですね」
「そんな感じだね」
「はい、お侍さんは江戸時代でも」
「そうだろ、ちなみにあの人の袴姿がね」
 麻友は彼女のこの時の服装の話もした。
「また恰好いいんだよ」
「剣道着もですね」
「あ、ああそうだね」 
 咄嗟に別の時の彼女を思い浮かべたがそこは言わなかった。かな恵がそちらにいないのでわからないと思ってだ。
「そうだね」
「袴姿もですか」
「似合っていてね」
 かな恵にあらためて話した。
「これがまたなんだよ」
「いいんですね」
「だから余計にね」
「あの人は女侍ですか」
「そうなんだよ、けれどね」
 それでもというのだ。
「あの人は世が世なら」
「お姫様ですか」
「奇麗な着物を着て」
 姫故にというのだ。
「髪の毛も飾ってね」
「時代劇に出て来るみたいな」
「まさにあんな感じのね」
「お姫様になってたんですね」
「そんな人なんだよ」
 こうかな恵に話した。
「本当にね」
「そうでしたか」
「東京ってそうした人もいるんだよ」
「下町だけじゃないんですね」
「外国からの人も多いしね」
 東京にはというのだ。 
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