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ハッピークローバー

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第五十六話 かなり飲んだのでその十四

「頭の中はね」
「そんな程度よね」
「品性もね、それでね」
「そんな運動家とか」
「ヤクザ屋さん位しかね」
 それこそというのだ。
「そこまで言われないよ」
「普通はね」
「どっちも生きていて碌なことをしない」
「言うなら社会のダニね」
「そのダニにだよ」
 まさにというのだ。
「その人はね」
「なっていたのね」
「成り果てていたんだ」
 まさにというのだ。
「実はね」
「偉いどころか」
「主観ではそうでも」
 自分ではそう思っていてもというのだ。
「周りから見たらね」
「そんな人ね」
「滑稽だよね」
「勘違いもそこまでいくとね」
 一華もそれはと答えた。
「そうよね」
「それで好き勝手言いもして」
「嫌われて」
「誰からも見放されて」
「野垂れ死になら」
「自業自得で」 
 それでというのだ。
「同情もしないし当然だっていう」
「そう思える最期ね」
「うん、この人は何がどうあっても救われない」
「そんな人だったのね」
「救われるにも」
 そうなるにもというのだ。
「最低限のものがないと駄目みたいだね」
「人間として?」
「うん、餓鬼になったら」
 そう言われるまでに堕ちればというのだ。
「人間ではね」
「救えないのね」
「それこそ神仏でないと」
 人間以上に上位の存在でないと、というのだ。
「救えないよ」
「何を言っても変わらないから」
「それどろか感謝しないで恨まれることもね」
「何でこうしてくれなかったとかよね」
「思って」
 そうなってというのだ。
「それでね」
「かえってだよ」
「恨むし」
「あらためることもしないから」
「人間では無理ね」
「どんな宗教や哲学でも救われない人はいるよ」
 どれだけ素晴らしいものに触れてもというのだ。
「最低限のものすらないから」
「それでよね」
「そう、どうしても」
 誰が何を言っても何をしてもというのだ。
「救われなくて」
「堕ちるだけで」
「もう果てはね」
「誰からも見捨てられて」
「その人みたいにね」
 まさにというのだ。
「行方不明になって」
「野垂れ死にね」
「そうなるよ」
 そうした末路を迎えるというのだ。
「絶対にね」
「最低限のものね」
「人としてね、つまり全くの零だと」
 それならというのだ。
「どうしようもないよ」
「一いやセロコンマでもあったら」
「何とかなるよ」
「ゼロじゃないって大事なのね」
「最低限のものがあるってね」
「それだけで全く違うのね」
「その人の話聞いて思ったよ」
 心から、そうした言葉だった。
「俺も」
「それがあれば幸せになれるし」
「救われると思うよ」
「人として最低限のものね」
「それ位の思いやりや分別や謙虚さや感謝の気持ちがね」
 こういったものがというのだ。
「あることだね」
「それで違うのね」
「人はね、俺そう思ったよ」
 こう一華に言ってだった。
 達川はまたビールを飲んだ、そして一華も彼に合わせてそうした。


第五十六話   完


                     2022・10・1 
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