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リュカ伝の外伝

作者:あちゃ
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やっぱり僕は歌が好き 第十七楽章「人を攻撃する事が出来れば、それ即ち武器である」

 
前書き
リュカ伝の世界では
1ゴールド=100円 です。 

 
(グランバニア王国:城前地区・東城壁大通り路地ビル内)
アイリーンSIDE

「うるさい、そんな事より僕のギター代200000000000(ゴールド)払えぇ!」
「はぁぁぁ~!? いきなり何言ってんだテメ~?」
そりゃそうなる。だけど何言ってるのか解らなくても支払わないと酷い目に遭うわよ(笑)

ならず者達のアジトということもあり、内部は荒れているだろうと予想していたが、思っていたよりも片付いていて利用しやすそうだ。
壁にも高価(たかい)のか判らない絵も飾ってある。

「ボ、ボス……コイツやべぇッス。色々やべぇーッスよぉ!」
蹴り押され仲間の下まで転がったブラジャー派が、一際喚いた男に自身の足を見せて泣き縋る。
うん、薄々感じてた。色々やべぇーって事は薄々感じてた。でも、もうクセになってる私が居る。

「な、何が如何なってやがる!?」
「そっちのギター被ってるヤツ。其奴が僕のギターを壊した。だから弁償しろ。2000000000000(ゴールド)!」
あら、また桁が増えたわ(笑)

「ち、違うんだボス! ア、アイツが自分のギターを俺に投げつけて壊れたんだ!」
「お前が襲いかかってこなければ、咄嗟にギターで攻撃しなかったんだよ!」
う~ん……一撃目はね。一撃目はその言い分は採用されるけども……

「それは先刻(さっき)も言っただろ! 最初に攻撃喰らって意識が朦朧としてる時に、お前が壊れてないギターを投げつけて壊したんだろう!」
「何度も言わせんな! 再度襲いかかってこない様に、先制の反撃をしたまでだ!」
出た、陛下の辞書に存在するパワーワード“先制の反撃”!

「黙れ! 何となくだが話は解ってきた。つまりこのオッサンは俺等ブラッディー・パンサー相手に、恐喝をしようってワケだ……舐めやがって!」
「プフゥゥー! ブラッディー・パンサーだって……何度聞いてもダッセェ~!(大笑)」
口元を左手でお上品に覆い、煽る様に(ってか煽ってる)笑う。

「き、貴様ぁ……ここが何所だか解ってるのか?」
「ここが何所なのか関係あんの?」
あるでしょう。所謂敵陣の真っ只中ですよ。

「この野郎、馬鹿にしやがって……おい、このオッサンをぶっ殺せ!」
ボスの掛け声と共に、14~15人居たブラパン共が一斉に襲いかかってくる。(ブロドーとパリスは除外)
全員手にはナイフだったりショートソードなんかを持っている……が、陛下がお側に居てくれるだけで、恐怖心は湧いてこない。

さて、ブラパンアジト制圧までの工程は、陛下の動きを正確に認識できなかったので、ダイジェストでお伝えするが……

まず最初に襲いかかってきた3人を、何か殴る様なモーションで同時に吹き飛ばすと、後続で襲いかかってきた4人にブチ当て転倒させる。

転倒した計7人の内ナイフを持ってた一番手近な男の足を掴むと、その男を武器にして更なる後続者を殴り倒す。
自分で言っていてアレだけど、“男を武器にして”って如何(どう)言う意味?

突然振り返った陛下は武器(男)をこちらに投げつけてきた!
ビックリしたが武器(男)は私の後ろにあった出入り口から突入してきた別のブラパンメンバーに向けてのモノで、そいつらも一瞬でノックアウト。因みにこいつらは多分、上階に居た連中なんだと思われるが、合計40~50人になっても、陛下の圧勝は揺るぎなかった。

見渡す限り一通り伸した所で、まるで用意してあったかの様に懐から結束バンドを取り出して意識朦朧としてるブラパンメンバーの手足を拘束していく。
勿論まだ意識はハッキリしていて抵抗する者も居たけど、それはホラ……陛下のワンパンで眠りの国へと(いざな)われる。

全員を拘束し終わったら、まだ残りが居ないかを確認する為に、一階のトイレに死角部分や二階・三階……最後には屋上へと行き、確認を怠らない。
その間私は一階に残され呻くブラパンメンバーと一緒に居て、少し居心地が悪かった。

全てを確認し誰も残ってない事が解ると、一階のメインルームに戻ってきた陛下が、何時(いつ)伸されたのか確認できなかったボスの頭を鷲掴みにし、視線をご自身に合うくらい高々と持ち上げ言い放つ。
「金払え!」
ブレない!

「お前の言うアホみたいな金額……払えるワケねーだろう」
そりゃそうだろうな。
「えぇぇぇぇ~~~っ……じゃぁお前は役立たずじゃん!」
いや、その金額に関して役に立つ人間は居ないんじゃないかしら?

「痛でででででで!! ぎやぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
突如喚くボス。
幾分だが陛下が鷲掴みにしてる部分が変形して見えるので、頭を握りつぶそうとしてるのかもしれない……ちょ、ちょっとグロっ!

「や、止めろ……止めてくれ! 払いたくないんじゃなくて、払えないんだよそんな金額! か、考えてもみろよ! そんな金額は国家だって無理だろう!」
う~ん、如何(どう)だろう? この国(グランバニア王国)の国家予算なら2000000000000(ゴールド)くらい、ギリギリ何とかなるのでは?

「う~ん、確かに言われてみればそうだなぁ……20000000000000(ゴールド)だとお前等には無理かぁ」
サラリと桁がまた増えた。この額なら国家でも無理だと思う。

「と、当然だろ! お、俺達の負けを認めるから……もっと常識的な金額で頼むよ!」
「僕的には常識的な金額だったんですけどぉ~」
陛下の辞書に、また新たな言葉を発見した。
“20(ゴールド)のギターの弁償代金は、20000000000000(ゴールド)(桁数は上昇する余地あり)”

「じゃぁお前等の常識を言ってみろよ?」
「じょ、常識的な金額……まぁ大体20000(ゴールド)くらい……かなぁ?」
20(ゴールド)が20000(ゴールド)なら、普通は十分だろう……普通はね。

「馬鹿野郎! 50000(ゴールド)を値切って20000(ゴールド)なら話も解るが、200000000000000(ゴールド)だぞ! 値切るにも限度があるわ!」
吹っ掛けるにも限度があると思いますわ。

「じょ、冗談言うなよ……元々の金額が異常なんだから!(泣)」
「じゃぁ今、幾らあるんだよ!?」
そうなりますわね。今ある全財産を毟り取る……陛下的には妥当ですわ。

「お、俺等全員の金を掻き集めても……60000~70000(ゴールド)くらいだ」
「全然足りねーよ馬鹿!」
十分な金額だと思いますけどねぇ?

「……………う~ん」
陛下は急にこの部屋の隅々を観察し始める。
そして壁際に移動すると、手に持った(ボス)越しに壁を叩き、何かを確認している。

「うん。この建物と、その中にある全ての物を貰う。まぁ壁は血で汚れてるけど」
壁の血は今日先程付いたモノですわ。
誰の所為かはあえて言いませんけど。

「は、はぁ? な、何だそりゃぁ!?」
全く“何だそりゃぁ!?”な状態だが、そんな叫びを上げるボスをその場に捨て、先程の乱闘騒ぎで倒れた椅子と机を建て直し、ゆっくりと座る陛下。
その際私の分の椅子も用意してくれて、そこに(いざな)われた。

私が座るのを確認すると、陛下は懐から妙な機械を取り出し、机にセットして操作する。
奇妙な音が何回か鳴った後、その機械の上部に立体映像でクズ宰相が現れた!
これは以前何処かで聞いた事がある、遠く離れた相手とも会話が出来る機械ってヤツかしら?

「よう宰相閣下殿。休みの日に悪いねぇ」
「構わんよ、平民のオッサン」
ムカつくわね相変わらず。陛下の正体を明かせないのは解るけど、言葉を選びなさいよね!

「とある不動産を譲渡してもらえる事になったんで、その契約書を持って来て」
「解った、今行く」
『何故』とか『何所』とか一切言わないのに、完全に話が通じる陛下とクズ宰相。

私にも解ったわ……
陛下は最初からこの土地と建物が目的だったのね。
最近巷で市民に迷惑を掛けてるギャング団を懲らしめ、更には土地と建物を巻き上げるのが目的だったんだわ!

ギャング団に因縁を付けられる様にストリートミュージシャンをやり、現れた時には待っていたかの様な一言、予想外に壊れなかったギターをワザと壊し、支払えるワケ無いほどの金額に釣り上げる弁償代、そしてアジトでは傍若無人な振る舞いで連中をいたぶる。

もしかしたら以前クズ宰相と話してた社長(プーサン)用の音楽活動部屋ってここの事かもしれないわね。
お城じゃ周囲(主にあの娘(マリー))に気遣ってピエ(ピエッサ)にポップスミュージックを教えられないから、民間として部屋(ビル)を手に入れた……

手足を拘束されて恨めしそうに唸り声を上げてるブラパン連中を横目に、陛下の事を恐ろしくも感動している私が居る。

アイリーンSIDE END



 
 

 
後書き
武器の概念 
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