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イベリス

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第八十一話 教師の質その七

「四年間な」
「その割にお父さん東京にこだわるわよね」
「そりゃ何と言っても最高だからな」
 父は笑顔で答えた。
「生まれ育った街だしな」
「そのこともあってなの」
「ずっといてやっぱりな」
 何と言ってもというのだ。
「いいものを一杯見てきて不自由なんて感じたことないんだ」
「それでなのね」
「東京が最高だってな」
 その様にというのだ。
「思ってるしな」
「言えるのね」
「そうだ」
 まさにというのだ。
「お父さんはな」
「そうなのね」
「ああ、関西は最高に楽しかったがな」
 このことは事実だがというのだ。
「最高のさらにだ」
「最高なのが東京なのね」
「お父さんにとってはな」
「そうなのね」
「とは言っても今働いている埼玉もな」
 この県もというのだ。
「悪くないな」
「そうよね、あそこいいわよね」
「そうだな、西武にも悪い印象ないしな」
 この野球チームにもというのだ。
「ヤクルトファンから見てだが」
「ううん、と。シリーズで二回勝ってるわね」 
 咲は自分の記憶を辿って述べた。
「ヤクルトは」
「ああ、前の世紀にな」 
 二十世紀、この世紀にとだ。父も答えた。
「勝ってるぞ」
「そうよね」
「九十三年と九十七年な」
「九十二年は負けてね」
「けれど物凄い熱戦だったんだ」 
 この頃西武はまさに黄金時代であり全く隙のない戦力だった、戦力だけを見ればヤクルトは圧倒的に不利な状況だった。
 だがそのどうしようもない劣勢でもだ、ヤクルトは果敢に戦ったのだ。
「ストレートで四連敗するかもと言われたんだが」
「七戦までもつれてね」
「その七戦もな」
 最後の試合もというのだ。
「最後は負けたけれどな」
「いい勝負だったのね」
「ああ、それでその敗北を肥やしにしてな」 
 その悔しさをだ。
「次の年、九十三年にな」
「西武を倒したのよね」
「そうしたんだ」
「名勝負の相手ね」
「それで辻さんも来たしな」
 辻発彦である、西武の名セカンドとして守備と走塁それに技巧派のバッティングで名を馳せた選手でありコーチや監督としても活躍している。
「久信さんもだし」
「渡辺久信さんね」
「あの人も来てくれたしな」
「あと金森さんよね」 
 金森栄治である、デッドボールが多いことで有名だった。
「あの人もで」
「だからそんなにな」
「ヤクルトファンとしてはね」
「西武にはね」
「悪い印象はないしな」
「それで埼玉自体も」
「いるとな」
 そこで働くと、というのだ。 
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