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ハッピークローバー

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第六十五話 日本の夏の料理その六

「熱いのに入ってね」
「すぐに出るんですね」
「そうだよ、あとお蕎麦の量は少ないね」
「こっちと比べて」
「そうなんだよ」
「あとあれよね」
 ここでケニアから来た先輩が麻友に言って来た。
「東京のおうどんのおつゆって」
「お蕎麦もだね」
「真っ黒だって聞くけれど」
「実際黒いよ」
 麻友はその通りだと答えた。
「もうね」
「真っ黒なの」
「そうだよ、それで辛いよ」
 このことも事実だというのだ。
「こっちと比べるとね」
「そうなのね」
「こっちで言われてる通りだよ、ただね」
「ただ?」
「おつゆは真っ黒だけれどね」
 麻友は笑って話した。
「人の心は真っ白だよ」
「そうなのね」
「江戸っ子は口は悪いけれど腹は白いんだよ」
「飾らなくて嘘は言わない」
「そうだよ、あっさりしててね」
 そうであってというのだ。
「そんな風なんだよ」
「そうなのね」
「喧嘩っぱやいのに弱くても」
 こうも言うのだった。
「そうなんだよ、例外もいるけれどね」
「江戸っ子でも悪いのはいるのね」
「何処でもそうだろうけれど」
「江戸っ子でもなのね」
「悪い奴もいるさ」
「時代劇に出て来るみたいな」
「そうだよ、まあそれでもね」
 そうした例外はいるがというのだ、何時でも何処でも善人がいれば悪人もいる。それもまた世の中である。
「大抵の人はだよ」
「いい人なのね」
「そうした気風のいいね」
 そうしたというのだ。
「気持ちのいい人達だよ」
「チャキチャキの江戸っ子ですね」
 かな恵は笑って言ってきた。
「つまりは」
「そうだよ、あたしや吉君みたいなのがね」
「江戸っ子ですか」
「昔ながらのね」
「そうなんですね」
「それでね」
 麻友はかな恵にも笑って話した。
「その江戸っ子らしさはずっとね」
「持っていたいですか」
「何処でもね」
「八条学園でもですね」
「そう思ってやってるよ」
「そうですか」
「そうだよ、ただね」
 麻友はここでこうも言った、少し微妙な顔になって。
「松尾先輩は違うね」
「剣道部の三年生の」
「剣道三段のね」
「滅茶苦茶強い人ですね」
「全国大会でもいつもいいところいく」
「あの人も東京生まれですね」
「それでもあの人は武士のお家だろ」
 麻友は彼女のこのことを話した。
「だからね」
「それで、ですか」
「そうなんだよ、三河からの人で」
 そのはじまりはというのだ。 
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