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ハッピークローバー

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第六十話 合宿を前にしてその十六

「やっぱりね」
「今お話した風にすべきね」
「そうよ、そもそも悪口を言うよりも」 
 そうするよりもというのだった、今度は。
「いいことを言った方が気持ちいいでしょ」
「人でも場所でもね」
「誰に対しても何に対してもね」
「そうでしょ」
「ええ、いいことを言う方が」
 悪口を言うよりもというのだ。
「むしろね」
「そうでしょ」
「だからなのね」
「どうせ言うなら」
「いいことを言うことね」
「誰かを褒めたり楽しかったとか満足したとか」
「そうしたことを言うことね」
「そうしたら」
 母はさらに話した。
「他の人が聞いても心地いいし自分もね」
「気分がいいわね」
「下手なお世辞は言うと滑るけれど」
 それでもというのだ、お世辞も過ぎればそうなる。リップサービスも程々にということであるだろうか。
「普通にいいことはね」
「言うとなのね」
「それでね」
 それだけでというのだ。
「いいのよ」
「そうしたものね」
「悪口は聞いていて嫌になるし」
 他の人がというのだ。
「自分も悪いこと考えて言って聞くから」
「よくないのね」
「これは毒よ」
 悪口はというのだ。
「本当にね」
「毒なの」
「そう、だからね」 
 その為にというのだ。
「思っていても無理にでもいい物事を考える様にして」
「いいことを言うことね」
「それがね」 
 まさにとというのだ。
「いいのよ」
「そうなのね」
「そう、それでね」
「いいことを言うことね」
「人の為にも自分の為にもね」
 是非にというのだ。
「考えて言うことよ」
「いいことを」
「悪口は毒になるけれど」
 それでもというのだ。
「いいことはね」
「悪口が毒なら」
「わかるでしょ」
「お薬ね」
「それになるのよ」
 こう言うのだった。
「わかっておいてね」
「そのことも」
「ええ」
 是非にというのだった。
「このこともね」
「そうしていくわね」
 一華は薬と聞いて頷いてから言った。
「これからは」
「そう、合宿だけでなくてよ」
「これからもずっと」
「そうしていきなさい、じゃあね」
「ええ、カレー食べてね」
「行ってきなさい」
「そうするわね」
 母に明るい笑顔で答えた、そうしてだった。
 一華は合宿に必要なものを全て入れた鞄を持ってだった。
 家を出た、外は明るく晴れていた。


第六十話   完


                 2022・11・1 
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