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星河の覇皇

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第八十三部第二章 撤退の果てにその二十六

「色々調べていたらしい」
「トイレの情報ですか」
「それを調べていたのですか」
「そうだったのですか」
「トイレの技術もだ」
 一見何でもないこともというのだ。
「他国から見ればかなりだったりする」
「何でもないことに思えますが」
「我々からしてみれば」
「トイレなぞは」
「トイレは何でもない場所だが」
 用足し、生物ならば絶対にしなければならない行為の場所だ。不浄であるが絶対に存在しかつ特に意識されない場所だ。
 だがそういった場所でもとだ、艦長は言うのだ。
「しかしだ」
「そこに使われている技術は、ですか」
「高度なものである」
「その国の技術が使われていて」
「注目すべき場所でもありますか」
「他国にとってはな、例えばだ」
 艦長はこうも言った。
「中世の欧州のトイレはどうだった」
「部屋の中にあり」
「そこで用を足していましたね」
「そして部屋の窓から町に捨てていました」
「その為道の端は非常に汚れていました」
 それが中世の欧州だった、その為街には悪臭が蔓延していたのだ。
「非常にお粗末なものでした」
「そんなものでしたね」
「それで他国から見ればでしたね」
「不衛生極まるものでしたね」
「そんな状況の文明から見ればな」 
 碌なトイレがないそうした状況からというのだ。
「当時の日本の汲み取り式はだ」
「非常に衛生的でしたね」
「当時としては」
「排泄したものを置いておき後で肥料に使う」
「合理的でもありました」
 これがこの時代でも見事なリサイクルだったと評価されている、排泄したものを肥料として使うとそれだけでかなりのものになるからだ。
「若し当時の欧州の者が日本のトイレを見れば」
「当時の日本では便所と言っていましたが」
「用足しとも言っていましたね」
「それを見てこれはいいと思えば」
「欧州はかなり変わっていましたね」
「当時欧州はペストに苦しんでいた」
 この伝染病で人口の三分の一が死んだことすらあった。
「それは何故かというとな」
「鼠でしたね」
「不衛生な街を走り回っていた鼠でした」
「鼠達がペスト菌を運んでいて」
「それで人が感染していました」
「その不衛生な原因のかなりの部分が解決してだ」
 排泄物を道に捨てなくなっただけでそうなるというのだ。
「ペストの禍がかなり減る」
「そうなっていましたね」
「事実日本の当時の街はかなり衛生的でした」
「トイレがしっかりしていたこともあり」
「ペストなぞ考えられませんでした」
「そうした状況でしたね」
「そのことから考えてもだ」
 歴史からも考慮してというのだ。 
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