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第五十八話 祭りが終わってその七

「いたし」
「太宰だってそうだったしね」
 一華も彼の名前を出した。
「あの人だって」
「あの人愛人さんとの間に娘さんいてね」
「そうだったわね」
 斜陽の主人公である、まさにその話を小説にしたものだったのだ。
「あの人は」
「それで別の愛人さんとね」
「複数いたのよね、愛人さん」
「というか最初の愛人さんに子供産ませて」
 そうしてとだ、かな恵は話した。
「その人と離れて」
「それでなのね」
「別の愛人さんが出来て」
「その人と?確か」
 一華は考える顔になって話した。
「心中したのよね」
「そうなのよ、太宰ももてたのよ」
「芥川と一緒で」
「それで芥川もね」
「そうしたお話あるのね」
「何かそれで揉めないかって」
 その女性関係でというのだ。
「怯えていたらしいわ」
「そうだったのね」
「他にも麻薬やってたって話もあるし」
「ああ、それあるかもね」
 富美子はかな恵の今の話に否定しないで応えた、五人共まだ飲んでいてそれで食べてもいる。どちらも続けているのだ。
「作品読んだら」
「自殺する前の」
「ええ、お姉ちゃんもおかしいって言ってて」
「富美子ちゃんもよね」
「やっぱりね」
 読んでみてというのだ。
「かなりね」
「おかしいから」
「麻薬やってたて言われても」
「信じるのね」
「そうなるわ」
 実際にというのだ。
「本当におかしいから」
「末期の芥川の作品は」
「実際に読んでみて思ったし」
「それで今麻薬のお話を聞いて」
「やってたかもってね」
 その様にというのだ。
「思うわ」
「やっぱりそうなのね」
「ええ」
 かな恵に真面目な顔で話した。
「本当にね」
「それで自殺したのね」
「そうなるわね」
「ううん、何かつくづくね」
「残念よね」
「ええ」
 かな恵は富美子に答えた。
「思うわ」
「そうよね」
「作家さんだから」
 かな恵は考える顔になりこうも言った。
「創作で悩むこともね」
「あるわよね」
「けれどそれなら」
 創作で悩んだならというのだ、事実芥川は遺書においてそうしたことも書いている。このことは太宰もだ。ただし芥川は自身の三人のご子息の方々に人生で困れば自分の様に自殺せよとも書いている。これもまた狂気の表れであろうか。
「休めばいいのよ」
「そうよね、もう自分がいいと思うまでね」 
 一華もその通りだと答えた。 
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