イベリス
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第八十一話 教師の質その三
「それでだ」
「生徒が迷惑するのね」
「そうだ、あんな酷い社会はないぞ」
父は断言した。
「日本ではな」
「ヤクザ屋さんみたいよね」
「ヤクザ屋さんは悪いことしたら捕まるだろ」
「ええ」
咲もそれはと答えた。
「確実にね」
「そうなるがな」
「学校の先生は違って」
「そこまでしても捕まらないんだ」
生徒に怪我を負わせる様な暴力を行おうともセクハラ行為を行おうがだ、当然他の行動もそこに入る。
「だからな」
「ヤクザ屋さんより酷いわね」
「悪いことをしても捕まらないなら」
そうした世界ならというのだ。
「もうな」
「碌なものじゃないわね」
「悪人がそのままでな」
それでというのだ。
「生徒の前にいるんだ」
「それも聖職者とか先生とか言われるのよね」
「聖職者なんてあるかどうか」
父は疑問符を付けてこの言葉を出した。
「キリスト教だってな」
「あそこは酷かったわよね」
「歴史を見たらな」
それこそというのだ。
「物凄いからな」
「日本の比叡山より酷いわよね」
「比べものにならないだろ」
「言われてみたら」
「比叡山があそこまでしたか」
ローマ=カトリック教会の様なことをというのだ。
「していないだろ」
「してないわね」
咲もそれはと答えた。
「どう見ても」
「あれはもう人間がどれだけ悪事を行えるか」
「それへの挑戦?」
「そのレベルだったからな」
父は咲に真剣に考える顔で話した。
「信長さんは実際は焼き討ちしていなくても大人しくさせた比叡山もな」
「酷かったっていうけれど」」
「あそこまではな」
「とても及ばないわね」
「全く違う」
それこそと言うのだった。
「比叡山なんてな」
「遥かにましよね」
「ましどころかな」
それこそという口調での言葉だった。
「比叡山のお坊さんが見たら腰抜かすな」
「当時のローマ=カトリック教会の実態を」
「あんまりにも酷いからな」
それ故にというのだ。
「腰を抜かして」
「そうしてなのね」
「末世と言うだろうな」
「まあね」
咲も否定せずに応えた。
「十字軍も異端審問もね」
「やりたい放題だな」
「植民地統治にも関わってるし」
それも主犯格である。
「汚職とか搾取とか」
「あんまりにもだな」
「酷過ぎて」
「比叡山は比べものにならないな」
「ずっと清潔よ」
咲ははっきりと言った。
「確かに悪い面は多かったけれど」
「それで信長さんも黙らせたんだ」
焼き討ちはしておらずとも比叡山を無力化させたことは事実だ、信長は不要な苛烈な行いはしない人物だった。
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