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ハッピークローバー

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第五十六話 かなり飲んだのでその十三

「もうね」
「疲れ切ってるわよね」
「身体も心もね」
「大切な人が今にと思って」
「看病もして」
「何とかしたいって必死になって」
「若しかしたらって思って」
 助かるかも知れないと思ってというのだ。
「祈ったり願ったりもして」
「もうそれこそ」
 一華も察して言った。
「大変な時に」
「そこでお家にいつも通り上がり込んで」
「コーヒー淹れてくれってね」
「相当無神経でね」
「思いやりないわね」
「俺だってしないよ」
 絶対にとだ、達川は言い切った。
「それでその人が目の前でそんなことしたら」
「怒る?」
「相手が五十過ぎのおじさんでもね」
 年齢的に目上の相手でもというのだ。
「言うよ」
「自分で淹れてって」
「せめてね、というか相手がどういった状況か」
「わかるわよね」
「自分の娘さんが死にそうなんて」 
 そうした状況はというのだ。
「とんでもない状況で」
「ご家族は誰もね」
「もう憔悴しきって」
「あまり寝れてないでしょうし」
「そうしたこともわからないなんてね」
 それこそというのだ。
「アウトだよ」
「人間としてね」
「俺そんなこともわからない人になりたくないし」
「それでいて自分がこの世で一番偉いと思うなら」
「余計になりたくないよ」
 それこそというのだ。
「もう人間として終わってるよ」
「人間でなくなってるわね」
「もう生きていても」
 身体は人間としてそうであってもというのだ、達川は一華に対してまたこうしたことを言ったのだった。
「心はね」
「餓鬼ね」
「それに成り果てているよ」
「そうよね、しかし普通そこまで酷くならないでしょ」
 一華は眉を顰めさせて述べた。
「普通に生きていたらね」
「そんなどうしようもなくだね」
「もう生き恥標本じゃない」 
 そこまで酷いというのだ。
「人間ですらなくなった」
「子供にああなったらいけないって言えるレベルだね」
「ええ、指差してね」 
 当人をというのだ。
「そう言える位よ」
「そこまで言われるってヤクザ屋さんとか運動家位だよ」
「何かあるとデモをして騒ぐ」
「下品なね」
「ヘルメットと布で顔と頭隠して」
 一華はそうした連中の具体的な外見の話をした。
「棒持って暴れる」
「学生運動からの恰好だけれど」
「ああした人達よね」
「あの人達って大体七十過ぎらしいけれどね」
「もうお爺さんお婆さんよね」
「お孫さんがいる歳になっても」
 それでもというのだ。 
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