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イベリス

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第八十一話 教師の質その十四

「いいからな」
「それでなのね」
「今言ったんだ、そうした人とだ」
「一緒になったらいいのね」
「ああ、いいタイプだな」
 咲の異性の好みはとだ、父は笑って話した。
「じゃあこれからもな」
「そのタイプを好きでいることね」
「幸せになりたいならワルは駄目だ」
 こうしたタイプはというのだ。
「スリルを求めてもな」
「ジェームス=ボンドさんね」
「日常にいる人間はな」
「日常にいるのが一番ね」
「そうだ、もうな」
 それこそというのだ。
「咲は日常の中にいるな」
「普通の社会ってことよね」
「そうだ、そこにいるな」
「ええ」
 咲はこう答えた、もっと言えばこう答える以外の選択肢はなかった。
「普通の高校生よ」
「そうだな」
「魔法も銃も使えないね」
「本当に普通だな」
「何も変わりないね」 
「それが日常でな」 
 父は娘にあらためて話した。
「普通の生活だ、まあ戦争とかになったらその普通も変わるがな」
「災害とかね」
 咲は日本に多いこちらの話を入れた。
「起こったらね」
「一変するぞ、けれどな」
「普段はね」
「日常でだ」
 それでというのだ。
「そうした中で生まれてから暮らしているとな」
「そっちでいた方がいいわね」
「やっぱりな」
 どうしてもという言葉だった。
「だからな」
「それでなのね」
「そうだ、普通に暮らせたらな」
「一番ね」
「特に咲はその方がいいな」
 自分が見て思う娘の特性を見てのべた。
「そのままな」
「普通に趣味を楽しみながら暮らしていけばいいね」
「進学したいならしてな」 
 そうしてというのだ。
「それから就職して咲がそうしたいなら結婚してな」
「そうしてなのね」
「子供が出来て家庭を持ってな」
「お父さんお母さんみたいによね」
「暮らした方がいいな」
「やっぱり普通が一番ね」
 咲は父の言葉に頷いた、このこともまた彼女にとって頭に残り人生の指針となるのだった。


第八十一話   完


                  2022・10・1 
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